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E149: お月謝トンネル

今日は64日目、あと2日です

あれ?
月謝袋がないよ!

45年以上前の
習い事でのお話。僕は小学1年くらい?

毎月会員証の横に置かれている、「月謝袋」がその月からなくなっていた。

(これは、もしや…)
源「ねー、来週から、もう習い事やめてええの?」

家に帰るなり、僕はちょっとした期待を込めて母にそう尋ねた。目の前にある事実を、都合の良いように考える。それが子どもである。

母「え?なんで、急にそんなこと言うの?」
母はキョトンとしている。

源「だって、月謝袋がなくなってたから…」
僕は、前のめりになって聞いた。正直なところ、その習い事が大嫌いで早くやめたかったのである。


母「あ、そういうことね。違うよ、お月謝がね【コーザフリカエ】になったんよ」

コーザ……フリカエ? 
はて? それ、美味しいの?
小学1年生に実体は全くつかめない。


源「次からどうやってお金払うの?」
疑問点は山ほど出てくる。次々に母に質問した。

母も、小さい子どもにどうやって教えて良いものやら困ったのだろう。

母「えっとねー、銀行にお金を入れておくと、ちゃんと相手に届けてくれるんよ」

源「え?銀行に行けば、それだけでお金が届くの?」

母「そう。銀行には相手先に届けるルートがあるの」

子どもに銀行口座を教えるのはまだ早い。
教えたとしても、口座振替とか引き落としとか、そんなシステムは理解できないだろう…。

つい先月まで、オレンジ色の月謝袋に、お金をジャラジャラ入れて、手渡ししていた少年としては、いきなりそんな魔法のようなシステムを説明されたところで、理解が追いつかないのである。

そこで、子供なりに、以下ように理解したのである。

この間まで銀行が、「秘密の工事」をしていて、習い事の場所までつながる「お金トンネル」ができたに違いない。

銀行のお姉さんが座っている、あの窓口の下あたりに、秘密のトンネルがあって、袋に入れたお金を、そのトンネルにスコーン!と放り込むと、ドラえもんのタイムマシンみたいに、

ビヨヨーーン ビヨヨーーン

と、トンネルの中をお金が高速で通り抜けて、
トンネルの出口=習い事の受付の窓口の扉が開いて、お金がポトンと届く。

きっと銀行の窓口と、習い事の窓口を繋ぐ
秘密のトンネルができたんだ!

すごいな、大和銀行!


「すごいな、ビズリーチ!」
ではないが、そんな感じで感動したのである。

少年は、勝手に妄想した上、
勝手に近所の大和銀行をリスペクトしたのである。

3時になったら、さっさと店を閉めて、ティーパーティーを開き、なぜか知らないが、勝手にお金を送り込める秘密のトンネルまで作っている…。銀行とはなんて凄い場所なんだ。

初めて私の記事を読んだ方、申し訳ございません。私は小さい頃から、目の前の断片的な事実をつなぎ合わせて、自分の都合の良い空想の世界を繰り広げ、勝手にストーリーを作って、いろいろ考えては遊んでいる、妙な子だったんです。


かつて、3時になったら、銀行のシャッターに耳をつけて中の様子をうかがっていたように。

何とか、そのお金を入れる秘密のトンネルを見つけたかったが、窓口は、当然覗き込むことはできなかった。

母にトンネルのことを説明しようとしたが、まともに取り合ってもらえなかった。当たり前である。

ただ、「お金専用のちっちゃいトンネル」が見たかっただけなのだ。


車や鉄道のトンネルと
ドラえもんのタイムマシンしか知らない少年は
その枠組みの中でしか、想像できなかったのである。

…………………

見たかったなぁ。
「お金専用ミニトンネル…」

昭和の、大和銀行を思い出しながら、
令和の、りそな銀行でお金を振り込んでいたら、

そんなことをふと懐かしく思い出した。

※私のイメージにかなり近いトンネルを
 snjsskさんからお借りしました。

【66日ライラン 64日目 あと2日】

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