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柊と南天 web歌会を開催

短歌結社「塔」の中の昭和48年度生まれの有志で集まって「柊と南天」という会を作っている。主宰、というか発案されたのは「塔」の編集委員でもある永田淳さん。10名足らずだったメンバーも徐々に増えてきた。

私は歌歴も短くその末席を汚している状態なのだけど、寛容な皆さんのおかげで会報やメーリングリストの仲間に入れてもらっている。

本当ならリアルで対面する「歌会」が各地域やグループで開かれているはずだった。しかし、このコロナ禍のために開催が難しい。「柊と南天」でも確か京都方面での会合の話があったものの、なくなってしまった。

そこで提案されたのがweb歌会。オンライン会議のツールを使って集まればできるのでは、ということで5/4の14時からめでたく開催の運びとなった。

【今回のweb歌会ルール】
・参加者は今回の取りまとめ人に詠草として2首を事前に送付
・取りまとめ人はそれをシャッフルしてテキストデータにまとめ、事前配布
・歌には番号を振り、作者は分からない状態にしておく
・参加者は詠草一覧を準備してLINEグループのビデオチャットへ集合
・詠草を読んで、参加者それぞれ好きな歌3首を選んで投票(画面で挙手)
・1首ずつみんなで講評したり解釈したり

取りまとめを担当したのは歌集『たどり着けない地平線』の著者でもある池田行謙さん。当日のファシリテーターは永田淳さん。

LINEグループのビデオチャットでてんやわんや

みんなオンライン会議やツールの扱いに慣れているわけではなく、LINEのビデオチャット自体が初めてという人もいる。私もZoomやSkypeは使ったことがあるけれどLINEで集うのは初めて。

スマホを三脚に設置して、両手は使えるようにしておく。自動回転と一緒に首をタテにしたりヨコにしたりしながらLINEのビデオチャットへ入室。すでに5名くらいメンバーが揃っていてバッと画面が出たので「うぉ」と少しのけぞってしまった。「お久しぶりですー!」と挨拶できる人もいれば「初めまして」の方も。

今回の参加者は8名、スマホはどうも6名までしか表示ができず、後から来た人たちの画像はスワイプした先に置かれていた。こんなふうに見せるのか。声が聞こえない人がいたり、ミュートの方法に手間取ったり、結局ミュートはしなかったり、やっぱりみんなの環境が揃うまでは時間がかかる。

予定から15分くらいかかって、いざ開催。

詠草から3首を選ぶ

池田さんがあらかじめWord文書に詠草をまとめて、みんなに配布済み。各々で印刷して手元に持っている。最初の5分くらいは詠草を読んで自分の中のトップ3を決める。

この間は画面が静かになってみんな動かないし、声も聞こえない。ちゃんとつながっているのか心配になって何度も画面を見てしまった。

ファシリテーターの永田さんの音頭で、1番〜16番の歌を読み上げつつ「この歌がいい人?」と画面から挙手をしてもらってカウント。確かリアルな歌会では入り札式で紙に書いた気がする。票を集める歌もあれば、0票となる歌もある。

参加者はそれぞれ自分の歌が分かるので、読み上げられているときは一番緊張する(はず)。票が入ると嬉しい。

1番から順に講評と理由、解釈などを述べていく

歌会によっては投票なしの会もあるらしい。でも今回は意見を述べるきっかけとして投票ありを採用したとのこと。1番から順に歌を確認していき、票を入れた人に「なぜこの歌を選んだか?」を聞いていく。オンラインのやり取りでは明確に指名されたほうが発言しやすく感じる。

自分一人しかその歌に票を入れていないこともある。それでも「ここが良かったので」と言語化して、みんなに伝える。人の意見を聞いてから、最初に連想していた景色と全く違うことに気づく場合もある。

例えば今回は、主語や一番描きたいポイントがどこだったのか、人によって解釈が変わる歌がいくつかあった。ダブルミーニングのような状態が効果的な評価を受けるものもあれば、分かりにくいと評されてしまう歌もある。

ただ、どの解釈も間違いではないし、詠み手が選んだ語彙に意見は出されるものの否定はされない。その辺の緩さが短歌と歌会の面白さなのだろうと思う。特に「柊と南天」の場合はメンバーがみんな同い年でもあるので、意見交換に対する感覚が似ているのが救いでもある。

最後に作者の答え合わせ

全ての歌の講評が終わり、最後に1番〜16番の作者が明かされる。そこで、解釈に迷った部分について「これはどんな情景で?」とか「どんな場面を想定した?」と本人に確かめることもできる。

今回私が出した2首はこちら。

給料の天引き式で幸せが貯まればいいな また昼寝する
とびきりの山場をみせる和太鼓のように激しくなる脱水機

業務連絡ですが、2首とも池田さんの解釈がほぼ当たっていました(笑)

票の多寡を争うのが目的ではないので、ここでスパッとお開き。「ありがとうございましたー」と三々五々みんなLINEから去っていって無事に終了した。

web歌会を終えてみて

おそらくリアルに会う歌会だと、この後も打ち上げや飲み会があって話が続いていくはず。web歌会にはそれがない。でも「終わったらすぐ帰る」というこのスタイルは嫌いではない。

日本全国いろんなエリアから参加できるので、やろうと思ったら意外と手軽に実践できるのだなとも感じた。

ただ、誰かが話しているときはパッと話を挟みにくいので、タイミングを逃しがちな人が出てしまうかもしれない。今回は歌会経験が豊富な永田さんが切り盛りして全体に振ってくださったので、人によって大きく発言量が偏ることはなかった。

ツールは、LINEだと音質がちょっと厳しい。あと、6名以上になると全員をいっぺんには確認できないので、挙手や意見を述べたいアプローチを画面上から察知するのは難しいかもしれない。次回は違うツールを使うと思う。

「柊と南天」の今後

7月上旬を目処に会誌第3号を制作予定です。それぞれが詠む自由詠10首、題詠3首ほど、ミニエッセイに加えて、歌集評論なども載ります。

過去に関連記事も書いたので参考にどうぞ。



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