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2023年J1第10節横浜FC-北海道コンサドーレ札幌「壁を超える」

強い風が吹いたのは、、、

「強い風が吹いたらなぁ」と思っていたのは横浜の選手たちだったろう。ここまでリーグ戦未勝利だったが、前節のガンバ大阪戦に引き分けて勝ち点1を積み上げた。ガンバの猛攻に遭うもゴールポストに何度も弾かれるラッキーもあり、最後は5バックにして相手の攻撃を跳ね返し苦しみながら最少失点で凌いだ末の勝ち点だった。そうして勝ち取った勝ち点を胸に挑んだ札幌戦は結果から言えば1-4の惨敗となった。

開始1分の近藤のゴールで先制したが、強い向かい風への対応が悪くGKブローダーセンは高いボールを蹴っては強い風に煽られてサイドラインを直接割ってしまうようなキックを繰り返していた。
そういった風の中で、札幌の蹴ったロングボールにボニフェイスは札幌・浅野と競り合いながらクリアを試みたところで転倒しボールを奪われ、吉野がカバーに戻るもやや遅く左で振りぬかれたシュートは、ブローダーセンのセーブをすり抜けてゴールに転がっていった。前半39分同点となった。

直後に、ボニフェイスを励ます選手たち。追いつかれただけだ。次の1点は横浜だという印象を抱いたが、それは違っていた。その失点の6分後、コーナーキックのこぼれ球を繋がれ、シュートの跳ね返りを押し込まれて1-2と逆転を許してしまう。コーナーキックの跳ね返りを奪いに行くのもバラバラでディレイしているばかりの選手ではどうにもならない。寄せても交わされたらと言ったリスクがあるのは観客でもわかるが、寄せないとボールはいつまで経っても奪えない。自陣の深いところでいつまでディレイして防衛線をジリジリ下げる守り方をしているのだろう。

傍観者効果

同点にすべく臨んだ後半15分にはまたしても浅野に決められて3点目を許してしまった。きっかけは林のオーバーラップのパスカットから裏にボールを蹴られて、3人目、4人目と繋がれての失点。カバーしていた吉野が時間を稼いでいる間に横浜は戻りが遅く、ユーリララが戻った時にはパスを出されて外され、ボニフェイスが対峙している時には浅野に裏のコースを走られてフリーでシュートを許してしまい失点。戻りが遅いから相手のパスワークを助けてしまっていただけに映る。

後半はお粗末なサッカーが45分繰り広げられていた。選手交代をすればしただけ戦況が悪くなる。井上が入ったのは、攻撃にシフトするはずだが、ゲームメイカー2人では守備が疎かになるのはこれまでの試合で何度も見てきた。守備の強度が高くないことに目を瞑るのはともかく、正直今の横浜の中盤で最も機能していない三田と井上のコンビでどう攻めたいのか多分誰もわかっていなかった。前節で意図の見える采配をしたかと思えば、またこうして戻ってしまう。

後半のアディショナルタイムには、ペナルティエリアにはGK含めて9人も選手がいるのに、4人の札幌にゴールを許してしまう。途中交代で入り体力的には余裕のある選手が何人もいたにも関わらずである。無論、後半アディショナルタイムで2点差を逆転するのは難しいからモチベーションが下がるのは、サポーターでも知っているが、それでサポーターは妥協したものにお金を払ってみないといけないのだろうか。4点目の立ち尽くすだけで何もしなかった選手を見て感じた。これが傍観者効果なんだと。

傍観者効果とは、自分以外に傍観者いると率先して行動を起こさなくなる集団心理で、その傍観者が多ければ多い程その心理は強くなる。ペナルティエリアに9人もいたからこそ、敵陣から戻ってきた選手たちは何もしなかった。あれが2人なら3人なら、カバーしないと寄せないとと感じたはず。ここで重要なのは、傍観者がいるかどうかということ。
チームの中で最後まで戦えず傍観者になっている選手がいるのであれば、もう一度役割と目標と目的を与えて奮起させなければならないし、チームメイトも手を差し伸べて引き上げていかないといけない。それが出来ないレベルが今の横浜といえばそれまでであるのだが、経験値の高いベテランこそ率先してそういったものを解消する為に動いているのだろうか。私にはそう見えない。芝に水を撒く撒かないみたいな話の前に、このクラブ、チームは昨年J2にいた弱いチームなのだから最後の最後までファイトする必要がある。

