見出し画像

市場間のキャッシュフローを考える。 ー 流動性は「過剰」から「正常」へ。

 「 KOSPI からビットコイン(BTC)に資金が流れているのかな?」

 様々な市場を眺めながら「損切丸」は日々こんな事ばかり考えている。銀行の資金繰りを30年近く担当するうちに「お金がどこからどこへ流れているのか」を考えるのが半ば習慣のようになってしまった(笑)。

 BTCKOSPI(韓国株価総合指数)も主要市場でない BOLD MARKETS に分類されるが、昨日(2/9)のようにBTCが+20%も急騰すると他の市場を比べて見たりする。昨年来絶好調だったKOSPIがここへ来て変調。今日(2/10)はドル安気味に戻しているが、為替のドル/ウォンもドル高方向に振れていたので冒頭のような想像をしてしまう。

画像1

 *2020年6月まではこういう分析はほぼ不可能だった。マーケット全体に「過剰流動性」が溢れていて、株も商品も債券も多少のデコボコはあっても最終的に ”売られない相場" が続いたからだ。特に金利市場の潰れ方が酷く、ここ数年「金利市場は死んだ」などと揶揄される始末。

 筆者がはっきり「過剰流動性の終わり」を認識したのがこの時期。日銀の「資金不足」が明らかになったからだ(2020.9.14.「政府預金」の謎。  ご参照)。「過剰流動性」のコアは日本から米国を中心に流出した400兆円余りであることに疑いの余地はなく、日銀の「資金不足」「過剰流動性」の終焉を意味する。1つの証拠としてTONAR(無担保コールO/N金利)がゼロに接近する動きが顕著だ。

画像2

 流動性が「正常化」してようやく市場間のキャッシュフローを追う意味が出てくる。何かを買うには何かを売る必要があるからだ。如実に変化を示したのが国債に代表される金利市場。米国債を見ればイールドカーブの傾斜化=スティープニングを伴って金利上昇傾向がはっきりしている。

画像3

 これは主に株式投資を増やすために米国債を売ったことを意味している。そしてNYダウナスダックが高値を更新して上昇へのモメンタムが弱まると今度は BOLD MARKETS に移行。限られた流動性で手っ取り早く儲けようという狙いだ。代表格はBTCだが、KOSPIなどもその一部。今回この2つに動きの違いが出たことは大事なサインで、投資の選別が始まったことになる。

 あとはどれだけ「現金」「債券」等の金利市場から「お金」を捻出できるか。いよいよ「金利上昇」→「綱渡り」「ばば抜き」的な要素が出てくる。もうこれ以上日本からの「ミルク補給」は不可能なので、マーケット全体の動きの中でどこかの市場が "犠牲" になるだろう。金利がある程度上がってくると、今度は国債市場が強力な "ライバル" になる。

 「死んだ金利市場」の ”雪解け” が進んだことで、ようやく「キャッシュフロー」を追う意味が出てくる。株価や金利を示す比較表  もやっと生きてくるというものだ。

画像4

画像5

 若かりし頃は「ファンダメンタルズ」とか言って、やれ日銀短観だとか米雇用統計だとかでやたらと売り買いしたものだが、長くやっているうちに全て「言いがかり」にしか感じなくなった。「Buy the Rumor, Sell the  Fact」 「織り込み済み」「ポジション調整」etc.,etc....。指標後の相場の動きなどいくらでも「後講釈」が可能。やっていくうちに段々虚しくなった。

 そこで最後に行き着いたのが「キャッシュフロー」「お金」の動きは嘘をつかない。幸い日本では日銀、財務省等のデータが精緻で、例えば日本人が円以外の資産をどれだけ売買したかは「居住者・対外証券投資」 ↓ で正確に把握できる(逆に「非居住者・対内証券投資」もある)。

対外証券投資1.17~1.23

 噂やレポート、ニュースなどはあまりに紛れが多く、やはり信用できるのは「お金」そのもの。円以外でここまで精緻なデータを取ることはできないので、あとは為替、株、商品、金利などの動きを注視し「お金」がとこからどこへ流れているのか、推定してみるしかない。短期間だと現物ではなく先物デリバティブを振り回す輩がいるので、なるべく中期的に観察することが肝要だ。意外と "見えなかった真実" が浮かび上がってきたりする。

 その中でも精度が高いのが他市場に比べて「絶対感」のある金利市場中央銀行の政策に直結しているため、株や商品に比べて「適正価格(金利)」を計りやすい。株価をイールドスプレッドで国債金利と対比させるのは、「適正価格」を計る捕捉材料にするためだ。だから株のプロは金利を注視するが、2020年までは「過剰流動性」のせいでその手法が阻害されていた。ベテランでプロのトレーダーほどさぞやりにくかったろうと想像する。

 標題の図が筆者の頭の中のイメージだが、今後も「損切丸」では「金利」を起点とした「キャッシュフロー」を追っていくBTCなど厄介な商品もあるが、できるだけ ”証拠” を積み重ねていこうと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?