あこがれユニバーサルデザイン
引っ越すことになった。
今日引っ越し業者のトラックを見送って、マンションの管理会社の立ち会いの前に、うどん屋さんにお昼を食べに行った。引っ越しを手伝ってくれた母も一緒だ。
この町で食べる最後のランチ。
私はカレーうどんを注文して、首筋に引っ掛けた紙エプロンに汗が滲むほど夢中で食べた。
ずずっと勢いよく啜るにはちょっとたいへんなずっしりと重い麺に、とろみのあるカレーがよく絡んでおいしかった。
カレーのスパイスの香りと出汁の風味がたまらない。
カレーうどんが食べたい時というのは、カレーライスを食べたい時とはまた別だと思う。
二つは全くの別物だから。
その話を母にしたがあまり共感されず「へえ」と言われた。
うどんを食べながら考えていたのは、
小学校の時、国語の教科書に説明文の単元で載っていた「ユニバーサルデザインのうどん」のことだった。
それは箸を自由に使えず麺類をうまく掴むことができない人でも食べやすいうどんというもの。なんでも、麺に細かな穴が空いていて、無造作にフォークを突き刺しても滑り落ちず、簡単に食べられるというのだ。
食べやすいだけではなく、その穴のおかげで出汁やスープがよくからみ、おいしいらしい。
そのときに「へ〜、それじゃあこの世のすべてのうどんをユニバーサルデザインにしたら良いのに」と思ったことを覚えている。わかんないけど、普通のチップスやせんべいより、サッポロポテトバーベキュー味の方が味が染みやすいみたいな理屈なのかな?しらんけど。
食べやすいし普通のうどんよりおいしそう!
ユニバーサルデザインのうどん食べたい!
食べたい食べたい!
小学生の私は授業中、うどんのことで頭がいっぱいだった。
だからいまだにうどんを食べる時は毎回、ちょっとだけユニバーサルデザインに想いを馳せてしまう。
しっかりスープが絡んだうどんに出会うと「うまいな?お?ユニバーサルデザインか?」とか思うし、あんまりなうどんに出会うと「まぁユニバーサルデザインちゃうやろししゃあないか」と思う。
どこで食べられるものなのか真剣に調べたことはない分際で恐縮だが、いつか食べたい。
私は今日この街を出ていくし、これからも引っ越すかもしれないけれど、これからも何か、珍しくておいしい食べ物との出会いがありますように!
そんなことを考えながらうどん屋を後にした。
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