見出し画像

”金利が上がれば上がるほど下がる” 米国債金利。

 9月米消費者物価指数(年率) @+5.4% 予想 @+5.3% 前月 @+5.3%

 FRB当局者が ”一時的” と繰り返し主張している ”インフレ" 。だが実際にはWTIが一時@80ドルを突破するなど「供給不足」は解消されないままだ。中国では石炭不足で停電が起きているし、ロシア依存の強いヨーロッパの天然ガスも高値に張り付いたまま産業界の「半導体不足」も依然深刻で、自動車の減産に留まらず、交渉力の強いはずのアップル社でさえiPhone13の大幅減産に追い込まれた。強烈な ”ボトル・ネック” 現象である。

 「あれっ、10年国債金利下がってる!?」

 9月の米CPI ↑ も依然@+5%台で推移しており、もはや*11月の「テーパリング」開始は必至の情勢。10/13アジア時間には@1.60%近辺で推移していた10年米国債金利はどれだけ上がっているだろうか、とチェックしたところ、意外にも@1.53%まで低下。一体何が起きたのだろうか。

 公開された9月FOMCの議事録では、11月ないし12月での「テーパリング」開始がメンバー間で共有されていたことが明らかになっている。

 ここで鍵を握るのがFRBの「利上げ」見通しの変化。よくよく米国債市場を見てみると、ここ数日2~5年債金利が猛烈に上昇 ↓ 2020年3月の株価暴落時に「資金繰り」で金利が急騰した時を除けば、 ”最高値” を更新し続けている。5年債などは節目の@1.0%を突破してなお上昇基調だ。

画像1

 「しつこい ”インフレ" でFRBによる "利上げ" が早まるだろう」

  ここで起きている米国債「イールドカーブ」の動きは典型的「ベア・フラット」(金利上昇時の長短金利差縮小)。つまり "利上げ" が早まるほど ”インフレ" 沈静化の見込が高まるため、最終的な "利上げ幅" は小さくなる、と市場参加者の "読み" が変化してきている。結果、10年~30年などの長期金利は逆に低下「インフレ先進国・アメリカ」ではちょくちょく見られる ”金利が上がれば上がるほど下がる” 現象だ。

 実際5年までのFF金利(=FRBの政策金利ターゲット。今日~翌営業日の1日物金利)のシミュレーションでは2026年初で@2%到達 ↓ が見えてきたが、同時にその後は "利上げ" が続かない可能性も示唆している。

画像2

画像3

 これは米国債市場の「FRBへの信頼」を示すサインではあるが「確定事実」ではない。今年前半の「テーパリング先送り」のように「利上げ」を躊躇したり、あるいは「利上げ」を早期に実施しても思うように ”インフレ" を抑えられなければ、また長期金利は上昇を始める

 一部の投資家は既に@2%への「利上げ」を織り込んだ今の金利水準で買いに動くこともあるだろう。だが「実質金利」で考えると、年金や「お金持ち」等の ”リアルマネー” が本格的に長期債投資を始めるとは考えにくい。つまり今回の金利低下は一時現象に終わる可能性もまた高い。

 その辺りの**「気迷い」がよく現れていたのが米国株強いCPIで一時NYダウは売られたが、長期金利低下を受けてナスダックが反騰、結局NYダウもゼロ近辺まで戻した。かなり「金利」に神経質になっている

画像4

 ** "豪快" (笑)に動いているのがビットコイン▼2,000ドル以上下げ@54,000ドル台に落ちたと思ったら、引けにかけて@57,000ドル台まで急騰。±@10%も簡単に動く「ジェットコースター相場」で ”口あんぐり” 状態だが、心なしか金利への感応度は上がって来ているように感じる。

 そしてもう1つの ”注目株” である中国の「不良債権問題」。景気減速も懸念されるが、10年中国国債金利は低下どころかむしろ上昇して@3.0%に再度接近。こちらは「お金が足りない」のが明らかであり、典型的な「信用リスク」悪化による金利上昇だ。人民元が未だ実質「ドル・ペッグ」である事から、本当に必要なのは「ドル」需給面からドル金利を押し上げる力の方が強いはずだ。

 変動の激しいエネルギーが牽引しているとはいえ、@2%程度の金利で今の「インフレ」が収まるとは思えない。現状の「米中対立」による "デカップリング” が続く以上、ドルを中心とした金利上昇局面はまだ続くだろう。

 さて問題は「過剰流動性」でかさ上げされていた株や不動産などの資産価格"バブル崩壊" になるのか、それとも物価上昇や貨幣価値の減少を反映して「名目価格」の上昇が続くのか、判断が難しくなる。

 今後はいつ、どこで ”リアルマネー” が本格的に国債等の「金利系資産」に「お金」を移し始めるのかが焦点。少なくとも今の金利水準は十分に魅力的とは言えず、ビットコインから降りられないトレーダーやファンド、投資家はまだ多い。しかし「金利上昇」を怖れているのもまた事実で、市場ではFRBの「利上げ」や中国の「不良債権問題」について ”検証作業” が続くまるでどちらが先にブレーキを踏むのかを競う ”チキンレース” の様相を呈しており、神経がやられる相場だ。健康には注意しよう(苦笑)。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?