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崩壊する「インフレの壁」。ー 米国債は「踏み上げ」、TIPSは「損切り」。

 米国債が突っ走っている。遂に10年は@1.50%割れ。もっと目立つのがTIPS(物価連動債」の売りBEI(予想物価上昇率)で見ると5年が@2.46%まで低下している。「米国債売+TIPS買」で ”インフレ・ポジション" を持っていた向きはまさに ”股割き” 状態。今日(6/10)発表予定の5月米CPI(予想@+4.8% ← 4月@+4.2%)を待つことも叶わなかった

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 実は米国債を凌駕している国債がある。オーストラリア国債だ。直近は米国債+10~15BPの金利水準を保って推移してきたが、昨日(6/9)遂に米国債と並んだ(10年@1.49%)。ヨーロッパの「高金利」イタリアギリシャ国債等は、ある程度金利低下が進んだことで買いの手は止んでいる。

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 一部の投資銀行がボラティリティー(市場変動率)低下を見込んで債券保有による「キャリー取引」(=金利収入を目指した取引)を推奨している影響もあるのかもしれない。おそらく彼らの*「優良顧客」が "利食い" を急ぐ人々。↓(4/23稿)になったことが背景にあると推察される。

 *「富裕税」については前々から話が出ていたので水面下で話が進行していたはず。その辺を察知した「お金持ちリーグ」の人々が一般人に先駆けてリスクを閉じにいっていた可能性が高い。まあ、マーケット(特にアメリカ)では "よくある事" ではある。 

 米国債のBEIトレードなどは一種の ”暴落商状” だが、それだけポジションが傾いていたのだろう。それまでの儲けの大部分(あるいはそれ以上)を吐き出してしまったトレーダー、投資家も多そう。

 「インフレの壁」は(一旦)崩壊したようだが、「インフレが死んだ」と考えるのは早計だトルコリラ(標題添付)やブラジルレアルなど、流動性の低い、いわゆる ”Bold Markets” では様相が全く違う。

 トルコCPI:

トルコCPI

 ブラジルCPI:

ブラジルCPI

 トルコでは大統領が「通貨防衛」のため「利上げ」に踏み切った中銀総裁の首を切って逆に「利下げ」を要求。トルコリラは市場最安値を更新するなど混乱が続く。ブラジルでは物価の上昇に歯止めがかからず10年国債は@9%近い利回りを維持。そのお陰で為替レートは保たれているが、こちらも「インフレが死んだ」とは程遠い

ブラジルレアル(1年)

 まあどちらも「高金利+通貨安」で膨大な「インフレ税」を国民は既に負担しており、「必要なコスト」を払い終わればいずれ相場は終焉を迎える

 ビットコイン(BTC)も踏ん張っている(笑)。一時@$32,000台まで急落したかと思ったらあっという間に@$37,000台12時間程度で+5,000ドル(+16%)...1日の変動率が毎日@10~20%にもなるなら**トルコリラやブラジルレアル顔負けの ”Bold Markets” という事になる。だが判断のベースになる指標やデータが無いのに良くこんなに取引出来るものだ。金利トレーダーのように理屈っぽい人にはまず "向かない相場"

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 **日本では昭和50年台に "大暴れ" した「小豆相場」があったが、あの類いなのかもしれない。先物を巡っておきた経済事件が『赤いダイヤ』という小説になったがまさに ”ドラマティック” 「相場師」と呼ばれる輩が暗躍し、ほとんど犯罪に近かったようだ。BTCは現代の「小豆相場」か。

 「今日のCPIまでは我慢しよう...」

 こういうトレーダーもいるかもしれないが、可哀想だが勝負は既に決している。この流れだと今日の米CPIで例え@+5.0%が出ても米国債は(一瞬売られた後)「材料出尽くし」「踏み上げ」を狙ってくる展開も有り得る。「他人の ”損切り” は拾え」を地で行くような相場展開だ。含み損が苦しくて ”祈る” ようになったら、もうその相場は潮時。早く撤退した方が良い。

 それだけ市場参加者のポジションも気持ちも「インフレ」に大きく傾いていた訳で、思ったより大きな「調整相場」になった。だが最終的な「インフレ」動向が決した訳ではないデイトレードに徹している向きにはしんどい相場が続くが、20年以上も続いた「ディス・インフレ」のあとの大きな流れである。もう少し長期的視点で見ていきたい。

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