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起業したくなった大学生や研究者が良い事業を作るためにビジネスコンテストをどう活かすべきか?っていう話

今は大学生や研究者が参加できるビジネスコンテストが多いですな。
大学主催のものから民間企業主催のものまで様々。

起業家さんの中にはビジネスコンテストで評価されたことがきっかけで起業を本気で考え始めた、ていう人もいましてな。
コンテストを通じて、世界的な企業はもちろん起業家自身が「起業して良かったわ」と思える会社がたくさん生まれてほしいなあと思ってます。

一方で「ビジネスコンテストでは評価してもらえたから実際に会社作ったけどうまくいかねえぞ」という人もチラホラ見かけます。
なんでなんすかね。

今回はそういう話です。
起業やビジネスに興味を持った学生さんや研究者さんが、世のため人のため自分のためになりつつきちんと儲かる事業を作るために、ビジネスコンテストをどう取り扱う活かすと良いのかをまとめてみました。

なお今回考える「ビジネスコンテスト」は、すでに業績があがっている事業を対象にしたコンテストというより、大学などでよく行われている「アイディアコンテスト」に近いものを指しています。


ビジネスコンテストをどう活用すれば良いの?

のっけから結論っぽいことを書くと…

  • ビジネスコンテストと実際のビジネスの違いを認識する。
    コンテストで無双した人が実際のビジネスで失敗することはよくある。
    逆パターンもよくある。
    コンテストでの評価に一喜一憂しない。

  • コンテストは将来的に行うことになる顧客やVCとのコミュニケーションに向けて「事業アイディアに関する仮説を言語化する練習の場」として活用する。

  • 自分の事業に関係するビジネス領域や技術領域について、自分より詳しい人を探す場にする。自分より優秀な人を探して仲間にしよう。

最低限この辺りを意識することでコンテストへの参加をより価値あるものにできるはず。
以下もう少し詳しく書きます。

ビジネスコンテストと実際のビジネスの違い

もちろんビジネスで成功した人の中にはコンテストでも評価された人はいるけども、「コンテストで無双して起業したものの実際のビジネスではイマイチな感じ」というケースもよくある。(逆パターンもある)
ビジネスコンテストと実際のビジネスは違うところが色々あります。
なのでコンテストの結果に一喜一憂する必要はないです。

違い1:評価する人が違う

ビジネスコンテストを審査するのはいわゆる「ビジネスに詳しい有識者や(結構成功している)経営者」です。
一方で実際のビジネスでは審査員が面白い!と言っても顧客がお金を支払わなければ破綻します。

審査員ではなく顧客が評価するのが実際のビジネス。
審査員には褒められたけど、顧客が評価しなかったからうまくいかなかった、というパターンはわりとよくある。

(ただこれはコンテストの審査基準やコンセプトも関係してくるので単純に審査員が悪い、運営が悪い、という話ではないです)

違い2:評価されるポイントが違う

コンテストの趣旨にもよるけど、多くの場合、アイディアの奇抜さや解決する課題のスケールの大きさが評価されることが多いみたいです。
「地球規模の気候変動」とか「治安の悪化」とかグローバル感があって大きなお金が動きそうなアイディアは、実現性はともかくとしてウケが良い。

ただその一方で、実際のビジネスでは「プロダクトを顧客に確実に届ける」ことも課題の大きさと同じくらい重要になる。実現することが超重要。
スケールのでかい課題を解決するために製品開発や顧客開拓などについて具体性のある計画を立て、それらを実行することがビジネスの成長には必須。

アイディアの面白さと同等かそれ以上に「実現すること」が重要なのが実際のビジネス。
アイディアは壮大だけど、それを実現するための具体的で地道なステップを登れずにうまくいかなかった、というパターンはわりとよくある。

違い3:商売はずっと続く

多くのビジネスコンテストは発表して表彰式をやって終わりだけど実際のビジネスに終わりはない。
プロダクトを顧客に届けても場合によってはアフターサービスは必要だし、一つの製品を継続的な改良なく売り続けられるビジネスもあまりない。

新たなアイディアを実際のプロダクトに落とし込んで顧客に提供し試し続けるのが実際のビジネス。
アイディアは派手で褒めてくれる人は多かったけど、顧客に提供し続けるための体制を作れなくてうまくいかなかった、というパターンはわりとよくある。

ビジネスコンテストに参加する意義

「ビジネスコンテストと実際のビジネスとでこんなに違いが多いならコンテストに参加する意味ないじゃん」とも思えるけど、実際のビジネスに臨む前の下準備として、コンテストを通じてできることは結構あるんすよね。

意義1:具体性のある計画を言語化するきっかけ

「顧客/課題/解決策」の言語化は投資家やVC向けの説明はもちろん、自分に協力する仲間を集める時や自分自身の頭の整理など、いろいろな場面で必要とされるし、終わりがない作業です。

「その時のベストなストーリー」を作るべく、今の頭の中を整理して言語化する機会にするのが良い。
その際は「斬新なアイディアを言い放って終わり」ではなく「壮大なビジネスを一歩ずつ実現させていく具体的なストーリー」を作ることを目指そう。

