見出し画像

コロナと物価 - "FACTFULLNESS" 的観点から考えて見る。

 「もう限界です。店をたたむしかありません...」

 今日もこういう店主の嘆きを吐露したニュースがTVに溢れている。実際この「コロナ危機」の直撃を受けたのは飲食店や宿泊業者だ。

新型コロナ関連倒産

 しかし違うデータを見ると???となったりする。

企業倒産2020.8

主要産業倒産2018~2020

 確かに「倒産件数」は多いし、負債額もそれなりの額だ。しかし同レベルの倒産は2018年、2019年でも起きている時系列で見ると2020年だけが特別でないのは「事実」。経済活動が急激に落ち込んでいるのは「事実」なので、それだけ中小の企業や店舗が踏み留まっている、というのが実情だ。

 政府・自治体の補助金と合わせて、やはり日本では預金を中心とした蓄えが多いのは大きい。その点*日本は海外と比べても耐久力があり、ニュースで流れているような「悲惨さ」とは少し距離がある

 *「損切丸」で追っている「日本の資金繰り」シリーズでも、未だ大幅な預金取り崩しの兆候は見えていない。むしろ預貯金は増えているぐらい。日本人の特徴として「最悪の事態」に備え、前倒しで銀行から借りるなど「お金」を溜め込んでいる様子が伺える。アメリカならあっさり店を潰してしまうところ。「預金大国」日本以外の国ではちょっと出来ない芸当だ。

 「都心オフィス賃料、6年ぶり下落 空室は3%台、在宅拡大で解約」

 KD通信の記事だが、8月のオフィス賃料が@2万2,822円/坪と前月比▼0.83%となり、6年8か月ぶりの下落だそうだ。ピークの@2万3,014円(2014.7)比でも▼0.84%

空室率

 この記事だけ見ると「いかにも大変なことが起きている」と”錯覚”しそうになる。中には「東京のオフィス賃料は@1万円台になる」のように悲観を強調する記事もあるが、例えばリーマンショック後の空室率は2012年に最大9%を超えていた。今回も@4%ぐらいまでの上昇は想定内らしく、その程度であれば大勢に影響はないという。実際J-REITを見ても相場はしっかり。

画像5

 では「損切丸」らしく、今回の「コロナ倒産」や「オフィス賃料」の動向と物価の関係について推察してみよう。

 例えば居酒屋で客の入りが▼80%急減したとしよう。このコロナ危機下、果たして「値下げ」をして集客しようと思うだろうか?

 (答)否。大体今回客が来ないのはパンデミックのせいなので「値下げ」して客を多く呼ぶ、という手法は正しくない。なぜなら受け入れ可能な客数が制限されており、値下げをすれば単に売上、収益が減少するだけ。おまけに「密」になれば感染リスクも上がる

 実際今も順調に営業できているお店は、もともと料理などの質が高く、客単価が高くてもお客が集まる店だ。残念ながらそれ以外のお店はよほど営業形態を変えない限り淘汰されてしまうだろう。そもそも**東京は小規模店舗が多すぎて過当競争になっているという指摘もある。

 **飲食店は東京に約15万店舗あるという。観光客数で東京を上回るパリが5万店というからその多さに驚く。「安くて上手い」はこの過当競争で成り立っている部分が有り、道理であれだけ外国人が来るわけだ。今回のパンデミックはこの過当競争を強制的に是正する「効果」がある。

 「コロナ後」を想像すると、淘汰が進んだ後生き残ったお店は「価格統制力」を取り戻し、確保したスペースに見合った値段で運営できるようになる。お店が減るので客側も選択肢がない。当然お店の収益力は上がるし、給料も上がるだろう(2~3年後?)。

 「オフィス賃料」についても、確かに「リモート・オフィス」の影響から当面下押し圧力がかかる。しかし@2万円@1万円になる、というのは極論だろう。「不動産暴落」を叫び続ける記事も未だに健在(笑)。今でも東京の賃料、地価は海外主要都市より割安になっている( ↓ @2019)のに、そんな ”暴落” が起きれば海外から山のようにオファーが押し寄せるはずだ。

オフィス賃料(2019)

 「リモート・オフィス」「不必要な会議がなくなった」「社内のデジタル化が進んだ」等等、実は利点も多かった。役に立たない社員もあぶり出され、これまでどうしても上がらなかった「生産性」が向上結果的に残った従業員の所得水準を押し上げることになる。

 どうしても既存メディアは、ここに挙げたようなヘッドラインで「大変だ」「かわいそう」といった記事作りになってしまう。まあ「視聴率」「ヒット率」のみに追われている彼らにも同情の余地はあるのだが、大事なのはこれらが必ずしも「事実」(FACT)ではない、ということ。

 特にマーケットで投資やトレードを手掛ける際は気を付けなければならない。マーケットは「事実」と「客観」の塊であり、「感情」と「主観」に訴えるような記事は役に立たないことが多い。もちろん相場は「将来予測」を競うものであり不確実性は常に付きまとうが、予測の元になる "FACT" が間違っていれば勝ち目はない。自分の大切な「お金」を賭けて戦うわけであるから、正しい「武器」が必要だ。

 以前「FACTFULLNESS」という本をご紹介した事があるが、これはまさに相場にも当てはまること。文中に「恐怖本能」という項目がでてくるが、人々がいかに「間違ったバイアス」に傾き易いか指摘していて興味深い。

 メデイアのニュースや配信記事を参考にして株や為替の売買をする方もおられると思うが、ぜひこの「FACTFULLNESS」に徹してみることをお勧めする。違った風景が見えてくるだろう。

 「損切丸」「コロナと物価」に関してはいろいろと検証を重ねているが、「コロナ危機」を経た最終的な着地点は未だ「インフレ的」のままだ。特にこの日本では今まで遅々として進まなかった過当競争や過剰人員の整理を半強制的に執行する効果があり、新しい時代への変化を期待している。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?