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「金利低下」に立ちはだかる "壁"  e.g., 米国債の「逆キャリートレード」

 米国債の買いが止まらない。あの雇用統計CPIの後で 続・「利下げ」はまだ気が早過ぎる ー 「時間」を買うか「リスク」を買うか|損切丸 (note.com) で「売り」(金利上昇)から入ったトレーダーも多かったはず。それ故に「踏み上げ」=「損切り」も凄まじい。

 しかしここまで「逆イールド」が突っ込むと "別の気配" も立ち上がる。「金利低下」に立ちはだかる "壁" 、米国債の「逆キャリートレード」だ。

 フローチャートで図説するとこうなる 

 ①10年米国債を市場で売るe.g., 資金調達コスト▼3.95%
 ②レポ市場から売った米国債を貸借、e.g., 貸借料▼0.50%
 ④レポの代わり金で出したドルに@5.31%の金利が付く

 これで*毎日@+0.86%儲かる。金利スワップでも取引可能だが「逆イールド」では「売り」が「キャリートレード」になる。国債の貸借料は需給で変化するので難しい面もあるが「キャリー」が死ぬ程大好きな金利トレーダーは虎視眈々とエントリーポイント(相場に入る機会)を狙っている。

 逆に10年@3.95%「買い」から入ると単純に3.95%-レポ金利5.31%=▼1.36%毎日「損」が出る。買いっ放しの投資家と違って「お金」のないトレーダーにこれはきついドル円のショート(売り)同様、まさに "鯉の滝登り" 。相当な胆力がいる。

 まさに 時は金なり。ー 日本人が苦手な「時間価値」の算定。|損切丸 (note.com) マーケットは「時間」との戦いだ。それを司るのが「金利」であり「キャリートレード」はその手法の1つ

 「逆イールド」の時、「金利」の世界では「イールドが下ってくる」という表現を使う。例えば2年米国債@4.42%は仮に「利下げ」が1年間ないと1年で@4.90%に、更に半年経つと6ヶ月@5.31%まで「下ってくる」(売られる)。今は来年5月FOMCで0.25%「利下げ」を軸にイールドが形成されているが、これが早まるか遅れるかが決定的な意味を持つ。期間が長くなればなるほど "テコの原理" で揺れは大きくなる。

 5~10年米国債の@4%割れには市場参加者の意見も真っ二つに割れているので、今後「タイムリスク」≓ 利下げ前倒しと「逆キャリートレード」≓ 利下げ遅延の間でバチバチの殴り合いが続くだろう。この辺りはFXも同様。

 そしてもっと本質的な "壁" は やっぱりアメリカで燻る「インフレ」の ”種火” 。|損切丸 (note.com) 実際住宅ローン金利の低下で住宅市場が息を吹き返し「家賃」が上昇NYダウやナスダックも急反発している。これらは ”種火” となるが、あとはきちんと "鎮火" するかどうか

 大統領選を控えパウエル議長の "政治的配慮" もわからなくはないが、「インフレは一時的」で「利上げ」が遅れた "実績" があるだけに、どうも信用しきれない。「利下げ」が "勇み足" にならなければいいが...。

 まあそれでも "政治的配慮" ばかりで "実績" も "勇み足" もない日本はとやかく言える立場ではない。何でも漸進主義のこの国らしくもあるが、座る時間が長過ぎて足が痺れて立ち上がるのも一苦労。ようやく "健康体"デフレ→インフレ)に戻りつつあるのに、簡単なリハビリ≓「マイナス金利解除」さえおぼつかない

 もっとも "病人" の方も "補助者" ≓ 政府・日銀に頼るのは止めて自分の足で立ち上がろうとする気配も見えてきている。一時は "低体温症" だった体も平温に戻りつつある、e.g., @33,000円超えの日経平均。ここは期を逃さず、また足が痺れる前に立ち上がるべき。余計な "補助" ≓ 給付金・低金利政策はかえってリハビリを阻害するだけである。

 「金利は死んだ」といわれる世界を20年近く潜ってきた「損切丸」としては、こうやって「金利」の話を出来るようになったのは感慨深い。願わくば生まれてこの方「値上げ」「インフレ」や「利上げ」を見たことがない30代以下の人達の参考になればいい。おっと40代以上の方も少し想い出してくださいよ。「金利」は結構面白い

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