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アメリカCPI@+4.2%の衝撃。

 4月米CPI(年率)@+4.2% (予想)@+3.2% (前月)@+2.6%

 日米欧の主要国で金利を含めて *”4%” という数字を久しぶりに見た。なんだか懐かしい(笑)。市場も@+3%台は覚悟して身構えていたようだが、遙か上を飛び越えてしまった。その衝撃は大きい。

 *今度は中古車価格が上昇中?(4/19稿 ↓ )でも書いたが、アメリカでも4月に中古車価格が+10%も上昇し、それが今回のCPI急伸の原因になったという。レンタカー会社が車の確保に躍起になっているとか。だがこれも半導体不足を起点としているため、 ”特殊要因” と呼べるかは疑問だ。

 しばらく ”買い” で粘っていた米国債だが、これではひとたまりも無い。10年債は@1.70%に達したが、到底このCPIジャンプには追いつかない。「実質金利」ベースではアメリカが一気にドイツを抜き去って最低金利に

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 株式市場も@+3%台までは織り込んでいたものの、@+4.2%は完全に ”ネガティブ・サブライズ” ナスダックは年初来の上げを帳消しにしてしまい、日経平均はドルベースでマイナス**「金利は関係ない」と "唯我独尊" 状態だったビットコインもさすがに売られた。東京時間早朝から@47,000~50,000あたりで激しく売買いされている。

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 **テスラ社は突然自社購入代金のビットコイン受け入れ停止を宣言。理由が ”マイニングによる電力消費量の増大" (2015年の66倍)に配慮って...。多くの人がいぶかしがっている「マスク氏は高値で売り抜けたんだろうな」金融当局からの警告も増える一方だし、ビットコインETFは承認されない流れに向いているのかもしれない。

 FRBは火消しに躍起だ。2月の終わりぐらいから、比較対象となる2020年1~2・四半期の物価水準が「コロナショック」の影響で低かったことを理由に物価指標が上がることを ”事前告知” し続けてきたが、さすがに想定を超えていたのだろう。2022,2023年には@+2%を少し超える水準に落ち着くと ”説得” を試みている。

 この「CPIショック」の真の問題は「FRBの信任」である。気の早いトレーダー達は6月のFOMCでテーパリング開始(tapering、債券など金融資産購入額を減らし量的緩和を漸減すること。医学用語では患者に投与している薬剤などの量を徐々に減らすことを指す)と騒ぎ始めているが、むべなるかな。FRBの ”事前告知” +”説得” が失敗に終わった時の衝撃は計り知れない

 実際TIPS(物価連動債)の動きを見ると、国債の名目金利が上昇したにも関わらずBEI(予想物価上昇率)は高止まりしており、根強いインフレ懸念を維持している。5年BEI@2.75%は「FRBの信任」が崩れれば一気に@3%に向け上昇していくことになるだろう。

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「お金」 > 「物」の量の状態が変わらない限り、物価上昇循環は止まらない。(前稿 ↓ )わけだから、市場がFRBにテーパリングを催促するのも当然。考えたくもないがインフレが制御不能になれば、アメリカが今のブラジルや、下手をすればトルコレバノンのようになってしまうのだから。

 そうなると安定的投資が不可能になってしまう。仮に金利の上昇した国債に投資したくても、株やビットコインも売り時を逃せば「損切り」の嵐"利食い" を急ぐ人々。(4/23稿 ↓ )が増えるのは当然だろう。

 少々大袈裟に感じるかもしれないが、相場やマーケットはこれぐらい ”臆病” で丁度良い100回勝っても1回の負けで全てを吹き飛ばしてしまう世界だ(逆もまたある)。20年ぶりとか50年に一度とか言っても何の慰めにもならない。ただ、大抵のケースはその前に市場からサインが出ているのだが、残念ながら見落としたり無視したりするケースがほとんど。***投資や相場が上手くいっている人ほど陥りやすい "罠" である。

 ***特に「利食い」が難しい(最近は「利確」と言う人も多い)。儲かっているとどうしても気が緩みやすいからだ急転直下「利食い」が「損切り」に変わる恐ろしい経験を何度もすると、相当神経を使うようになる。更に「利食い」で売った後に相場が急上昇すると儲けをフイにしてしまうだけでなく、その後手が出なくなる。自分で売った値段より高い値で買うのに抵抗があるからだ。その点「損切り」は簡単。気にせずに売ってしまえばいい。「利食い」は本当に難しい

 さて今回はどうだろうか。慌てて売って何もなかったケースでは「しまったなあ」とあとで笑える。買いたければまた買い直せば良い。だが「またか。大丈夫。」とたかを括ってポジションを持ったまま暴落した場合は ”泣くに泣けない” "荷物" を抱えたままナンピンなどすれば損を倍増させる可能性大だ。そういうのを何度も見てきた。

 確かに投資も相場もどこかでリスクを負って勝負にいかなければならない。事実2020年3月の「コロナショック」以降、下落する株を買い向かった向きは大きな果実を手にした訳だが、今回のインフレは厄介だ。株が下がったからと再度金融緩和や給付金など大型の財政出動を行えば、益々インフレを助長してしまう。その点は十分考慮しておく必要があるだろう。FRBの ”告知” 通り進めばいいが、マーケットは半信半疑である。

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