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重なり合った偶然の末に天職と出会う⑯

 

流通業

 物流センターでは新入社員としては大変重要なことを学ぶことが出来ました。
百貨店は「小売業」です。"物を仕入れて売る” が基本です。しかしながら百貨店が「流通業」と呼ばれるのはそれらの商品を仕入れ売り届ける業務があることにほかなりません。自ら物流網を持ち、委託も含めて配送業務まで行っていることが百貨店の業務の大きな一つなのです。
小売業も仕入れ先の問屋さんも大きく見て流通業であり小売業はその中に含まれるわけですが、百貨店は顧客への配送業務を担っていたことが他の小売業とは違った発展を遂げてきた大きな特徴と思います。
 現代では自社で流通網を持っていたことが逆にネックになっていたり、他の物流専門業の発展であったり、そもそもECサイトなどの発展に見られるように小売りそのものの在り方も変わってきていることも事実です。またスーパーマーケットは多店舗化することでスケールメリットを出し価格を抑えてお客様に提供する仕組みを構築し、ステーション立地ではなくても近所で便利に親しみやすく、安く買えることで発展してきました。スーパーマーケットも大きな物流センターを持ちますが、集中仕入れした商品を店舗に配送することが主な業務です。そういった意味でスーパーマーケットもまた流通業です。これも現代では新しい在り方が模索されつつありますが。
 とにかく30数年前の新入社員にとっては仕入れ⇒流通の大きな流れを体験し、売り場とは違って大量に仕入れ、(ものによっては数千~万と言う単位で仕入れることも)仕入れた流れてゆくまさに物流を体験するわけです。
おのずと商品知識も付き、売れ筋商品とそうで無い物などの知識も身に付くのです。

流通のしくみ イメージ

返品と片づけ

 繁忙期が終了すると、残った在庫商品、お客様への配送間違いなどによって戻ってきた商品などをすべて問屋さんやメーカーに返品するという業務を行い、物流センターをきれいに片づけて繁忙期が終了します。
 当時は主なギフトセットは返品が可能でした。ただ返品できるからと言っていくらでも発注してもいいわけではありません。迷惑ですから。繁忙期には在庫を持って置かないとお客様のご注文の伝票が来た時にすぐに発送が出来ません。すると「まだ届いていない!!」と言ったお声を頂戴することになります。
 まだパソコンも無い時代ですから売れ具合と、在庫の関係は基本的には経験と勘がものを言います。毎日の伝票の流れを読み、在庫を発注し、欠品にならないようにしつつ適正な在庫を持つことがベストです。ですが物凄い勢いで出たので慌てて沢山発注したら ピタッと伝票が止まってしまいそのまま在庫になって繁忙期を終えてしまうと言うようなことも間々あります。人間がすることなので100%は中々難しく、需要と供給を読む事も新入社員の大きな勉強になります。
 出来るだけ返品は少ない方がいいに決まっています。ですがお客様への配送も出来るだけ正確でかつスピーディーである事が大切です。この両立が求められるのが物流業務の面白さでもあり難しさでもあります。お客様にはもちろんですが、仕入れ先様にも出来るだけ迷惑を掛けない事がとても重要なわけです。ちなみに仕入れた数を返品した数で割った返品率は2%以下が望ましいとされていました。ほぼ達成できていたはずです。
 繁忙期が終わって物流センターの業務をすべて終え、商品を丁寧に返品し物流センターをきれいに片づけ、仕分け棚やベルトコンベアなども通常期の体制に片づけ、兵どもが夢のあとと言ったような、静かな物流センターに戻ります。

ガラーンとした倉庫イメージ

ギフト解体セール

 少し前一度返品した商品の一部が改めて大量に物流センターに戻ってきます。(納品されてきます)いわゆる「ギフト解体セール」の為の納品です。このセールがいつから始まったのか?は存じませんがギフトの時期はお中元とお歳暮の時期だけなので次のシーズンまでには賞味期限も古くなってしまうため、メーカーさんや問屋さんの協力の元、商品に全く問題のないもちろん未開封のものはグッと値段を下げて仕入れさせて貰いお客様に安く販売します。処分するのはもちろんロスになるので安くしてでも売ってしまおうという取り組みです。概ね販売価格の相場は”半額”です。ものによっては90%OFFみたいなものも有ったり、30%OFFくらいのものもあります。
 単純に「売れ残ったから安売りをして捌いてしまえ。」と言う発想だけではなく、この機会に安く購入してもらう事で商品を知ってもらい今後の購買に繋げてゆくといったサンプル販売的な要素も含みます。
 当然在庫に限りがあり、「売り切れ御免!」で販売します。もちろんお客さんも見逃す手はない!と店頭で「ギフト解体セール」が始まったら開店と同時に走って買いに来られます。売れ筋の商品はあっという間に完売となります。
 「ギフト解体セール」は半年に一度の呼び物でもあり、大きな売り上げが稼げるイベントでもあり、「あそこの百貨店はギフト解体セールでいいものが揃ってる!!!」と言う評判はお客様に伝わります。なので各百貨店はメンツもあり、「ギフト解体商品」は売れ筋のものは取り合いになります。少しでも充実した商品のアイテムと量の確保が重要で一つのメーカーの商品は他の百貨店でも当然売っているわけなので、商品を仕入れ発注するバイヤーは商品確保に必死に奮闘します。
 新入社員の頃はそんなことも判らない中で久しぶりに売り場にスーツを着て出勤し、始まった「ギフト解体セール」でお客様にもみくちゃにされながら、売り場で商品を補充したり、接客をしたり嵐のような日々を過ごすのです。

「ぎhギフト解体セール」イメージ

次回に続く

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