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「円安」はもはや日本経済も ”日経平均" も押し上げはしない。 ー 【超低金利政策】は本当に必要なのか。

 ドル円@115円の一歩手前まで買われ、2017年3月以来、4年8か月ぶりの「円安」ということになる。年初(@103.44)からは▼11%も減価。

 政府・日銀にとって誤算だったのは、「円安」が「好景気」「株高」に結び付いていないことだ。この国は既に「輸出立国」でないことは、10数年前から認識されているが、それを証明する指標が出た ↓ 

 (11/17 財務省)貿易統計速報:10月貿易収支 ▼674億円(赤字) 予想 ▼3,100億円。貿易赤字は3カ月連続。供給制約に伴う自動車輸出の減少と、燃料輸入コストの増加が貿易赤字の主な要因。

 (輸出)7兆1,840億円、前年同月比+9.4%増。鉄鋼や半導体製造装置、鉱物性燃料などの輸出が伸びた一方、世界的な半導体不足に加え、東南アジアからの部品調達難が響き、自動車輸出は▼36.7%減少。

 ・地域別 ー 対米1兆3,031億円 前年同月比+0.4%増、対欧州(EU)6,715億円、+12.1%増、対アジア4兆2,447億円、+15.0%増、対中国1兆5,969億円、+9.5%(16カ月連続)。

 (輸入)7兆2514億円、前年同月比+26.7%増。原粗油(+81.0%増)や石炭、液化天然ガスの輸入が増えた。

 「円安」のお陰で確かに「輸出」は増えた。だが原油を中心とした輸入による "赤字" がその全てを吹き飛ばしてしまった国全体での採算は "赤字" に転落「円安」が "赤字" をスパイラル的に増やしている

 そもそも「黒田バズーカ」の目的は意図的に「円安」を創り出し、「輸出企業」の利益をかさ上げ → 日経平均上昇を狙ったもの。1ドル@105円程度まではそれなりの効果をもたらしたが、ここまで来ると明らかに "副作用" が上回りつつある*政府・日銀も、もう考えを改める時期に来ている。

 *「昭和的政府」は基本的にサプライ(供給)側に寄り添った政策運営が基本。政策決定には必ず「OO連」「XX会議所」の影がちらつく。だが「平成デフレ」を経て、サラリーマン経営者コストカット、特に人件費を削るのが優秀な経営者の証となってしまい、事業拡充のセンスに決定的に欠ける。団塊8百万人が抜け「人手不足」が本格化する中、今後の人件費の上昇は不可避「付加価値」を創造できない企業は淘汰されていくだろう。

 前稿.もし ”ドル” や ”円” がなくなったら... ↓ の中で「FRBは "通貨覇権" か "債務圧縮" かの究極の二沢」という書き方をしたが、実は日銀も同様の課題 = "通貨価値" (覇権ではない)か "債務圧縮" かの選択を抱える。

 財務省から発せられるメッセージや新政権の姿勢を鑑みると "債務圧縮" に傾斜しているのは明らか。それが "通貨価値" の軽視=「円安」として現れていると考えるのが自然だ。

 実は「金利」、ここでは「実質金利」では日本>アメリカCPIで隠されている ”スティルス・インフレ" @+1.0%を加味しても、10年国債金利日本@▼1.31%>アメリカ@▼4.71%「円」の圧勝「金利差」に着目するなら「円高」が進むはずである。

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 ところがこの「金利差」を持ってしても買われない「円」の問題は深刻こんなに安くなっても買う人が現れないということは、**それだけ日本に魅力が無いということ。同様に「実質金利」が高くても「お金」の集まらない中国不良債権問題が、経済的影響の大きい日本に影を落としている。

 **10年ぶりにアメリカから帰国した知り合いが、日本のあまりの ”元気のなさ” に愕然としたと言う。「置いてけぼり」と表現していたのが印象的だった。20年以上も「給料」=「評価」が上がらなければ自信も失おう

 考えようによっては***「少子高齢化」が進んでいる日本が ”フロントランナー” と捉える事も可能だが、それにしても「変化」がなさ過ぎる。このままズルズル「円安」を受容していくと、財務省による増税だけでなく、「インフレ税」も負担することになってダブルパンチを喰らう

 ***「ゼロ金利政策」日銀が採用した時、初めは欧米から「日本は周回遅れ」と見做されたが、気が付けばFRBもECBも後を追って来た「周回遅れ」はいつも間にか「先頭ランナー」に。歴史の皮肉である。

 主要通貨・ドルを握るアメリカにとって「通貨覇権」のメリットは無視できない程大きいドルのフローを追えば、例えばどこの国が原油を買ったとか、どの国がどの国にミサイルを売ったとか情報が丸見えで、政治的利用価値も高い。そう言う意味でFRBの「利上げ」には大義名分が立つ

 「円」には「ドル」程の利用価値はないが、さすがに「ゼロ金利」「マイナス金利」の "害" がこれだけ大きくなると、黒田総裁には申し訳ないが、金利は+2%ぐらい上げるべき増税はやむなしとしても、「利上げ」でせめて「円安」「インフレ税」は回避したい

 日本人が元気になって顔を上げる日は来るのか、はたまた他国が(また)日本の後を追って下を向くようになるのか...「先頭ランナー」日本の成否やいかに(苦笑)。今、我々は間違いなく歴史の転換点に立ち会っている。

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