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それでも受験生は「医学部」を目指す?

 今回はちょっと趣向を変えて「お医者さん」の話

 親戚筋に医療・病院関係者がいるので色々な話を見聞きするが、今や大学受験は空前の「医学部」ブーム。特に費用の格安な国公立は地方大学でも大人気で、偏差値でいうと東大に入れるぐらいの実力が必要らしい

 そうなると選択肢として私立大学も入ってくるが、これが相当「高い」「医学部」専門塾なるものが流行っているが有名所は年間数百万円かかる。入学後は授業料だけで6年間で数千万円かかるのはザラで、これに遠隔地なら家賃に数百万円、臨床研究や実験等で追加でコストがかかるためトータルで「億」単位の「お金」が必要だという

 これは「投資」としてペイ(Pay、採算に合う)するのか?

 確かに「お医者さん」として国家資格を持てば「時給」は高い。食いっぱぐれる事もないだろう。開業医ともなれば年収2,000万円(?)

 ただ「インフレ」時代への再突入で "異変" も起きている

 2023年度の医療機関・診療所の休廃業・解散件数が過去最高に上っているという(  表、↑ 標題グラフ)。特に歯科医と小規模な診療所が影響を受けており、確かに近所でも閉院をよくみかけるようになった。診療所は経営者の老齢化が著しく ↓ 、せっかくご子息が「医学部」に合格・卒業しても継がないケースが増えている

 主因は少子高齢化に伴う医療費負担の急増と財政難

 ここ数年財務省と医師会の間で医療費削減を巡って丁々発止のやり取りを繰り広げているが、▼110兆円もの年間支出のうち▼45兆円も医療費が占める国債借換え等に▼20兆円費やしている事を考えれば支出のほぼ半分は医療費対GDPの比率が@3~4%台だった「昭和」に比べ現在は@8%台 ↓ 企業で言えば福利厚生費が費用の半分を占めているようなもので、そんな会社はあっという間に潰れてしまう

 つまり「お金」の面で「国民皆保険制度」はとっくに破綻している。そんなことは財務省も厚生労働省もとっくに気が付いているのに「税金」ではないからと国会で議論もせずに国民の了解もないまましれっと「社会保険料」を増額だから「実質賃金」は減る一方「六公四民」では生活が苦しいに決まっている

 この国にはもう「お金」がない。かつてのように医師会が政治力を駆使してロビーイングを展開しても "無い袖は振れない"本来海外にばらまく「お金」などないはずで、その辺りからみんな気が付きつつある

 病院経営の話を聞いているとその「特殊性」が浮き彫りになる。収入のほとんどが国からの「保険料」で賄われているため自由に価格設定が出来ない≓「値上げ」できない。だから「インフレ」には脆弱

 おまけに医療の研究に没頭している「お医者さん」は経済に疎く、財務などどうしていいか判らない場合がほとんど。経営に特化した事務長を備えている病院はまだ少なく、最近はシンクタンクコンサルタントに外注しているケースも増えているが、これがまた大問題。筆者も接した事があるが彼らはほとんど当てにならない。なぜなら自らリスクを背負った事などないし、経営に関してはずぶの素人だから。大抵は「人件費を削れ」等々、的外れなアドバイスをしてくる。「人手不足」の今、最もやってはいけない策である

 もの凄く勉強している「お医者さん」は立派な仕事だし尊敬に値する「金利トレーダー」なんて胡散臭い商売(苦笑)よりはるかに社会貢献度も高い。だが現状を鑑みると相当高い "志" を持って臨まないと将来的に厳しいかもしれない単純に「安定」とか「高給取り」だけを目指すととんでもないしっぺ返しを喰うだろう。お父さんの病院を継ぐなら経済学とか経営学、そして世の中の変化を知るという意味でマーケットの勉強も必要になる

 「損切丸」が就職した時(1987年)はマスコミ全盛期で、テレビ局とか広告代理店が花形でかなり狭き門だった。それが今やこの有様。「テレビ」世代の筆者としては、まさかここまで退潮するとは思いもよらなかった。何社か受けて最終面接までいったケースもあるが、マスコミに就職していたらどうなっていたか...。20代の若者に20年後、30年後を予見しろというのは土台無理だが、今になって思えばもっとよく考えるべきだった

 だから老婆心ながら…「医学部」を目指す受験生の皆さん、本当にそれでいいですか?

 「億」も「お金」をかけて研修医時代の「ブラック労働」も経て、蓋を開けたら「高給取り」でもなかった、なんてことが今後起ると予想する。この国では医療に限らず政府頼みの仕事はかなり苦しくなる「インフレ」が続けば尚更。かなりの "茨の道" を歩むことになる

  「安定」を求めれば「不安定」になる

 世の中にはこういうことがままある。「安定」「安心」は "毒" 。これは「預金」大好きの日本人にとっても示唆的であり「お金」に関しても同じ。どんな事にもリスクはある違いはそれを認識しているかどうか。少し説教臭くなってしまったが何かヒントになればいい

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