昨年はチームが好調だった部分はあるが、キャプテンマークを撒いた長谷川が負傷気味でもプレーしてそして結果も出してチームの柱として引っ張った。アウェイ盛岡戦では選手交代枠を使い果たし、彼がゲーム終盤で動けなくてマークを外して失点してしまったが、それでも批判は少なかった。彼が粉骨砕身してチームを助けていたのは、サポーターのみならず選手も感じていたはずだからだ。最後までプレーしきることは、J1では当たり前のレベルでしかない。小川航基が攻守で奮闘しているが、それがそもそもおかしい。ボールを縦に蹴ったら、後は前線の選手お願い。奪われたらディフェンスお願いの傍観者になる選手たちのプレーを見たいと誰が思うのだろう。

You’ll "ever" walk alone

You'll Never Walk Aloneはゆるねばなどと言って、国内だとFC東京のサポーターが試合前に歌ったり、イングランドではリバプールのサポーターが歌うのが一種の恒例行事である。歌詞の大意としては「君は一人じゃない」であるが、今の横浜は選手が個々で一人一人歩いているみたいなものだ。
局面局面で戦ってないとは思わない。ボールが来れば競り合うし、ハードなマークで止めてカードももらったりする。シュート数も勝てていないチームなりにチャンスがあれば放っている。最近ではゴールも取れている。が、戦っているのはいつも1対1なのだ。数的有利になるシーンが少ない。サポートやフォローする動きも少ないし、逆も取れない。所謂3人目の動きもない。

同時に、このクラブも一人で歩いているのではないかと感じている。クラブに共感出来ているサポーターはいるのだろうか。一般的に昇格したチームは前年度より観客が増えるものだ。露出も増える、J1というステータス、勝ち馬心理、予算も増えて、レベルの高い選手も増える、クラブのビジョンやミッションに共感して人が寄ってくる。が、果たして今どうだろう。

昇格したくて昇格させたJ1。その先は順位としての目標以外は何を達成したいのか。定量的な目標はあるだろう。平均観客動員なのか、シーズンでの動員や、クラブメンバーの数もそうだろう。それを増やす動機とは何か。この無味無臭になりつつあるクラブに何ができるのだろうか。チームの成績に対して傍観者になりつつあるクラブを危惧している。

前も言ったが、横浜でサッカーチームを運営しているだけのクラブになっていないだろうか。なぜこのチームはJ1にいるべきなのか、なぜいたいのか。目標はあっても根拠がない。そして何も打ち出さない。己の野望を語れ。水曜も試合があるから応援してくださいではなく、自分たちがどうありたいから応援してくださいなのだ。それがブランドであり、己である。クラブは今のチームを見捨てていないだろうか。順位は最下位でもあきらめていないのはサポーターだけのように感じる。一番やっていけないのは、クラブがチームを傍観する事だと私は感じている。クラブがチームを傍観したら、ファンは傍観者になる。成績は芳しくない中でも、このチームは強いんだと寄り添うクラブであってほしい。

絶壁

2006年にJ1昇格を果たした時の守護神だった菅野がこの試合札幌のGKとして立ちはだかった。後頭部が垂直だったことと鉄壁のGKだったことをモジって、絶壁なんて呼んでいたっけ。その壁から1点しか奪えなかった横浜。

J1からJ3で、勝ち星のなかった徳島とY.S.C.Cが勝利したことでJリーグで唯一未勝利チームとなった横浜。残りはたったの24試合しかない。自分たちは、この断崖絶壁から這い上がるしかない。ほぼ垂直登攀に近い絶壁に噛り付いて、よじ登る。黙って失点を見てるだけの選手は去れ。諦めていない選手の重しになるな。
J1に昇格したチームに移籍、加入したのだから苦しいのは当たり前。それでも自分の力を証明する為に契約したのだから、誰かがやってくれる、誰かが導てくれる、誰かが何とかしてくれるではない。自分でこの壁を超えないと、チームが降格するだけではない。自身の選手としての価値も失うのだ。

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