夏の匂いとやさしい記憶
ひさしぶりに実家の玄関の戸をあけ、おどろいた。
「おじいちゃんとおばあちゃんの家の匂い」がしたからだ。
いつからこの匂いがするようになったのだろう。
それとも、暮らしていた当時は気づかなかっただけで、
ずっとこの香りがあったのだろうか。
謎は謎のまま(笑)
「おじいちゃんとおばあちゃんの家の匂い」とは、
幼少期によく訪れていた、祖父母の家の匂いだ。
田舎ですごした夏休みの匂い。
記憶は断片的だ。
南国のつよい光と、玄関先のおしろい花。
まだまだ、時間はゆっくり流れていた。
祖父母と歩いていると、遠くにいる誰かが大きく手を振る。そして、何やら手にしていたものを転がした。数秒後、ゴロンゴロンとすいかとグレープフルーツが転がってきて、おどろいたものだった。
蚊帳の中ではしゃいだこと。
電球にぶら下がった虫とりのガムテープに、虫がたくさんついていて気味が悪かったこと。あたたかいヘチマのお味噌汁が美味しかったこと。
ご近所さんがあつまって、ソーメン流しをしたこと。
何ということのない日常が、特別な思い出になっているから不思議だ。
祖父母が他界してずいぶん経つが、ずっと近くに感じるのは、笑顔や匂い、シワシワの手の温もりを五感が覚えているためかもしれない。
息子の中でも、同じようにやさしい記憶になるといい。
初めてのひとりお泊り。
たのしい思い出をつくって、帰っておいで。
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ほぼ毎日note13日め。
読んでくださり、ありがとうございました!
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