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「ドル」が欲しい! vs 要らない「円」...。 → 「円安」?

 人間は「苦しいこと」はすぐに忘れるように出来ている。そうしないと生きていけないからだろう。

 たった2年半前、2020年3月の「コロナ暴落」でNYダウは@18,000ドル台ナスダック@6,800ドル台、日経平均@16,000円台と今では信じられないような暴落が起きた(覚えているだろうか?)

 まさに「クライシス」。この時問題になったのが「ドル不足」FRBは 
「Temporary Dollar Liquidity-Swap Lines」- FRB、新たに9中銀とドル・スワップライン設置。「流動性融通」を拡充。|損切丸|note 「Temporary Dollar Liquidity-Swap Lines」Ⅱ - ドル流動性、その後。|損切丸|note で各国に「ドル供給」に乗り出した。

 このスワップラインも含め、米国債、MBS(住宅ローン証券)、社債など総額4兆ドル≓440兆円(@110.00)もの 「信用緩和」に乗り出すFRB > 「異次元緩和」by 日銀?|損切丸|note でようやく危機を乗り切った。 もっとも 「余ったドル」は株式市場へ流入? -「機械取引」が「株買い」を増幅。|損切丸|note という副作用も生んでしまった。

 この時焦点が当たったのが市場の「ドル不足」による「ドル・プレミアム」。いわゆる「上乗せ金利」で、3ヶ月で+0.5~+1.0%程「クレジット・クランチ」(信用収縮)時に起きる典型的現象である。

 実は「利上げ」「QT」(量的引締)が進む今、この「ドル・プレミアム」が2020年3月の水準に近付きつつある銀行の「資金繰り」担当者はさぞや大きな緊張を強いられていることだろう。思ったより状況は悪い。

 「お金は一度貸すと、溶けて無くなる」

 筆者が東上野で融資業務に従事していた時に課長に言われた言葉だ。「お金」を貸す時に、社長は ”機械購入のため” 、と申告しているが*実際何に使ったかはぶっちゃけ判らない「お金」に色はついていないので、本当は競馬に突っ込んでいるかもしれない。

 *東北大震災の時「郡山の居酒屋とパチンコ屋に長蛇の列」という話を聞いた。生活支援のために出した「現金」が実際は「娯楽」に消えた。福祉の世界では「現金支給はダメ」が常識らしい。「お金」の魔力は凄い

 この「お金」の本質はマーケットも同じ中央銀行が金融緩和で貸した「お金」にも "色" がついておらず、何に使うかは借りた方の自由。行き先はかもしれないしビットコインかもしれない。

 筆者も "苦い経験" があるが、貸した「お金」を返して貰うのは大変借りた方にしてみれば、もう "溶けて無くなった"「お金」を今更返せといわれても手元にはない。場合によっては*「生き死にの問題」であり、もの凄い抵抗をする「利上げ」「QT」で株や米国債が暴れているのも同じだ。

 これは「戦争」も同じで、敗色濃厚でも「じゃ止めます」とはならないルーブルだってガスを売った代金を使って安くならないように粘る、粘る「通貨安」がいかんと判っていながら金融緩和を続けるトルコと我が国も同様”薬” が止められないのだろうが、それでは病状は改善しない

 9月米CPI(総合) 年率+8.2% 予想 +8.1% 前月 +8.3%
 コアCPI +6.6% 予想 +6.5% 前月 +6.3% - 1982年以来最大

 しかし困ったことになった。こんなに「ドル不足」なのに、このCPIでは「お金」を供給できないエネルギー・食品を除くコアCPIは上昇を続けており、「火事」はまだ燃え広がっている。これでは「ドル」は供給どころかもっと返して貰わなければならない。マーケットはまだまだ暴れるだろう。

 10年米国債は一度@4.06%までぶっ飛んだ後、強烈な「逆イールド」化一時@3.92%まで急低下@4.4%台まで急上昇した1~2年金利とは対照的だ。ターミナルレート(FRBの政策金利到達点)も@4.75%まで上がり、11月FOMCでは+1%以上の「利上げ」を見ている ↓ 。反面、来年以降は急速な景気減速も織り込んでいる。このCPIなら致し方ない。

 ドル円は@148円手前まで上がった後売りに押されたが、ユーロやポンドを見ると FRBの苦悩。- 米雇用統計が導く「逆イールド」の深化。|損切丸|note を受けてむしろ「ドル売り」に変化してきている。そろそろ 「ドル安・株安・債券安」のトリプル安に相場は転換するのか。- 鍵を握るのはアメリカの「需要」の強さ。|損切丸|note を意識する市場参加者が出てきてもおかしくない。それほど「ドル」を巡る環境は危うい

 こんな状況下、日銀は10年国債の65%も "買占め" ↓ 需要もない「円」を市場に流し込み続けている。これは「ドル不足」解消に全く役立たないどころか、「火事」現場に横から風を吹き付けるようなもの。せっかく米国債の「逆イールド」で「ドル売り」の素地が整っても「円」の買い戻しを妨げてしまう政府・日銀はもっと責任感を持って金融政策に臨んで欲しい。アメリカの様子が変るまで待っているだけなら誰でもできる。

 「イールドスプレッド」の対象となる10年米国債金利が低下したことで米株価は急反発したが、2008年「リーマンショック」以降、世界は「過剰流動性」中毒。ー 「テーパリング」(薬抜き)は並大抵ではない。|損切丸|note。改めて問題の根の深さを感じてしまう。最早「アメリカ式マーケット資本主義」も限界に達しており、 ”次” を見つけるのは容易ではない。まだまだ暫く藻掻くことになるだろう。

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