米国債もJGBも「イールドカーブ」は離陸寸前。
どこかのアナリストかストラテジストが語っている記事を見たが「損切丸」も同じ感覚を持っている。 "歪み” がどこに来ているか捉え方は様々だろうが、元・専門家として直接的に感じるのが「金利」、特に「イールドカーブ」の形状の変化だ ↓
米国債は飛行機が一度着陸しようとしたのを止めて再上昇した時の形状に似ている。” Go Around!" というらしいが、かなり危なっかしい。
JGBのそれは、長い長い低空飛行を終えてようやく10年前の空へ飛び立とうとしている ” Take Off! " 。
「質量保存の法則」的観点で言えば、上昇エネルギーを使った分、失速する機も出て来る。典型は株式市場だろう。最も煽りを受けたのが「香港治安維持法」(2023.6.30~)で社会形態ががらりと変わってしまった香港ハンセン指数 ↓ 。CSI300を見ても「お金」が逃げ出しているのは明らか。こちらは離陸どころか、まるで崖から飛び降りるような形状。
コロナ対策の ”大盤振る舞い” の恩恵を受けて@16,000台まで上げていたナスダックも犠牲者の一人。何とか持ち直そうとウォール街が総力を挙げて買い支えているが、さて...。
そう考えてみると、意外と健闘しているのが銀行株などオールド銘柄が集まるNYダウや日経平均。特に後者は「円安」効果を差し引いても驚くべき粘リ腰。やはり「安い」事の威力が凄まじく、アジア内で見れば「中国」→「日本」への資本移動が読み取れる。
やはり ”台風の目” は世界の巨額債務。「コロナ危機」対策で「お金」をばらまきすぎた。*2015年には200兆ドルそこそこだった世界債務が、たったの8年で307兆ドルまで膨らむのは異常だ( ↑ 標題グラフ)。
「借金」の話になるとどうしても気になるのが「中国」。やはり桁違い。
なかなか精緻なデータを得にくいので材料の掻き集めになってしまうが、筆者がザックリ掴んでいるのが総債務が60兆ドル相当 ≓ 9,000兆円で、インフラ投資に向かっている融資平台の借入平均金利が@3.2%程。仮に60兆ドルを@3%でファンディングしているとすると利息だけで年間▼1.8兆ドル≓▼270兆円にもなる。税収が+500兆円弱らしいから、半分以上利払いに持って行かれている計算になる。
日本と比べて見よう。
「日本は債務過剰で大変だ!」と財務省を中心にプロパガンダ(?)が盛んだが、比較で言えば「中国」との差は大きい。よく対GDP比で?00%なんて数字を羅列しているが、あまり意味はない。「借金」は返せるかどうか。国債利払いも平均@0.66%で年間▼8兆円程度に過ぎず「資金繰り」を逼迫するような数字ではない。国債費の内▼20兆円は「元金」の借換分で、本来予算フレームに入れるべきではない。まあ数字を大きく見せたいのだろう。
税収+70兆円に対し国債利払いがたった▼8兆円なのだから「中国」に比べれば極めて "健全財政" 。「利上げ」で大騒ぎしているが、先日財務省が@1.5%に上げた試算値でも利払いは▼10兆円しか増えない。
それでもこれ程「X税メガネ」に走るのは、今上げておかないと上げられないかもしれない、という過去の体験から来ている。しかし国債金利がどうこういってもどうにもならないほど予算には構造欠陥が出来ており、最終的には「社会保障費」の削減に切り込むしかない。「シルバーデモクラシー」がそれを阻んでいる訳だが、▼40兆円も医療費に費やすのは明らかに過剰。もう若年・壮年層は親の介護や子供の教育にかける「お金」が尽きている。行く末は本当に ”令和の姥捨て山” 。
「日本」の議論をしていると極めてまともだが、これを「中国」に当てはめると数字が天文学的で帰結が見えてこない。本当に「徳政令」のような「借金チャラ」しか方法がないのではないかと思えてくる。
こうなるとどの国の人民元ユーザーもお手上げ。 "紙切れ" になってお終い、の可能性すらある。あの国から「お金」が逃げているのは、それが絵空事ではないと感じているからだろう。
では主要通貨・ドルを抱えるアメリカはどうか。
こちらも64兆ドルもの「大借金」を抱えるが収益力が違う。鍵になるのが現代の「財宝」株の時価総額だ。+40兆ドルもの「財宝」を抱えていれば「資金繰り」に不安はないが、逆に言えばこれが+20兆ドルに急減するようなことがあれば途端に火の車。 "アキレス鍵" にもなる。だから米政府もウォール街も株価維持に躍起だ。今の所「インフレ」退治優先だが、ダウで@30,000ドル、ナスダックで@10,000ドルを割り込むような局面では「利下げ」に転じるはず。+5%ものバッファーがあるのだから対応は可能だ。
日本も+2%ぐらいまでの「利上げ」は想定内なのでそこまで騒ぐ事ではない。やはり「利上げ」も「利下げ」もままならない「中国」が鍵になる。追い込みすぎれば武力行使に打って出る懸念も高まる。全てを有耶無耶に出来るのは「戦争に勝つこと」。既に第三次世界大戦は始まっているとする論説もあるが、何かが壊れる前に踏み留まれるか。人類の英知が問われる。