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久しぶりに公衆電話を使った

一日中外出するのにスマホを忘れた。気づいたのは朝9時過ぎ、最寄り駅の構内に入ってからだった。うわー。幸いなことに途中で調べ物をするような用事はない外出。スマホがなくても大丈夫そうではある。

ただ家族には知らせたほうがいい。緊急事態が起こったとき、持ち歩いている前提だったら連絡が取れなくなってしまう。

途中駅の構内に公衆電話があったのは覚えている。あれを使おう。そういえば小銭はあったっけ。こういうときに限ってないと困る。電車の中で財布をチラリと開けて小銭を確かめる。よかった、10円玉が3枚はある。

旦那さんのスマホにかけようか。家の電話にかけようか。スマホはたぶん20秒か30秒で10円だったはず。市外通話はどれくらいだっけ。スマホならとりあえず20円あれば用件が済むと思う。でも早口のほうがいいだろうな。

降りた駅で改札に向かう流れから外れて、隅っこにある緑色の公衆電話へ。さすがに誰も使っていない。

受話器を上げると「ツー」と音がする。うわあ懐かしい、何年ぶりに聞く音だろう。受話器を持ち上げると跳ね返る金属フックのバネ感も久しぶりだ。いやいや、電話かけなきゃ。

10円玉を入れたら、横長の液晶ディスプレイの上段に1つ⑩が表示される。20円入れると⑩⑩になる仕組み。下段には100円玉の表示ができるらしい。「100円玉はお釣りは出ません」と書かれている。さすがにそれは忘れてなかった。とりあえず⑩だけ入れて、ダメそうなら次の10円玉を入れよう。

旦那さんの携帯番号は覚えているので、1つ1つ確かめながら押す。

公衆電話の台の脚が1本傾いているようで、番号を押すたびに電話がガコンガコン揺れて遠ざかる。ああ、ほとんど使われないからこういうところも直してもらえないのかなあ。そう思うとちょっと悲しい。

無事に番号を押して、緊張の間があった後に呼び出し音が鳴る。電話はすぐ取ってもらえた。

旦「はい」

旦那さんの硬い声がする。そうだろうなあ、あっちの表示はどう出てるんだろう。10円玉で行けるところまで勝負だ。

私「もしもし、私。スマホ忘れたみたい」

しまった、オレオレ詐欺みたいじゃん。しばしの沈黙があり。

旦「…あー、はいはいはい」
私「テーブルか枕元にあると思うんだけど」
旦「ちょっと待って」

ディスプレイの⑩表示が点滅し始めた。あっ、そういえば10円玉は何枚入れて置いても後で戻るのか。最初から2枚目も入れておけばよかったと思いつつ再投入。また⑩表示が点灯する。

旦「あったあった、枕元にある」

無事、私がちゃんとスマホを忘れたことを確認。

私「もし何かあったら○○に行くからそこに連絡して。じゃあ」

受話器をフックにガチャンと置いてもお金は戻ってこなかった。そうか、スマホ相手だと10円玉1枚で用を済ますのは難しくなったんだな。でも公衆電話があってくれたおかげで助かった。連絡は付けられる。

*  *  *

帰って確かめたところ、スマホの表示には「非通知」で出ていたらしい(電話によって違うかも)。会社関連の電話が転送されたのか、誰か知らない人が身分を隠してかけてきたのか、最初は警戒したという。そりゃそうだ。

「もしもし、私」と言われたときはいろんな情報がぐるぐる回って、理解するまで時間がかかったらしい。名前を名乗ってくれたほうが分かりやすいとのこと。すみません、次回はそうします。


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