見出し画像

見えてこないFRBの「利下げ」 ー 「円安」を起点とした「通貨危機」の怖れ

 6月米総合PMI(速報値) 54.6 予想 53.5 前月 54.5
 製造業PMI 51.7 予想 51.0 前月 51.3
 サービス業PMI  55.1 予想  54.0 前月 54.1
ー 2022年4月以来の高水準
 *6月ユーロ圏PMI 50.8 予想 52.5 前月 52.2 ー 8ヶ月ぶりの悪化

 6月の米PMI(Purchasing Manager's Index)の予想外の反転上昇で米国債は下落(金利は上昇)。グラフ( ↑ 標題添付)で見てもトレンドはむしろ上昇傾向で、これではFRBの「利下げ」は見えてこない複数の理事が拙速な「利下げ」に反対を表明するのも頷ける

 一体米経済はどれだけ強いのか。実際にNYLAに行って肌で感じたい所だがこの「円安」ではちょっと厳しい(苦笑)。ただ「人手不足」→「賃金上昇」で "アメリカ型インフレ経済モデル" ↓ が回転しているの間違いない

 同じPMIでもユーロ圏は弱々しい6月は8ヶ月ぶりに反落し節目の@50を維持するのがやっと。東欧では「戦争」中だしエネルギーコスト等が足を引っ張る。ある意味ECBやBoE(英国中銀)の先行「利下げ」を正当化する

 前稿.スイスの「利下げ」が意味すること|損切丸 (note.com) でも書いた「欧州通貨危機」(1992)時の「スーパーマルク」に今の「ドル」が似てきたしつこい「インフレ」対応で+5%超の「利上げ」を敢行した点もそっくり。あの時は「通貨安」の圧力がERM脱退に押し出された「ポンド」や他の欧州通貨に向かったが、今は「円」が一身に受けている

 そう言えばドル円が@159円台に乗せても財務省からかつてのような ”投機” 呼ばわりが影を潜めた。「キャリートレード」でジワジワと値を上げては言い放ちにくいこともあろう。「損切丸」で指摘しているような事はアメリカ、特に元FRB議長のイエレン財務長官から日本政府に釘を刺されている可能性が高い。おそらく:

 「利上げもしないのにドル売り介入なんて何言ってるの?」

 日本の3倍以上の政府債務(34兆ドル>日本10兆ドル)を抱えるアメリカは@5.25%もの金利を負担GDPが7倍近い事を差し引いても未だ「ゼロ金利」状態の日本は異常。国内からは「景気が悪いから利上げなんて無理」という声が上がるが、それはまともな金融政策ならばの話。現状の「円安」に鑑みれば市場からの "メッセージ" は明確:「利上げしなさい」

 アメリカにとってみれば現状「ドル高」で困る「お金」の事情はないGAFA等に払うソフトやクラウドの使用料 ≓「デジタル赤字」↑ は2021年の値で国際比較をすると、1位日本153億ドル(当時@110円で▼1.7兆円)、 2位ドイツ▼89億ドル3位フランス▼81億ドル。シェールガスも立派な輸出品だし「戦争」で武器もバカ売れ。株価の急落や国内景気減速がなければ「利下げ」の必要も無い。大統領選にも悪影響はない

 そう言う背景もあってECBもBoEもアメリカに追随「利上げ」してきた。韓国だって他のアジア諸国だって通貨防衛のために「利上げ」しているし、あの「トルコ」でさえ金融引締に転換今や「利上げ」していないのは日本だけ。だから 思ったより分厚い「円売り」 ー 「介入」と「外為特会」と「米国債」 |損切丸 (note.com) 「円」は標的になっている

 世界標準で見れば財務省の「財政健全化至上主義」≓「金利を払いたくない」なんていう理屈はちゃんちゃらおかしい訳で、アメリカが日本を「為替操作監視国」に再認定したのは、 ”投機” なんて言葉で誤魔化すのは止めて「まずすべき事をしなさい」という "メッセージ" だろう

 「AI」時代の今、マーケットの伝播スピードはかつてなく高速化しており、日に日に「円安」を起点とした「通貨危機」に発展してきていると筆者は感じている。7月9,10日に国債投資家と「懇談会」とか7/31の政策決定会合で「利上げも有り得る」とかそんな悠長な事を言っている場合ではない来週にでも緊急会合を開いて+0.5%「利上げ」を決定するぐらいのアクションを起こさないと「危機」の "芽" は摘めない

 そんな事はアメリカの金融当局も感じている。だからこその "メッセージ" なのだが、未だ「日本型デフレ経済モデル」↓ から抜け出せない日本の政治事情にも慮っているのだろう。*ただこのまま放置すると1兆ドル程度の「介入」では抑制できなくなり、日銀が突然+1%「利上げ」するような事態に追い込まれる可能性が高まる

 *「欧州危機」時にO/N金利がポンド@100%とかフランスフラン@5,000%、アイルランドプント@20,000%に急騰した事に学べば次善策は明らかBoEは「介入」でソロス氏に敗れたRTGS(即時決済システム)等中銀による「危機」対応は高度化しているのでそこまでの事態は考え難いが今度の相手はヘッジファンドではなく「AI」。まさか業界全体に使用禁止は出来ないので、起るとすれば全く新しい型の「危機」になるかもしれない

 大統領選を控え、米国債や米株が急落するような「危機」はアメリカも望んではいまい。その辺りは ”裏” で日本政府に圧力が強まってくるはずで、いかに財務省といえど抗えまい。あとは対応が十分かつ間に合うかどうか60代の首相や70代の総裁の言動からはそういう「危機感」が伝わってこないだけに筆者の不安は積もる一方。あとは間に合うのを祈るのみだが…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?