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「お金のマニュアル」 -損をしないコツ- 其ノ5 「お金」って何?

 <「お金」って何?>

 そもそも考えてみて欲しい。「お金」って何だろう? 

 日本のお札にはとてもいい和紙が使われていて、1万円札の原価は約22円だそうである。ただ、専門の職人が銅板を掘って実に繊細で美術的な価値も高いとされる模様を施し、特別な凸版印刷で刷られているので、その技術料も含めると実際の原価はもう少し高いと思うが、それでも1万円には届かない。ところがこの1万円を出せば1万円の物がきちんと買える。なぜか。券面には「日本銀行券」と書いてあり、みんなが1万円札に1万円の価値があると信じているからである。

 -そう、国がその価値を保証しているからである

 1万円しないもので1万円のものが買える - 魔法のような話だが、これが「貨幣経済」である。別な言い方をすれば国の信用を介在させて合理的に物々交換を行っている、とでも言おうか。これに現在では通貨の変動相場制が布かれているため、ドル、円、ユーロなど日々価値を変化させながら経済を支えている。よくよく考えてみるととても不思議な制度なのである。

 <ハイパーインフレの恐怖>

 さて、「お金」にまつわる最近の話で言うと、ベネズエラでとんでもないことが起きている。国情が不安定になり物価がなんと年率169万%(!)も上昇しているらしい。どういうことだろう。計算すると朝100円のパンが翌日には4,630円になってしまうというような状態。現在1億円相当の現金を持っている人も1年後にはその価値がたったの6,000円になってしまう。

 これは国がお金の信用を保証できなくなった結果である。これではいくらベネズエラ「お金」を持っていてもすぐに価値が目減りしてしまうので、物を買ったり他の通貨に換金したりに殺到した。

 ただ、これは何も今回のベネズエラや何年か前のジンバブエのような小国に限った事ではなく、実は第一次世界大戦後のドイツでもハイパーインフレは起きている。卵1個が3,200億マルクになったり、1兆マルク銀貨が発行されたりする事態になったが、その時の苦い経験から*ドイツでは法律で中央銀行(Bundesbank)の最重要責務を「物価抑制」と位置づけている。

米国は世界恐慌の教訓から「完全雇用」、日本は「政府との意思疎通」

 世界史や日本史をかじった事のある方ならあくまで歴史の一部として「教育」を受けた記憶がある方もおられると思うが、生活に根ざした「実学」と捉えた方がどれだけおられただろうか。これは「現実」なのである。

 其ノ6は <お金持ちの理屈>

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