おかみのたまや

よう来たの。ここはおかみのたまやの小説置き場じゃ。 わしがどんな者達と関わってきたか、…

おかみのたまや

よう来たの。ここはおかみのたまやの小説置き場じゃ。 わしがどんな者達と関わってきたか、見たくなったら見てみるとえぇ。 https://kaiunmiko.com/okaminotamaya

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第四話 国を変えたい末弟

「玉狐殿ーっ!」 辺り一帯に響く声。 その声だけで分かる事がある。 面倒な客が来た。 無言のまま店主と傍に座る雪は 自分の感情に深呼吸した。 雪はちらりと店主を見ると 分かりやすく眉間に深い縦皺が寄っている。 それだけでわかる事がある。 この店主は非常に頑固だ。 こうと決めたら意地でも動かない。 おそらく店主は店頭に姿を現す気は ないだろう。 眉を八の字にしながら、くすりと頬笑む。 すらりと衣擦れの音を鳴らし、 雪は立ち上がった。 「おお、これは。玉狐殿はいらっ

    • 第三話 父を想う娘子

      「「おーたまっさま!」」 甲高い声があたりに響いた。 店主はピクリと耳を震わせると 鼻頭に皺を寄せた。 「「おーたまっさま!」」 声の主は幼い娘子のようだ。 一人ではない。 声を聞く限り二人以上は居るように思える。 「あれぇー?ここじゃなかったっけー?」 「おきつねさんいないねー。」 明らかに物見遊山の声。 店主は不快の鼻息を立てた。 この【おかみのたまや】は 相談事がある者が入る土産屋だ。 その者たちは基本明るくても 深刻な音が声に混じっている。 だが店主を

      • 第二話 想いを届けたい幼馴染

        暑い そうしか思えない日もある。 そういう日は必ず 店の奥の風が通る場所でじっとしている。 自慢の長毛もこういう日は鬱陶しい他ない。 「頼もうーっ!」 ふと声が聞こえて耳をぴくぴくと動かした。 だが、自分の耳に通す必要のない声だと思い ふさりとしっぽを顔にかける。 「頼もうーっ!」 「・・・・・・・・・・。」 「頼もうーっ!」 「・・・・・・・・・・。」 「たのもたのもたのもたのもーーーっ!!!」 「えぇい!うるさいのう!」 いつまでも声を上げていそうだ

        • 第一話 吾子が欲しい婚約者

          ちりぃん、と心地よい音が響いた。 誰か店に来たらしい。 その日は澄み渡る青空だった。 店主はのそりと起き上がり 入口に近づいた。 入口には艶やかな髪を 惜しげもなく流した娘が静かに立っていた。 質素な姿をしているが顔立ちも良い。 育てが良かったのであろう。 美しいと思える佇まいであった。 少し戸惑うように 店内を見渡す娘に店主は声をかけた 「よう来たな。 ここは“おかみのたまや”。 わしが神界から運んできた 神具を売る土産処じゃ。」 娘は声がする方を見て驚いた。

        第四話 国を変えたい末弟