”Commonwealth” の苦悩 - 「名より実」の株式市場。
オーストラリア消費者物価指数 2Q2020 年率-0.3% (予想)+2.0% (前回)+2.2%
オーストラリアの消費者物価指数は四半期毎の発表のため直近は4~6月の2Qとなるが、これが予想を大幅に上回る下落となった。1Qの+2.2%は他国との比較上高すぎるようにも見えたが、一気にマイナス圏へ突入。*「実質金利」も大幅に上昇した。
*もっともオーストラリア・ドルといえば「高金利通貨」の代表格で、かつては日本でも大人気だった。4~5%が当たり前だった金利が今やRBA(Reserve Bank of Australia、オーストラリア中央銀行)の政策金利もたったの@0.25%。こんな時代が来るとは思いもしなかった。
この状況を表しているのが株式市場。代表的なASX200の5年チャート↓。
2020年初来の変化率も依然マイナスでCPIが示すように不調。原因ははっきりしている。中国との経済紛争だ。牛肉の輸入制限などあからさまな「報復」を受けている。
この傾向は実は他の ”Commonwealth”(=旧英連邦)諸国も同様。イギリス(FT指数 ↓ )もコロナ第1波後の株価の戻りが鈍い。
アメリカに近い分、カナダ(トロント総合株式指数 ↓ )は少しまし。
最もダメージが深刻なのが香港(ハンセン指数 ↓ )。こちらは戻すどころか2018年以降完全な売りトレンドに入ってしまった。
政治的に ”Commonwealth” は中国と対峙するアメリカと呼応する動きを見せているが株式市場のパフォーマンスは冴えない。オンラインやAI関連銘柄を中心に最高値を更新し続けるナスダック指数はもとより、NYダウも下回っている。株式市場は「アメリカに付くメリット」より「中国との交易が途絶える不利益」の方が大きい、と「非情に」判断している事になる。
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一方中国サイドはどうか。中国自体の株価(CSI300 ↓ )は明らかに「何かの力」により物理的に上げているが、とにかく上がっている。
ヨーロッパではドイツ(DAX指数 ↓ )が他の欧州諸国を遙かに上回り、好調が際立っている。ファーウェイについても他国と違い排除の方針を表明しておらず、中国との経済的繋がりを大切にしている国といっていい。その辺りを市場が評価している結果だろう。「名より実」という事。
アジア株で健闘しているのは韓国(KOSPI指数 ↓ )だろうか。こちらも同様に中国に対して敵対的な行動を起こしていない。サムソンなど半導体関連があるのもプラス(&「何かの力」?)。
日経平均 ↓ は「どっちつかず」の中途半端な感じがチャートに出ている。
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筆者も約22年イギリスの会社にいたので「イギリス人気質」も少しは理解しているつもりだ。まずは「倹約の精神」。悪く言えば「ケチ」、良く言えば「経済観念」が発達しているとでも言おうか。「儲かるかどうか」の精査はいの一番にする人達である。
だが同時に「脅しには決して屈しない」という頑強な面もある。おそらく**歴史的に培われた「信念」であり、そうすることが「最終的な勝利」に結び付く確信があるのだろう。今回の対中国の行動ではこの「信念」が目先の経済的メリットを上回ったと推定できる。
**ロンドンに初めて行ったときに強烈に覚えているのが、金融街シティーのド真ん中の地面に大きな穴があいていたこと。当時IRAというテロ組織による爆弾テロが頻発しており、その内の1つだという。だがイギリス人が強調していたのが「決してひるまないこと」。テロの穴の横を何人ものビジネスマンが平然と通勤していた。「ひるんだり恐れたりすればテロ組織の思う壺。日常を平然と過ごす事が最大のテロ対策」と言っていた。「騎士道」の一端を見た思いだったが、今回の対中国も同様だろう。
筆者も心情的には ”Commonwealth” に近い。「今の中国」の覇権主義はやり過ぎだと思うし、いくら儲かっても自由が制限されるのはまっぴら御免だ。ただ気をつけなければいけないのはマーケットは時に「非情」であり、投資については***「名より実」に徹しなければならない時もある。
***確かに過去のアメリカ流「覇権主義」もあまり褒められたものでもなく、ドイツや日本でも反発があるのは理解できる。だが今回の相場の「帰着点」はグローバル経済の中心が本当に「今の中国」になるのかどうか - 投資の長期的な成否はこの点にかかっている。
筆者がもし自分の「お金」を出すなら、目先の上下よりも少なくともその会社(国)が好きか、或いは「主旨」に賛同するかを優先したい。さもなくば肝心なところで踏ん張りがきかず、ただ振り回されて後悔だけが残りそう。日本人なら投資にも「騎士道」ならぬ、ざしずめ「侍魂」も必要ではないか(ちなみに筆者は ”右寄り” ではありません、念のため。苦笑)。
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