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将来「コールセンター」が日本に? ー 「金利上昇」=「悪」ではない。

 「えっ、ウクライナ?」

 筆者がイギリスの投資銀行に勤めている時、ITトラブル対応のための「コールセンター」を設置していたが、東京ではなく海外に電話が繋がる仕組みだった。今でこそ「リモートワーク」が世の中の主流になったきたが、投資銀行業界では海外からPCの「リモート操作」は既に行われていた。

 最初はシンガポールITスタッフが対応していたが、その後インドに移り、記憶している限り最後はウクライナだった。どこでも英語対応なので問題ないのだが、時差もある東欧で24時間対応しているのには少々驚いた。それだけ外資はコスト管理に厳しいということ。

 この流れを世の中全般の変遷に照らしてみると、コストの安い国へどんどん移っていった事がわかる。そうすると...将来「コールセンター」が日本に?も決して絵空事ではない。

  東京 → シンガポール → インド → ウクライナ → 東京?

 グローバル企業は常に熾烈な競争の中で闘っているので、*1円でも安く出来るものは安くする当然為替レートも注視しており、M&A(企業買収)や移転の機会を虎視眈々と狙っている。日本もこれだけ安くなれば、当然ターゲットになる

 *逆に「人」に対するコストは惜しみなく使う。優秀な人材は他社に引き抜かれる怖れがあるからだ。筆者の同僚もシンガポール転勤を打診されたことがあったが、それは税制の違いを利用して企業のコストを下げるため。本人の実質給与は維持され、一緒に行く家族のためにプールもついた広いコンドミニアムが提供された。部署の人員を減らすこともままあるが、相応のIT投資をして少人数で回せるよう「コストの最適化」を図る「人」に無理を強いるような邦銀の ”リストラ” とは全然違う

 思い起こせば26年前筆者が邦銀から転職した当時、日本は別格扱いでアジアは「東京」「ex-Tokyo」の2つに分かれていた。それがいつの間にか「東京」は「アジア」に組み込まれ、主要拠点は「シンガポール」、幹部は「香港」に在籍するように。「貧しくなる日本」は既に始まっていた

 だが4年前、筆者が退職する直前には「香港」の日本株スタッフが徐々に「東京」に戻され始めていた。つまりそれだけ「東京」が ”割安” になってきたということ。「貧しくなる日本」「円安」は確かに憂うべき事態だが、「雇用」面はプラスもあり、悲観することばかりではない**安いところに企業は必ず戻ってくる

 **昨今の「経済安全保障」がその最たる例。コスト削減や「円高」対策で国内で売る製品まで工場を中国など海外に移転していたが、ここまで日本が安くなると一部日本に戻す企業も出てくるだろう。2020.11.20.コロナ後の世界 Ⅱ - これから起こりそうなこと。↓ で半ば預言のようになってしまったが(笑)、「サプライチェーンの分断」は日本にとって好機にもなり得る。水面下ではもう動き出しているはずだ。

 これは「金利」に関しても同様。今朝もあるワイドショーで:

 「日本の借金は1,000兆円もあり、金利が+1%上がると利払いが+10兆円も増えて大変だ。 "財政破綻" に近付く」

 いかにも "えせMMT論者" 「国の借金で "財政破綻" などない!」と噛みつきそうなコメント(苦笑)。だがちょっと待って欲しい。筆者は "えせMMT論者" にも「財政健全化至上主義」にも組みしないどちらも自分の都合の良い方に理論を組み立てた "レトリック" (詭弁)だからだ。

 例えば「金利が+1%上がると利払いが+10兆円も増えて大変」の部分。抜けている視点は、「利息」が預金者、国債保有者に移転すること、つまり「国家」から「民間」へ10兆円の所得移転が起きる経済効果は「1人当り10万円給付」と同等だが、①過度な「円安」防止、②20%(≓2兆円)が源泉徴収で国庫に戻る、等考えれば、1回きりの「給付金」より余程効果的

 金利がここまで低ければメリットがデメリット上回るはずで、そもそも「借金」が7,000兆円もあるアメリカが「利上げ」に向かう事を考えれば、この程度で大騒ぎするのは、いかにも大袈裟な "レトリック" だ。

 「損切丸」が専門の「資金繰り」で考えても、8兆円(20%源泉徴収後)が「国庫」から「預金口座」に移るだけなので「金利上昇による破綻」は完全に間違った指摘。また「財政健全化」を謳うなら、むしろ金利を上げて「借金」をしにくくするのが筋だ。 "人事査定" の項目を「名目債務」から「税収増」(除.増税)や「実質債務」(物価調整後)に変えるだけで官僚の姿勢は劇的に変わる「数字合わせ」だけなら ”優秀な頭脳" は不要

 「賃上げ」もできないダメな「サラリーマン社長」も多いので、所得改善には時間がかかるかもしれない。だが筆者のいた外資の銀行で「安い日本」を利したスキームが10年以上前から既に動いていた事を考えると、多少のタイムラグはあるだろうが、この国の「賃金」「金利」が上がるのにそう時間はかからないだろう。日本の「異常な低賃金」は "儲かる" ので今は静観しているが、海外の「インフレ」が進めばいずれ「日本争奪戦」が始まる

 「今回もやはり ”黒船” 頼りなのか...。日本の企業自ら "攻め"の姿勢に転じれば、むずむざ外資に ”おいしい所” を持って行かれずに済むのに」

 20年以上も歯痒い思いで見てきた筆者としては複雑な気持ち。 ”悲観癖” は「日本人」の悪い習性だ。「円安」も「金利上昇」もすぐに「悪」と決め付けずに「利用」するぐらいの知恵が欲しい

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