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生活が苦しいのは莫大な「インフレ税」を徴収されているから ー 「借金王」は誰?

 6/24 毎日新聞 「円の実力」は過去最低 64カ国・地域で最大の下落

 こう言う記事が注目を集めている。物価を加味した「実効為替レート」固定相場だった1ドル=@360円を下回っている ↓

 注意が必要なのが「インフレ率」。例えば+5%の物価上昇が10年続いた国ではモノの名目値が+50%上がるルーブルや元のように対ドルの取引が国家管理により制限されている為替レートは実情を反映しない、e.g., 国内銀行による「ルーブル買い」禁止 ≓ 市場での「ルーブル売り」禁止。それでも「円」が「ハーパーインフレ」の「アルゼンチンペソ」と肩を並べているのは異常。原因は異常低金利の「円」を調達して行われている膨大な「キャリートレード」と筆者は推定している

 これで「得」している人、「損」している人は誰か?

 日本の「国富」は1.2京円規模@2021と算定されているが、これを「バランスシート」で表すと 

 「預金」が「債務」をカバーしているのが良くわかるが、これが仮にドル円が@110円→@160円に変化すると ↓

 お気付きだろうか。ドル建で評価すると「債務」=「借金」が▼7兆ドルも減って資産側では「預金」が▼3兆ドルも目減りする。これが日本における「インフレ税」の正体。その額は▼300兆円を上回る「大増税」であり、社会保険料や消費税、e.g., 年間▼24兆円@令和6年度、を遙かに上回る。これでは生活が楽になるわけがない

 では「得」する人 ≓「借金王」は誰?

 そう、国 ≓ 政府 ≓ 財務省である。この「円安」のお陰で▼3兆ドルも「借金」が目減りした。為替介入がどうとか「利上げ」がどうとか言っても「借金」を減らすのが "省益" であり評価の対象になる訳だから内心ホクホク

 ちなみにアメリカの国家債務は日本の3倍以上(34兆ドル)だが、年間売上(=GDP)は日本の7倍、株式の時価評価が40兆ドル以上もあるので、@5%に「利上げ」して年間▼2兆ドル利息を払っても支障はない。こちらの「インフレ税」は額面通り激しい物価上昇で取り立てられている ↓

 企業に例えれば「日本株式会社」は蓄え ≓「預金」が潤沢にある "老舗企業" これ以上大きくなる必要がないと考えている「昭和」の "創業家" が未だに幅をきかしており「現状維持」→「縮小均衡」→「倒産」の典型。もっともそれを黙認してきた社員 ≓ 国民も同罪

 本来「社内預金」は「インフレ率」と同等な金利が付くべきだが、それを無理やり「ゼロ」に抑え付けてきた(一時利息を徴収=「マイナス金利」)ため「お金」が社外へ逃げ出した。そこでおあつらえ向きに出てきた税優遇の「新NISA」に殺到。「預金」だけで「借金」を賄えた時代は終わり「社外」≓ 海外からの借入比率が上昇( ↑ 標題 ↓ グラフ)

 「国はいくら借金しても大丈夫」というMMT派の拠り所はこの ”セルフファンディング" だった訳だが、JGB(日本国債)の海外保有比率が銀行や年金を上回る@13.5%に達してしまってはもう風前の灯火。日本株に次いでグローバルマーケットの洗礼を受ける時代は始まっている

 日銀 6月の金融政策決定会合「主な意見」追加利上げ「遅きに失することなく」

 @159円台の「円安」に慌てたのか、今頃になってこんな報道。情報を出すタイミングなどはどうとでも調整出来るので唐突感は否めない。前稿.見えてこないFRBの「利下げ」 ー 「円安」を起点とした「通貨危機」の怖れ|損切丸 (note.com) でアメリカからの圧力の可能性について振れたが、総裁を含め日銀内部でも「利上げ」やむなしと腹をくくった節はある

 ただここまで対応が遅れると7/31にたったの+0.15%「利上げ」、e.g., 無担コールO/N@0.10% → @0.25%、では今の「円安」はどうにもなるまい。一方サプライズで+0.40%「利上げ」=@0.50%にした場合、次の会合でも+0.50%と市場は読むので、今度はJGBが大騒ぎになる。どちらにしても "決定再延ばし" のコストは膨大になる

 では「借金王」財務省はどう考えているか

 賢い財務官僚は2枚腰。仮に「利上げ」路線に転じても今度は政治家に "負荷" を転嫁「先生、利払いがXX兆円増えますので支出を減らさなければなりません」実質「六公四民」これ以上の増税・社会保険料の負担増は政治的に不可。そうなると今まで「お金」≓ 公共事業・公的支出で買っていた「票」が買えなくなる。その矛先が向かうのは「日本I師会」「K光業界」かはたまた「K団連」傘下の大手企業か。いずれにしても戦後60年以上続いてきた「昭和システム」は終わりを迎える

 そういう観点から日本は「第2の終戦」を迎え激動期に入る「デフレ」→「インフレ」転換で@10,000円割れから@40,000円超えに動いた「日経平均」に続いて「ドル円」と「JGB」が次の焦点先に@160円、@170円と値が飛んで「通貨危機」の様相を呈し、日銀の大幅「利上げ」で@130円まで急落するか、あるいは7月に+0.50%の "サプライズ" 「利上げ」でJGBが暴落、e.g.,10年@1.5~2.0%ドル円が@140円割れになるか。どちらにしてもタダで済みそうにない(どちらかと言えば後者の方がベター)

 今の日本人を見ていると「ガリバー旅行記」で体が小さくなった時(デフレ)のよう。だからタンポポ(金利)が巨木に見えてしまう。体のサイズが元に戻ればタンポポはただのお花。「普通の国」になるというのはそういうこと。そんなに怖れるような事ではない


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