米NYダウと日経平均の乖離 - 5年チャートの比較(おまけ)

 主要な株式市場の5年チャートを貼ってみた。筆者は純粋なチャーティストではないが、こうして眺めてみるとなかなか面白い傾向に気がつく。

 まずは日経平均。これだけ米国との経済の緊密性が語られている割にチャートの波形はそこまで相似形ではない。やはりドル円相場の影響が大きいと考えられる。ドル建日経平均 ↓ にすると少し波形のデコボコはなだらかになり、2018年まではNYダウとの連動性が見られる。2019年に入ってからは前稿でも指摘したが、NYダウの上昇波動からは徐々に乖離し、最近では「200ドルの壁」が上値として意識されているようだ。チャートも今後上昇していくイメージは持ちにくい形になっている。


 欧州株の代表格である英FT指数と独DAX指数。2017年頃まではまだ良かったが、BRXITを含む様々なEUの問題が噴出しており、日本とは違った意味でNYダウとの連動性が薄れている。金利は日本よりも更に大きいマイナス金利のままで、銀行業界は日本と同様、収益減少に苦しんでいる。最近何かと話題のドイツ銀行の不振などが典型。チャートの形からみても、これら欧州株は横這いのイメージが強い。

 面白いのはアジア株。上海と香港が全く違う波形であることは興味深い。ドルペッグ制を布いている香港は2017年まではNYダウにきれいに連動して好調だったが、2018年以降は上海株価の下落基調に連動しており、中国の景気減速に足を引っ張られている印象だ。ただ、まだ香港株は上昇基調を取り戻せるギリギリの所にあるのでここが踏ん張りどころ。香港の人達があれだけのストライキを起こすのもうなずける。

 もっと極端に中国の影響を受けていることがうかがわれるのは韓国。文在寅政権になってから米国から中国へ舵を切っているのは周知の事実だが、残念ながら中国の影響をまともに受けてしまっている。また、最低賃金引上げや労働争議の頻発などを嫌って外国資本が逃避したダメージもかなりあるだろう。正直、例示した8つの株式チャートの中で韓国の形が一番悪く(上海より悪い)、下値模索が続く形だ。マーケットが冷徹に「経済失政」の烙印を押したと考えるのが自然だろう。

 筆者は、9.11テロとリーマンショックを経てアメリカの主導の市場型資本主義(Pax-Americana)は終わったと考えている。しかし今回の対中関税の仕掛けなどを見ると、まだまだアメリカ恐るべし、の感は拭えない。トランプ大統領の発言ややっていることはっきりいって滅茶苦茶だと思うが、株式市場を見ると結局はアメリカの一人勝ちとなっている。

 確かに米国自身も主要通貨としての負担や「世界の警察」としての役割を減じようとしているのは事実なのだが、今回こうやって主要株式市場の動きを比較してみると、改めてマーケットや投資の世界では未だ「米国中心主義」であることを見せつけられた。今後も米国の動向に左右されるマーケットが続きそうである。

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