”ジャクソンホール” に向けて走り出したマーケット。
米国株やビットコイン(BTC)等、 "ドル建資産" を中心に ”ジャクソンホール” に向けて走り出したマーケット。パウエル議長に対する楽観が先行しているようだ。ちなみに議長講演は@8/27の予定。
議長には大きく2つの選択肢がある:
①直近の雇用統計などを重視し ”教科書通り” テーパリングを開始
②「日本化」=「デフレ」を避けるため金融引締めは極力先延ばし
「損切丸」を含めドル金利の "古株" なら①に一票だが、どうも今のマーケットは②に傾いているようだ。これまでのパウエル議長の政策運営を見れば当然かもしれない。
②の最大のメリットは株価などの調整をFRBが引き起こさないこと。そして隠れた大きなメリットは国家財政に貢献することだ。今でもCPI年率@5.4%を無視するようにゼロ金利+資産買入を継続しているのだから、株価や暗号資産が結局上昇してしまうのは当然。何しろ「お金」が余っている。
①を確信して米国債を売り込んだトレーダー達は2021年3月頃までは "絶好調" だったが、10年米国債が@1.70%を付けた所から相場は急反転。えらい目に遭った(苦笑)。差し詰め「FRBに裏切られた」というところだ。
FRBにもアメリカ人は「貯金大好き」になったのか? ↓(6/4)という疑念が湧いている。即ち「日本化」=「デフレ」への怖れだ。2000年以降、世界の中央銀行の関心は「インフレ」より「デフレ」リスクに移っている。なんと先頭ランナーは我が「日本」である。
ECBもかなりビビっており、こうなるとFRB共々金融引締めはなるべく先送りしたくなる。日米欧とも「リーマンショック」「コロナ危機」とクライシスが続き、中国も合わせると「借金」は3京円を超えている。
実はここがポイントなのだが「インフレ」になって困る主要国はない。
この「正当性」が今の凄まじい「マイナス実質金利」を支えている。
だが同時に大きなリスクも伴う。物価の上昇は消費マインドの腰を折ってしまうのか? ↓(7/27)という懸念だ。実際に「ミシガン大消費者指数」などには*価格の上昇による消費の減退が現れている。
*「日本化」の場合はその消費の落ち込みが「デフレ」へと転化したが、それは「円高フィルター」や国内製造業の空洞化を通して日本だけで起きた現象だった。だが今回は様相が違う。日米欧に中国も同時に巨額の「お金」を一挙に放出しており「通貨フィルター」はかからない。圧倒的な量の「お金」>「もの」の状態が続き、値段が高くて買いたくなくても物価は上昇。いわゆる「スタグフレーション」である。
1度@$30,000.-を割り込んで再度@$50,000.-を超えてきたBTCが象徴的だが、株価等も結局値が上がってしまうのは「お金」が余ったままだから。だが「儲かった」と喜んでばかりもいられない。もし「スタグフレーション」なら、値付け基準の「通貨」そのものが減価する訳で、本当に「儲かった」かどうかは定かではない。「現金・預金よりはマシ」なのは確かだが。
「インフレ」と「低金利」の共存
今までの「マーケットの教科書」にはなかったが、これが起きつつある(日本では現在進行中)。これは「国家の意志」なのではないか。それ程「借金」は途方もない規模であり、「インフレ税」+「預金税」をダブルで徴収しないとどうにもならない。「お金持ち」以外の我々一般庶民は、こうした ”事情” を認識しつつ、自分の資産がなるべく目減りしないように:
a. 必要な耐久財の前倒し購入
b. 余剰金による「インフレ連動株」「物価連動債」(TIPS)等の購入
c. 返済できる範囲での「借入」
等々、各々の ”事情” に合わせた努力が必要になる。ベッタリ銀行に「預金」しているだけでは徴収される一方。2015年以降の相場がそれを証明しており、現在も継続中と考えていい。
一点注意が必要なのが「金利が暴力的に上がる時」。最近もベネズエラ、トルコ(トルコリラ急落、調達金利1,000%の衝撃 ↓ @2020.8.7.ご参照)ブラジルなどで起きているが、金利が急騰すると「お金」が「金利資産」に移り資産価格が急落する。こうなると収集がつかない。
日米欧のように「お金持ち」国家では中央銀行がしっかり押さえ込めるため確率は低いが、時に「金利」はFXや株価を超えて「暴力的」になる。きっかけは様々だが、筆者も散々辛酸をなめた。中央銀行による制御が不能になると "一瞬" で全てを吹き飛ばす。1,000人中995人ぐらいは「損切り」だ。
パウエル議長が ↑ ①②どちらを選択するか興味深い。そう言う意味で8/27の「ジャクソンホール講演」は注目に値する。どちらが正解だったか、5年後、或いは10年後、歴史が証明することになるだろう。
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