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「利上げ」時の「損切り」の難しさ。

 前稿 続・金利@4%「新時代」の到来 vs 「異次元」の国・日本。|損切丸|note で煽ったような記事を書いた手前、昨日のような反動=金利の大幅低下については note. しておく必要があるだろう。

 まさに "Crazy Sterling" 再び。- 英ポンド急落が示唆する「金利差相場」の嘘。|損切丸|note で "スターリング=ポンド大暴れ" の様相だが、BoE(Bank of England、英国中銀)が中期国債の緊急購入を発表。10年国債金利は▼40BP以上も急低下した。

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 スターリング防衛のために次回理事会で+1%「利上げ」も囁かれる中、これでは「お金」を吸収したいのか=「利上げ」、供給したいのか=「減税」「国債買取」、訳が分らなくなっている(あれっ、「金融緩和」(供給)+「円買い介入」(吸収)と同じだ。苦笑)。政策に一貫性がないだけにまだまだ荒れるだろう。ある意味非常にスターリングらしくなってきた

 これに便乗する恰好になったのが米国債イギリスアメリカは直接関係ないとも思うが、こちらも「大暴落」が続いていただけに買い戻しのいいきっかけにはなった。2~30年の幅広い年限でおおよそ▼20BPの金利低下

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 これを歓迎したのが株式市場。ずっと「金利」で頭を抑え付けられて「割安」に放置されていたが、やっと買い戻しが入った。S&Pの「イールドスプレッド」も@▼2.3%程に "回復" しており、ようやくヒストリカルな標準値@▼2.5%に近付いてきた。

 今回の激しい「利上げ」局面を見るにつけ、筆者の原体験として想起されるのが「損切り」の難しさ。特に「マネーマーケット」の難しさは格別だ。

 *インターバンク(銀行間市場)では日々「お金」の余っている銀行と足りない銀行が貸借りしているが、これが「利上げ」局面になると様相が一変する。「損切丸」はいつも「お金」が足りなかったが、「利上げ」で先々金利が上がるとなると「出し手」が急減する。

 毎日O/N(今日~明日の1日物)で借りればいいと思われがちだが、それでは日が経つ毎に借りた「お金」の返済期限が来て ”雪だるま式” にショート(資金不足)が膨らむ「資金繰り」管理としては問題があるので、1~6ヶ月のターム物を取りながら日々のショートを抑制するのが常道。

  頑張ろうにも「出し手」が「お金」をオファーしない限り「取り手」はどうしようもない。そこで大事になるのが調整的に起る「金利低下」局面「出し手」が動いた時に捕まえるしかないが、その時間は10のうち1か2そこを逃せば高い「お金」を取るしかなくなり「損」が大きくなる

 誰でも「損」はしたくない。それはプロも一緒。違いはそれを最小限に留める知恵と努力があるかどうか。「お金」のない銀行にとって「金利低下」は自分達が儲かる方向でありどうしても気が緩む「ひょっとして損しなくて済むかも…」。これが心理的な罠になる。自分に都合の良い時に逆のことをしなければいけないのだが、これがなかなか難しい(経験談。苦笑)。

 「もし金利が下がるようなことがあれば、1年物取っておけよ」

 2000年「ゼロ金利解除」が目前の時、夏休みに入る筆者が部下に残していった言葉だ(「損切丸」が休むといつもなぜか相場が荒れた)。この時も「そごう破綻」があって「利上げ」が延び、一時的に円金利が低下。帰ってきたら部下がきちんと1年物を取っていて褒めてあげた。結局その後金利は上昇基調に戻り、1年物のオファーが出たのはその一瞬のみ。お陰で難を逃れ「損」を出さずに済んだ

 これは米国債も株も一緒マネーほど極端ではないにしろ、どちらも買い局面は限られているで言えば**2022年は年初から典型的「戻り売り」相場2021年まで定石だった「押し目買い」を続けた投資家は撃沈「積立型投資」もボロボロだろう。金利がここまで上がれば、無理に株を買わなくても@3~4%の金利収入が確実に得られる訳で、20年も30年も株価の回復を待つ必然性は薄い。それこそ「時間の無駄」である。

 **年初の「金利2%運動」、5~6月の「3%運動」を起こしたウォール街の狙いもズバリ「売り場面」を創り出す事自己ポジションも「上顧客」もきっちり売って「現金」に換えている。こうなればあとは「買い場」を探るのみ。FRBの「利上げ」終了のタイミングを虎視眈々と計っている

 米国債もこれだけ一気に「大暴落」するとリバウンドはほとんどなく、ある意味株より大変だったかもしれない。大きく戻した昨日の相場でさえ10年債はまだ@3.74%3~5月がまだ@2%台だったことを考えると完全に売りそびれている。それでもここで意を決して売りにいけるか@4%を見た直後だけに心は揺れる

 「損切りは気楽に、利食いは慎重に」

 こういう事を何回か言ってきたが、これは心が一方方向に傾くのを防ぐための方便人間は「感情の動物」であり、 ”気持ち” の逆を実行するのは難しい。ただ相場やマーケット、あるいは「お金」というのは「合理性の塊」であり、常に正しい判断が必要。心が傾いた状態では往々にして間違う

 とは言うものの「損」を目の前にするのはつらい。そういう時は一度「損切り」して心を平らにしてから考え直して見ること「なんでこんなもの買ってたんだろう」と目が覚めることもあるし、逆に改めて「買い」直して、その判断が正しければ「損」は取り返せる

 いずれにしろ "重い荷物" を抱えたままでは身動きが取れない。そのための***「損切り」でもある。苦しんでもがいてこそ ”実り” が得られるが、相場に向き合わない「ほったらかし投資」では難しい

 ***相場に限らず「損切り」しないで上手くいっていない例は枚挙に暇がない。今の「戦争」もそう、この日本の「昭和」もそう。だから「未来」に繋がらない。アメリカとこれだけ差がついてしまったのはそれに尽きる。苦しいことが嫌なのはわかるが、もう "重い荷物" は降ろす時である。


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