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アメリカ大統領選挙後の展望 ー 「敗者に厳しい」マーケットの大原則。

 「そんなことグタグタ考えてる暇ないよ、為替はゼロヨンダッシュ!」

 毎月第一金曜日の夜9時半(夏時間)は「米雇用統計」の発表がある。東京のマーケット部門、特に金利と為替は全員居残り。

 「ピッ、ピッ、ピッ、ピーン。午後9時29分50秒をお知らせします...」

 時報を鳴らしながら指標を待って発表と同時に良ーいドン

 「予想より強いですよー。」

 金利部門からなるべく早く声をかけ、為替トレーダーは一斉にドル買。

 「あ~、でも平均時給は下がってます。」

 「何だよ、ドル買い、売りどっち?」

 「全体で見るとFEDが利上げするほどじゃないですね。」

 3か月、6か月などの期間を扱う金利トレーダーにとっては指標内容の分析が重要なのだが、為替トレーダーはそんなのはお構いなし。それが冒頭に書いた発言。はっきり言って指標の内容などどうでも良くて、1秒後に売られるか買われるかが重要。彼らに言わせると「反射神経の勝負」

 今のマーケットはそこまで ”HOT” ではないかもしれないが、久々に世界の注目を集めるイベントが明日(11/3)に迫っている。アメリカの大統領選である。既に株式市場などでは大きな動きが出ているが、当日はニュースに張り付いてFX売買を手掛けるトレーダーも多かろう。

 「損切丸」は元・金利トレーダーなので、”ゼロヨン・レース” に役立つような予想は立てない。あくまで「本筋」を中心に展望したい。

 前提:トランプ氏、バイデン氏どちらが当選しても「本筋」は不変。

 こう言い切ってしまうと身も蓋もないのだが(苦笑)、筆者が注目しているのは Ⅰ.ポジションの偏りⅡ.過剰流動性の2点:

  Ⅰ.ポジションの偏り

 ①米国株 ー 3月以降の6か月に渡る長期ラリーが鮮明に記憶に残る中、イベント前に随分売ったとは言え、まだまだロング(買いポジション)に偏っている。この調整で拾った投資家も多いだろう。選挙後に株は戻ると信じる投資家が多いと推察されるが、筆者は米国株の頭は重いと考えている。特にここまで突出してパフォーマンスの良かったIT関連銘柄は難しいかも。

 ②日本株 ー ニュートラル(中立)。大統領選はあまり関係ない。最近は欧米株下落後の翌営業日に予想される「日銀トレード」を逆手にとって、先回りする手口も流行りのようだが、全体としてやはり上値は重い。

主要株価 30 Oct 20

 ③$金利、米国債 ー ロング(金利低下方向)に偏り。これまた金利上昇の度に何度も跳ね返されているため、トレーダーは買いから入っていると推察。特に「10年米国債@1.00%キャップの売り」のようなオプションのポジションは要注意金利が上がると困るトレーダーが多く、大統領選に関わらず$金利は上昇方向で見ている。日本勢など「リアルマネー」の買いも現状の$金利レベルでは入りにくい

実質金利G11(after CDS)@01 Nov 20

 ④ドル円 ー 中立だが円高、円安どちらか一方に大きく動く可能性$金利の上昇基調が維持されれば素直にドル買いに傾く可能性もあるが、それを「ドルのバラマキ」と市場が捉えれば全く逆の展開になる。後述するが、仮にFRBが追加緩和に動いた場合「ドル売り」に転化する可能性もあり、ドル円は@110円よりも@100円方向に向かうかもしれない

Ⅱ.過剰流動性

 ①日本 ー 既に「日銀の資金繰り」が▼50兆円+ショート(不足)のため「過剰流動性」相場にはもう寄与できないむしろマイナス

 ②欧州 ー 依然追加緩和を模索しているようだが、あまり「過剰流動性」には寄与できまいPEPPAPP「資産買入プログラム」1.5兆ユーロ(約183兆円)<  ドイツの国内預金 約600兆円で若干の余力は残っている。しかしその殆どは欧州内の経済弱小国の「資金繰り支援」に回るため、日本→ドル投資の場合と違い、マーケット全体への「流動性支援」には繋がりにくい。ユーロ安が円高を呼べば、むしろ日本には逆風になる恐れさえある。

 ③米国 ー ”主要通貨ドル” を使えば「量的緩和」措置はまだまだ可能。しかしこれは日本など特に米国に輸出が多い国の「通貨高」に転化しやすく、当該国に「金融引き締め効果」を生む。つまり全体としての金融緩和効果は中立副作用として米国のインフレを助長してしまうだろう。

 この辺の基本的考え方については10/29「ヨーロッパもアメリカもおかしい・再び」 ↓ もご参照頂きたい。

 もちろん11/3のアメリカ大統領選前後はいわゆる「お祭り騒ぎ」になってFXもしばらくドタバタと上下動することになろうが、「損切丸」予想はあくまで「着地点」を予想しながらのものだ。

 特に意識しているのが「敗者に厳しい」マーケットの大原則ポジションが偏っている市場で「損切り」が横行した場合、大荒れになるかも。”2004年の悪夢” の再現で有効票・無効票のカウントし直しとか法廷闘争などで泥沼化した場合はなおさらだ。最も注意すべきは「米国債」 株FXはそれに付随して動く可能性が高いのではないだろうか。

 さて鬼が出るか蛇が出るか ー あと1日。結果を待ちたい。

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