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苦しい所を我慢しないとリターンは得られない。- "Good Times, Bad Times" (良い時も悪い時もある)。

 今回は何だか説教めいたタイトルで恐縮だが、相場やマーケットの話と割り切ってお読み頂きたい。

 相場を22年も張っていると必ずしも良い時がばかりではない。長く続けられたのはそれなりの数字が上がっていたからに他ならないが、それでも勝率は65~70%というところ。残り "30%" はどうしても埋まらない "闇" がある。リスクを取った事のある人なら経験があるはずだが、その "30%" がまたとんでもなく辛かったりする

 「資金繰り」を担当していた「損切丸」的に最も深い "闇"  は「お金が取れないこと」。2008年の「リーマンショック」が代表例だが、とにかく金融危機になるとどの企業、どの銀行も自分の持っている「お金」を抱え込む。この「お金の取れない」恐怖は何とも表現しがたいが、顔に血が上って体中から汗が噴き出す感じだ。

 ただ、この "30%" を乗り切ったことで筆者の評価が上がったのも事実。どの仕事もそうかもしれないが、上手くいっている時は何の工夫もいらないが、トラブルや危機に瀕した時にその人の「胆力」≓「価値」が試される「いい人はどうでもいい人」。土壇場に弱い人は当てにならない。

 これはリスクを張る時もそう。

 トレーディングには大きく分けて2つのタイプがある。「順張りタイプ」「逆張りタイプ」だ。今のドル円なら「円安」の流れに沿ってロング(ドル円買い、円売り)から入る人が前者で、踏ん張ってショート(ドル円売り、円買い)から入るのが後者。” Trend is Friend" が合い言葉の欧米は「順張り」が主流で、価格や価値に重きを置く日本人は「逆張り」志向と言えるだろう。日本人ではないがバフェット氏は「逆張りタイプ」の典型だ。

 これはどちらが良い、悪い、という話ではなく、どちらも一長一短ある。日本人の例に漏れず「損切丸」は「逆張りタイプ」だったので、ポジションを持つと翌日から「マイナス評価」のことがほとんど(苦笑)。”流れに棹さす” のだからある意味仕方が無い。

 この場合重要なのが、今相場が山/谷のどこにあるのか、の判断登りの「7合目」なのか、下りの「6合目」なのかこれを間違えるといつ「逆張り」しても毎回「損切り」の嵐に巻き込まれる。経験的に言えば、最低でも「7合目」から仕掛けないと我慢しきれない

 「張っている金額」も大きく影響する。例えば個人でFXをやる場合でも、1万円張るのと1,000万円張るのでは全然違う「損したら▼5,000円」と「損したら▼500万円」では心理的にかかるプレッシャーが大違い。そこは経験や持っている種銭など、個々の相場の許容度に合わせて臨むべき。いくら能力があって相場観が優れていても、身の丈に見合わないリスクを取るとどこかで「降ろされる」

 「順張りにすればいいのに」

 そう思うのも無理はない。だが流れに乗って攻めるのは一見楽そうに見えるが、実はそう単純ではない山/谷の話をすれば、こちらは「3合目」付近から仕掛けないとうま味がない。まだ「3合目」と思ってビットコインを@6万ドルで買った人のその後を考えれば分かり易い。「順張り」には常に「高値掴み」のリスクが伴う。買われて値が高くなっているものを更に買うのは結構勇気が要る「高値掴みは相場の華」なんて格言もあるが、実際にはなかなか厳しい。慎重な日本人にはどちらかというと不向きな戦略だ。

 ただ「大儲け」するのは圧倒的に「順張りタイプ」。何年かに一度やってくる「大相場」に強いからだ。ドル円など@130円で「逆張り」した日本人は吹き飛ばされ、”調子に乗って” 買いまくったファンドが勝利している。まさか "身内" の日銀総裁から 「円、どんどん売ります!」の免罪符。ー 世界的な「真性インフレ」下、「金融緩和」しているのはトルコと日本だけ。|損切丸|note が出されてはどうしようもない。相場の "闇" は深い。

 最近はFRBの利上げ到達点を「ターミナルレート」(Terminal Rate)などと呼ぶようだが、これも山/谷の話に共通する。筆者は1994年時の「利上げ」の経験もあって、年初から「@4.0~4.5%」を「ターミナルレート」と設定してきたが、ここまでは間違っていなかったようだ。「損切丸」で曲がりなりにもドル金利の予想が大きくズレなかったのはこれに尽きる

 だが油断は禁物。山はもっと高いかもしれないし、谷が急に訪れるかもしれない。それほど相場の "30%の闇" は怖ろしい「損切丸」が揺れて見えるのは、筆者がその恐怖をよく知っているからでもあり、内容が急変した時は "闇" が見えていると思ってご容赦願いたい。

 「逆張り」という表現がピッタリするのは「円安」に直面した今の日本@150円が見えてきた今、一体どうするのか。対処方は2つ:

 ①現状維持でこのまま「円安」を甘受(「順張り」)
 ②雇用などの規制撤廃や構造改革、「利上げ」で中小企業倒産などの「痛み」を覚悟し「円高」を促す政策に転換

 1990年代の「不良債権処理」の時に取ったのが①「順張り」方法"流れ" に乗ったまま今の日本がある。いわゆる「失われた30年」だ。今また ”瀬戸際” にあるが、今度はどちらを選択するのか。①「順張り」ならアルゼンチンやギリシャなど「デフォルト国」路線②「逆張り」なら「イギリス病」を克服して復活した「英国経済型」も望める。

 この30年で何度も裏切られているのでつい①"流れ" に乗ったままが頭に浮かぶが、ここは日本人として②「逆張り」を期待したい。投資相場もそうだが苦しい所を我慢しないとリターンは得られない圧力に屈したトレーダーには「損切り」が待つのみ@79円台から見てきた筆者には今の「円安」は「7合目」に映るが、さてどうだろう。何十年に一度の正念場なのは間違いない。おっと、 "闇" にも気をつけなくちゃね(苦笑)。

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