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米国債市場が告げる「インフレ時代」の幕開け。

 2021年は①日々の市場を追う簡潔な記事型 note. ②事象を掘り下げるマニュアル型 note. の2本立てで行こうと思う。今日は①記事型 note.

 米国債10年金利が@1.0%を抜けてきた。アメリカの大統領も変わる事だし、色々な意味で「局面の転換」を示す重要な動きだ。 ”きっかけ” としては予想に反して民主党が下院で2議席確保したことによる「トリプル・ブルー」=大統領、上院、下院の過半数を占めること、が挙げられている。

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 特筆すべきは米国債市場でいわゆる「スティープニング」(長期金利が短期金利を上回る現象)に拍車がかかっていること。「損切丸」では将来の金利上昇傾向を測るために ”先々金利” 、ここでは5yr-5yr=5年先の5年金利を指標としているが、昨年3/18に金利が急騰したレベルも超えてきている。

 普通国債が売られる中で物価連動債は逆に買われておりBEI(Break Even Inflation Rate)は上昇基調を強めている

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 明らかに「新しいステージ」に入って来た「インフレ時代」の幕開けと言ってもいい

 1.金利市場

 10年米国債@1.00%~1.50%は「実需の買いが入らない空白地帯」

 まずBEIが示すように ”体感物価” が@2.0%を超えているアメリカ人にとって、名目金利で@2.0%以下の債券を買うのはわざわざ損するようなもの

 米国人以外で米国債をせっせと買ってくれるのは日本の金融機関だが、為替リスクを取らずにベーシススワップ為替直先=FX FWD で手持ちの円をドルに換えるやり方だと多大なコストがかかる。10年なら@1.50%が必要で、それ以下では買えない。むしろ ”売り” だ。

  e.g. 3か月円 → ドルのコスト=$LIBOR( London Interbank Offered Rate、以下+0.40%  :  ¥L@▼0.08% → $L@0.24%+0.40%=$@0.64% =$ファンディングコスト=¥@0.00%→$@0.72%。この説明は繰り返しになって恐縮だが「考えるより慣れ」なのでご辛抱を(苦笑)。

 ここからの米国債の金利上昇ペースは意外と早いかもしれない。

 2.株式市場

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 やはり強気継続。これまで高騰していたナスダックには若干の逆風かもしれないが、この程度の金利上昇なら米国株はびくともしない。銀行株等はむしろ「金利上昇」を歓迎して買われている。「金利上昇」が株価下落を招くのは、FRBによる利上げが取り沙汰されるようになってからだろう。

 3.為替市場、ビットコイン

 本来ドル金利上昇はドル買い要因と取られがちだが「インフレ」となれば話は別。名目金利の上昇を物価上昇率が上回れば逆に「実質金利」は低下する。仮に ↓ 金利マトリックスのアメリカの物価欄にBEI@2.06%(実際は@1.20%)を入れると「実質金利」は@▼1.14%に急低下

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 なのでドル売りは止まないことになる。実際ドル円の戻りは鈍いし、ユーロ高、ポンド高、人民元高傾向も変わらない。

 ビットコインの買いが勢いを増しているのもやはり「インフレ」を期待したものだろう。ある米国銀行は目標価格$14.6万だとか...。

 市場は引き続き「長期金利上昇」「インフレ」「ドル安」をテーマに進んで行きそう。今日(1/7)も日経平均がぶり返している。

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