絵空事ではない具体的な計画は、VCや協業先などあなたの事業に直接関わるかもしれない人たちにとっては魅力的に見えるはず。

意義2:新たな出会いのきっかけ

コンテストの規模感にもよるけど、コンテストを通じて審査員や協賛企業の人々など普段あまり絡まないクラスタの人と会うことがある。その中には自分の商売を手伝ってくれる優秀な人もいるかもしれない。

起業するのであれば自分より優秀な人で周りを固めた方が良い。
優秀な人と一緒に仕事をしないと、起業家自身の成長限界がその事業の成長限界になりかねない。

その事業への熱意については起業家自身が一番であるべきだけど、知識やスキルについては「ビジネスも技術も全領域で起業家自身が一番優秀」という状況は避けるべき。

そのためには自分の事業に関係する顧客や事業領域、技術領域などについて、どこか一つの領域でも自分より詳しい人を探した方が良い。
外部の人も参加するコンテストは、そうした優秀な人に会えたり、優秀な人を紹介してもらえるきっかけになることもある。

審査員との関係作りも重要。多くの場合、審査員は実際に事業をやっている人や様々な事業を見てきた人が多い。
コンテストでの評価とは離れて「その事業を実現するために次に何をするべきか」という切り口で具体的なアクションやその背景にある考え方を聞くのはかなり有効。

「実際に上場させたり大儲けしてる人じゃないみたいだけど聞く意味あるんかな…?」と思ったとしても聞いておいた脳のどこかにメモしておいたほうが良い。結構芯食ったことを言ってくれるケースもある。
(もちろん例外はある)

そんな感じで、コンテストは様々な人に出会える良い場です。とはいえ一定確率で「やべえ人」もいます。
詳細は書かないけど「やべえ人」と関わると色々めんどくさいことになる。会場での名刺交換などは仕方ないにしても、コンテスト主催者や、学内の産学連携部門で信頼できる人がいるようであればそういう人たちからの情報も頼りつつ「やべえ人」からは距離を置けるとベスト。

コンテストでの評価がVCや顧客からの評価にも直結するのか?

微妙に横道にそれた話。

これはビジネスコンテストに限らず、技術コンテストや学会での発表賞などにも言える話だけど、いわゆる「コンテスト的な場での評価」が顧客やVCからの評価にはつながらないことは多いです。

顧客にとってはその製品が予算内に課題を解決できるかが重要だし、VCにとってはその人が魅力的でありその事業計画にスケール感と実現性がどれだけあるかが重要になる。

起業準備期間や起業して間もない頃は仕方がないけど、ある程度の段階まで来たら過去の受賞歴は聞かれたら答えるくらいにした方が良い。

対VCのプレゼンでは「今の事業内容やその計画、顧客とのコミュニケーションの状況」を中心に、対顧客のプレゼンでは「どんな課題をどれくらいのコストで解決できてそれにより顧客がどう幸せになるのか」を中心に語ったほうがいい。

事業に直接関係しない過去のことより、事業そのもの今とこれからを語ったほうが良さそう。

(主に大学の中の人向け)
良い起業家を生み出せるビジネスコンテストとは?

過去大学主催のビジネスコンテストにいくつか関わってきたけれど、起業家を生み出すコンテストにしたいのであれば、アイディアだけでなくその実現性や具体的な活動内容を評価することが重要。

もちろんそうなると応募のハードルは上がるので、応募者のレベルごとに複数の部門に分けるのも良いかもしれない。
「アイディアだけ見ます部門」「試作品や事業の実現性も見ます部門」みたいな。

そして実際に事業化につなげたいのであれば、審査会などでの審査員から応募者へのフィードバックも重要になる。
単に評論家キャラの人を呼んで現状の良し悪しを論じてもらってもあまり意味はない。

そのビジネスアイディアをどう改善すれば事業の実現性が高まるのか、具体的な作戦をフィードバックする場にすべきだし、そうしたコンセプトに共感し実行できる人を審査に加えた方が効果的。
技術面の知識が豊富な上で、ビジネス面でのフィードバックができる人を呼べると最高すね。

学生であれ研究者であれ、大学には手を動かしてものを作れる人が多く集まっている。
アイディア先行で勝てるコンテストよりも、アイディアをどうやって実現させるか、「壮大なアイディアを実現するための作戦と今やっていること」を評価するコンテストこそ大学で開催する意味があると思います。

そういう視点だと電気通信大学がここ数年続けているU☆PoCは良いコンテストだと思ってます。

  • アイディアだけでなく実際に動作するプロトタイプを評価する

  • 誰の課題を解決できるのか?本当に解決できそうか?を評価する

という考え方は、起業家予備軍の皆さんに技術と顧客の重要性を知ってもらうために必要な要素なので、実効性のあるコンテストをやりたいなーと思っている大学関係者の皆さんは参考にすると良いと思います。

(U☆PoCさんには僕も過去に審査員としてお手伝いしていました。まともなコメントができていたかは不明ですがな…!)

そんな感じです。

皆さんからのサポートはもれなく焼酎代とkindle積み本代に変換され、そこでの気付きが新たな記事のネタになり皆さんを楽しませることでしょう。多分。