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E53:飛んだり、跳ねたり

2015年大晦日
当時90歳になったばかりの父方の祖母と、紅白を見ていた。

ば「あの子ら、また出くるこどあるが」
源「ばあちゃん、違うよ。さっきの子達はNMBで、この子たちはAKB、あと乃木坂…」

ば「何かね、それ?」

こちらもそんなに詳しくはないから、解説するのが一苦労だった。

ただ、祖母は時々、本質的なこと、こちらがドキッとするような質問を投げかける。

ば「あんなに、たくさんの子達が踊っちょるのに、テレビに映るのは同じ子ばっかりやねぇのかね?」

源「そ、そうやねぇ」

知らず知らずのうち、芸能界のシビアな状況にズバンと踏み込む祖母。

ば「紅白て、昔は歌を聴くもんじゃったのに…」
源「今は違うの?」

ば「今は、若い子が大声でおらんで(叫んで)、大勢で、飛んだり跳ねたりしちょるだけの騒がしい番組じゃけ、楽しゅうないわな」

源「う、飛んだり跳ねたり…」

ば「最近は、最後までよう見とられんごどあるな」

…………………


時は流れ、2022年
ここ数年の接触自粛を経て、昨日
久しぶりにレコ大を一緒に見た。

97歳になった祖母は
この7年の間に、聴力がほとんど失われ、純粋に歌番組を観て楽しむことができなくなった。
耳が遠くなってからは会話もままならないことも。


もう前のように、テレビのボリュームを上げることもなくなり、じっと画面を見ているだけなので、

あんまりわからないのかなぁ、
と勝手に思っていたら、

画面に映る氷川くんを見て、急に、
「この子はまーた、綺麗になりよるな…」 

ああ、ちゃんとわかってるのね…

大事なポイントは、ちゃんと押さえてくる。

だから祖母といると、面白い。

97歳。超高齢である。
正直な話、一緒にいて話をする時間が愛おしい。
だから僕は、今のうちに
母方の祖母には出来なかったことを
精一杯したいと思っている。

出来るだけ一緒にいたい。

ちなみに祖母
今年はそのNHK「飛んだり跳ねたり」が始まる頃に
寝るそうな。おやすみなさい。

さて、来年はどんな年になるかな。

みなさま、本年もありがとうございました。
来たる年もまた、よろしくお願いします。

げんた





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