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縮小し始めた「日銀バランスシート」。

 「あれっ、TONAR上がってきたなぁ...」 ↑ 

 普段余り興味を持たれない円のTONAR無担保コールO/N=今日~明日の1営業日の金利)。まさに筆者の "専門" だったので今もちょくちょくチェックしている。ドルのFF(Fed Fund)も同じだが、銀行の "最終尻" を調整する市場で誤魔化しが効かないため、「資金繰り」状況をストレートに反映する。だからこそ*中央銀行はここを「政策金利」としてコントロールする訳で、世の中の「お金の過不足」を計るには最も適した金利指標と言えよう。

 *日銀の場合は主要銀行と毎日連絡を取り「資金繰り状況」をモニタリングしている。その細やかさはおそらく世界一であり、銀行の担当者は自行の「資金繰り」の変化を事細かに報告する。株価暴落や大地震の際はこの頻度が上がり、これらの情報の吸い上げを元に必要な資金オペを打っている。

 7~8月のいわゆる「感染爆発」の間、TONARは@▼0.03~▼0.04%に緩んでいた企業・銀行が共に保守的な「資金繰り」を行い、手元の「お金」を厚めに保持したことが主因だろう。それが9月後半に「感染者数」が減少に転じると、また「ゼロ」に向かい始めた。直近10/8は@▼0.008%

 そして9月末の「日銀バランスシート」実は 縮小が始まっている ↓ 

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 今回は9/20に日銀保有の「国債」が▼8.2兆円余り償還(ネット額)されたことが主因だが、これは日銀「金融政策総点検」 @19 Mar 2021概要。↓(3/19)が発表された時点で「予定通り」でもある。意外? 日銀が4月から国債買入額を減額。↓ され、7月にも再度減額。実は日本ではFRBに先行する形で「テーパリング」は始まっている

 敢えて「テーパリング」と言わないのは**「 "お金" が尽きたからやむを得ず "総点検" した」との体裁を保っているから「政府との意志疎通」を義務づけられている日銀としては、今の政治状況では、少なくとも黒田総裁の間は「 "金融引締め" を開始した」とは口が裂けても言えない

 **「国債金利が上がっても1,000兆円も預金があるのだから、それで国債を買えばいい」。こういうコメントをネットで見かけたが、残念ながらそれは既に日銀がやっている「日銀バランスシート」@9/30 ↑ を見れば判るが、528兆円もの「国債」保有を可能にしているのが「当座預金」541.7兆円。これは銀行が1,000兆円強の「預金」から「貸出」等に使った余り実はもうこれ以上「国債」を買う「お金」は残ってはいないのである。

 財務省からの「資金支援」である「政府預金」が9月に▼8.9兆円も減ったのは、「国債」償還により8.2兆円の「お金」が日銀に返還されたから。そして依然増え続ける「貸出」+5.2兆円のうち2.4兆円が「当座預金」に残り、2兆円余りは ”消費” されている。経済の正常化に伴う動きだろう。何れも市場での「お金」が減る動きで、TONARを押し上げている

 「日銀バランスシート」サイズは8月の726兆円から723兆円へ縮小。小さな変化のようにも映るが、10年JGB(日本国債)金利がじわり@0.09%まで上昇した事を鑑みると「大きな変化」の兆しかもしれない。鍵を握るのは***「円安」と株価の動向だ。

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 ***9月の「対外債券投資」を見ると、中長期債を約5兆円買い越している。CLOなどのハイイールド債にも向かっているだろうが、為替直先を使った、いわゆる「ヘッジ付外債」では十分利鞘が稼げない。そのため一部は為替リスクを負ってストレートにドル債を買い、最近の「円安」の一因になっている可能性がある。

対外証券投資 29 Aug ~04 Oct 21

 確かに欧米の金利上昇を見ていると、日本の金利の動きは鈍い。これは「金融村」と称される日銀・財務省・金融機関の強固なタッグによるところが大きい。だが反面****1度方向転換すると「津波」のように一方的な動きになるのもまた日本市場の特性でもある。

 ****沈没船から避難する時のエスニックジョーク「飛び込むのがルールです」→ ドイツ「飛び込まないで下さい」→ フランス「ほら、みんな飛び込んでますよ」→ 日本、etc. 相場や通貨はその国の文化を反映するものだ。

 「テーパリング」では先頭ランナーを務めた日銀だったが「利上げ」には「政府との意思疎通」が必要「円安」が@115円、@120円と進み、日経平均の足を引っ張るようになってはじめて「意思疎通」が図られ、「利上げ」に "GO" サインが出る。歴史が示すように、まずはアメリカの動きを待って追随する形になる。

 「日本は外貨準備が1兆ドル以上あるから大丈夫」

 いざとなれば「ドル売円買介入」と思うかもしれないが、FXの取引量は1日6兆ドル以上本当に「円安」が突っ走れば1兆ドル程度では止まるまい。その時の円金利の上昇の "激しさ" は今の米国債を上回るはず。何しろ30年間も「マグマ」が溜まっているのだから。

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