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続・「どうせ戻るでしょ」 相場の終焉Ⅲ。 ー 「侵攻」一夜明けたマーケット・アップデート。

 2/25、朝起きてNYダウ、ナスダックの終値を見てビックリした人も多かったのでは? NYダウは一時▼800ドル下げた後にプラス圏への急速な切り返し、ナスダックに至っては+3.3%もの急反発

 おそらく「SWIFT排除」という最悪のシナリオを想定して売り込んでいたが、米英の制裁は個人、銀行に限定。一旦買い戻しを誘発した。まあそれでも年初来▼8~14%も下落しており、「どうせ戻るでしょ」とはとても言えない状況に変わりはない

 動きが派手な株にどうしても目を奪われがちだが、実は "マーケットの現実主義者" 金利の動きが顕著”侵略国家”10年国債金利は@11%を突破して一気に@13%台に乗せてきた。やはりロンドン、NYで取引を禁止された影響は甚大で、投資家が処分売りを急いでいる。こちらがより ”リアル” であり、「資金繰り」で追い詰められている様が見て取れる。

 この金利と呼応するように5年CDS(Credit Default Swap、倒産確率を示したデリバティブ)は前日の+270BP近辺から一気に+750BPを突破( ↑ 標題添付)。まあこうなるとデフォルトの ”保険” を受ける金融機関は皆無だろうから、そもそも取引が成立しない気配値ではある。

 軍事侵攻戦争メディアの報道も派手なので、どうしても仕掛けた方が優勢に映りがち。確かに今回は欧米英とも軍隊は出動しておらず、やりたい放題には見える。

 だがマーケット等「お金」の動きを追いかけると全く違った面が見えてくる。例えば為替。一時ドル・ルーブルは@89台までルーブル安が進み、中銀がルーブル買(ドル売)介入に乗り出したようだが、@85程度まで押し戻すのがやっと「外貨準備が潤沢なので大丈夫」というが、本当に通貨が暴落したら、1兆ドル(≓1日当りの為替取引量)あっても全然足りない

 2014年の「クリミア併合」も勝利のように言われているが、為替を見ると全く逆ルーブルだけでなくフリブニャもベラルーシ・ルーブルもこの20年で通貨価値が7分の1~10分の1に急落

 つまりこの3国は長期に渡って「通貨安」「インフレ」に苦しんでいたことになり、 "EU寄り" に傾くのも無理はない「ユーロ」に加盟して経済発展を遂げたバルト三国(エストニア、リトアニア、ラトビア)が羨ましくてしょうがないはずだ。

 「NATOの東方拡大による脅威」「新ユーラシア主義」

 日本のメディアはなぜか ”侵略国家” に肩入れする ”解説” が目立つが、どうも論点がずれている。そんな中、ある大学教授の言葉が腑に落ちた  

 ”西側へ傾斜する国々を安い天然ガスの供給などでつなぎ止めていたが、その後影響力が細り軍事行動に出るしかなくなった”

 そして「クリミア併合」をきっかけに関係が切れてしまった。確かに元は欧米のロシア弱体化戦略であり「これしか選択肢がなかった」もあながち嘘ではない。だが、やり方があまりにも横暴で長期独裁政権の弊害

 「お金」の面からは、追い詰められているのはむしろ ”侵略国家”

 「天然ガスに依存しているヨーロッパは足元を見られている」という見方もあるが、逆も真なりエネルギー燃料の輸出品が途絶えればデフォルト一直線。一説には埋蔵量は枯渇しつつあるとの推測もあり、中東諸国同様、「脱炭素」で追い詰められた面もある。

 今回の「開戦」も、かつて第一次大戦後に膨大な「借金」を背負わされたドイツ経済封鎖で「真珠湾」に打って出るしかなかった日本とどうしても重なる。いずれも*「お金」に余裕あれば、他国に侵攻する必要などない
長期戦を維持する余裕はなく、短期の「電撃戦」に打って出たのだろう。

 今回、大統領の表情を見て驚いた。とても戦況を有利に進めているような余裕は感じられず、まさに ”鬼の形相” 。かつて来日してにこやかに ”柔道パフォーマンス” をしていた面影は全くない

 マーケットは今後もまだまだ紆余曲折あるだろうが、今回 ”侵略” で失った最大の損失は「信頼」安心して売買できるのも「信頼」あってこそ。欧米市場はドタバタしながらも一定の所で歯止めがかかるが、今後 ”侵略国家” 「お金」が戻るのは難しい。昨日のRTS指数の急落 ↓ はその端緒でもあり、今後は長く苦しい道のりが続く

 ビジネスでもそうだが、「信頼」を築くには長い時間かかるが失うのは一瞬"神輿" に担がれている時間が長すぎて、そういう道理が判らなくなっているのかもしれない。これを取り戻すのは並大抵の事ではない「戦って勝つ」が大好きな国民もいつその事に気づくだろうか...

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