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ついに始まった「ドイツの逆襲」。 ー "異常に低い" ドイツの「実質金利」 → 「通貨安」「株高」へ。

 3/2 "異常に低い" ドイツの「実質金利」 ↓ の続編としてお読み頂ければ分り易いかもしれない。

 アメリカのNYダウ上昇 vs ナスダック指数下落の動きも興味深いが、筆者の目を引いたのは*DAX指数の急伸14,380.91 前日比 +460.22(+3.31%)と1人気を吐いた。

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 対照的にパフォーマンスを落としているのが好調と思われたナスダック指数。ピークで@880ドルまで上げていたテスラ@560ドル近くまで下落するなど、遂に年初来マイナス圏に落ち込んでいる。日経平均もやはり@103円台から一気に@109円台まで進んだ急激な円安が祟り、こちらもドルベースでマイナス圏突入2021年は2020年前半までのように「下がったところを拾う」だけの単純な戦略では乗り切れそうにない

 株の専門筋に言わせればいろいろ解説もあるだろうが、やはりユーロ/ドル一気に@1.2100台から@1.1800台まで下げた「ユーロ安」効果は見逃せない原動力は "異常に低い" ドイツの「実質金利」だ。

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 物価(直近年率CPI)と信用リスク(5年CDS)を加味した「実質金利」10年国債で単純比較すると ↑ アメリカ@+0.10% >ドイツ@▼1.68%。実に▼1.78%も差がある。これではいくら米国政府がドルをばらまいても投資家もトレーダーも容易にユーロ買/ドル売には動けない。結果としてユーロ/ドルの反落を引き起こし、DAXの上昇を促している。

 仮に10年米国債が@2.00%に向かうとすれば、この流れは継続する可能性が高いDAXも自動車など輸出企業を中心に堅調な推移が見込まれ、これを反転させるのは簡単ではあるまい。それではドイツには「バラ色の未来」が待っているのか? 筆者はそうは思わない

 ドイツが「インフレ体質」であることは冒頭添付の記事で書いた。ユーロ/ドルが仮に@1.1000を目指すとすれば「輸入インフレ」が徐々に具現化してくる。今でも+1.3%のCPIは下手をすると+2%を超えてくる怖れもある。

 そうなると今度は「ブンデスバンクの亡霊」に悩まされることになる。ブンデスバンクとは中央銀行の中でも ”鷹派の雄” と称されるドイツ中銀随分痛い目に遭った「損切丸」(笑)も「利上げ」のイメージしかない

 長い目で見るとマーケットの「化学反応」は「低金利」→「通貨安」「株高」が最終的には「金利上昇」に転化してくるはず。非常に "教科書的" な動きだが、こうやって「為替」「金利」を通して価値の変化が起こり、最終的には「通貨高」に戻ってくる

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 元・ドイツマルク金利担当者として想像に難くないのは、物価の上昇が顕著になった時、ドイツ人が黙っていないだろうということ。なにしろ負けず嫌いで妥協しない ”ゲルマン魂” の国である。例えば銀行の預金金利が物価上昇率に比して著しく低い場合、 ”預金全額引出" をも厭わない。そこは「お金」や銀行に甘い日本人とは全然違う

 その時に株式市場や金利市場、為替市場が耐えられるかどうか。6か月先か1年先か、随分先になるかもしれないが今から想定しておかないと対応が遅れる。まあ、ここが短期勝負のトレーダーと金利トレーダーの違う所だが、長期の「投資」を考えるなら「シナリオ設定」は絶対に必要

 実は同様の変化は既にオーストラリアドルなど「資源国通貨」で起きている。こちらは市場規模も小さいので、この3か月ぐらいで「金利急騰」→「通貨高」と、何しろ変化が早い。

 そして変化の途上にあると考えられるのが「日本円」。本日(3/9)ドル円は一時@109円台に乗せたが、これがじわじわと「金利高」に転化してくるだろう。市場規模もモンスター級で日銀に ”忖度” しがちなマーケットなだけに「化学反応」は随分ゆっくりかもしれない。

 だが*「他人に引き摺られ易い」日本人気質を考えると、どこかの時点で一気に動き出す可能性も高い。ドル円が@120円を超えるような展開になれば雰囲気がガラリと変わるかもしれない。

 *インターナショナル・ジョークで、遭難船で乗客を海に飛び込ませようとする時、イギリス人には「今海に飛び込めば英雄になれます」フランス人には「飛び込んではいけません」、そして日本人には「みんな飛び込んでますよ!」というのが効果的というのがあった。いつも他人ばかり気にしている日本人気質を良く表していると思う。

 ナスダック指数テスラ株の下落にも関わらず上昇を続けているビットコインには少し驚いているが、「金利」と「為替」が本格的に動き出した市場は活気を帯びてきている。2019年までは「過剰流動性」で殺されていたが、これがマーケット本来の姿だろう。アジアでは日経平均と逆行するように安くなっている中国・韓国の株・通貨の動きも気になる。やはり2021年は「大変革」が起きる可能性大である。

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