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「機械取引時代」の新しい株式投資・トレードの方法。

 昨日(6/15)のNYダウも値動きが激しかった。▼700ドル以上下げたところから+157.62ドルまで急速に戻した。まあ取引の主体になっている「機械群」にとっては大した事ではないのだろうが、ついていく「人」は大変だ。

主要株価15 Jun 20

 戻しのきっかけになたのがFRBによるセカンダリー市場・コーポレート・クレジット・ファシリティSMCCF、Secondary Market Corporate Credit Facility )2,500億ドルだという。マーケットのネタとしては4/9に発表された2.3兆ドルの「信用緩和」の一部であり、いささか古い( ↓ 参照)。

 相場としては織り込み済みだが、ただ今回は考慮すべき点がある。SMCCFについてはこれまでETF55億ドルのみが実行されていたが、個別社債については買取り基準などの詰めに時間がかかっていた。それがようやく6/16に始動するという。つまり*2,445億ドルの実弾がこれから市場に入ってくる

 ちなみに今日(6/16)の東京時間内にトランプ大統領が「1兆ドル」インフラに投じる、旨報道があったようで、**日経平均は+1,000円超まで上げている。ただ、この「1兆ドル」は「機械取引」を操る金融機関に直接渡るわけではないので株の押し上げ効果はどうだろうか。確かに企業業績は上がるかもしれないが、その点株価は既に高い水準にあるため米株は期待ほど上がらないかもしれない(NYダウ先物@14:20 +500ドル(+2%)程度)。もしこの理屈が正しければ、米株を上げるだけなら財政よりFRBによるお金のばらまきが今は有効ということになる。さてどうなるやら。
 **むしろ日経平均の上げは日銀による資金繰り支援策増額75兆円→110兆円に反応した可能性もあるが、こちらは日銀が円の「資金繰り」を今後どうするのか、不安もある「日本の資金繰り研究」に於て追跡中)。

 「実需の先回り」で買い相場を増幅するHFT(高頻度取引)やアルゴ、AIなどの「機械群」に取って、これは見逃せない事実だ。しかし実弾が投入されてからでは速度の面で「人」に勝ち目はない。そこで今度は「機械」が発動する前に「人」が「先回り」しようという動きが出た。

 1つの例が昨日NY後場での米債券の下落だ。10年債は@0.66%で取引されていたのが株価反発と共に@0.72%まで売られた(利回りは+0.06%)。本来流動性が追加投入されるだけなら米債券に売りは出ないはずだが、おそらく「機械による株買いの増幅」に備えて、国債から株へ「人」=投資家、トレーダーが資金を移したものと想定される。これは今までなかった動きだ。

実質金利G8(after CDS)@15 Jun 20

 これなら「秒速」で先回りをする「機械」でも出し抜ける「フリーランチ」である。もちろんそこにお堅い「投資尺度」「適正価値」などはなく、ただただ儲けるためだけの取引。しかし散々機械に「先回り」されて儲けをかすめ取られてきた投資家やトレーダーも黙って指をくわえているわけにはいかない。どんな形であれ収益は収益だ。

 ただ相場の面白いところは、参加者が「先回り」を競うことによって取引パターンがどんどん変化していくところマーケットでは同じ手口は長く続かない。今回の「先回り」トレードもおそらく手仕舞いは早いだろう。もともと流動性要因で膨らんでいる株価と認識しているなら、儲け損ねてまた急落は回避したいはずである。

 ここまで「株買い増幅」が認識されているなら「機械取引」万能の時代はもう終わりつつあるのかもしれない。少なくともこれまでのように「人」の懐から易々と盗むような手法は通じなくなる。ここからはAIアルゴなどのプログラムを書き換える人々の「優劣」が勝敗を決することになるだろう。

 大事なのはこの「変化」を見逃さない事

 これまでも大儲けで有名になったトレーダーが市場から消えていったのを何人も見てきた。おそらく「先回り」していたはずが、いつの間にか他の人に更に「先回り」されて儲けを失っていったのだろう。「儲かった、儲かった!」と浮かれて「儲け手口」を吹聴するようなトレーダーはまず生き残れない。絶えず厳しい自己検証が必要不可欠な結構厳しい世界なのである。

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