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仮想背景と配色

仮想背景は散らかった部屋を見せないためのものではない。仮想背景とは着飾ることの拡張である。

私は人生において「服の色合いの組み合わせ」等について一切考えずに生きてきた。すなわち、英語でいうところの  ”the very last guy to consider about coordination of his clothes”(服装のコーディネートについて考えるまさに最後の一人)である。

その私が「仮想背景とは着飾ることの拡張である。」と叫びたい衝動に駆られている。本稿は、この着飾ることの拡張であるところのCR(Coordinated Reality)に関する実験と考察である。


まず、仮想背景を用いていない状態、かつ、やる気のない状態、これを《基底状態:O》と呼ぼう。

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次にジブリが提供する「かぐや姫の物語」を仮想背景として用いた状態。これを《遷移状態:かぐやO》と呼ぶ。

背景とするにはもったいないほどの美しい桜だが、モデル自体は、その無気力さと、服の色により背景に埋没してしまっている。《基底状態:O》では気づきにくかったが、顔の肌色と服の色が被っていることも浮き彫りになる。 人として服のコーディネーションに気を使ってこなかったこと、”the very last guy to consider about coordination of his clothes”(服装のコーディネートについて考えるまさに最後の一人)であることが再確認されると同時に、顔の肌色が服に比べ濃度が高く、そのために、顔がやや浮き上がって感じられる状態が出現している。

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同じくジブリが提供する「借りぐらしのアリエッティ」を仮想背景として用いた状態。これを《遷移状態:アリエッティO》と呼ぶ。

アリエッティのコンセプトに合わせ、位置取りも少し下げ、人物をやや小さく表現してみた。《かぐやO》に比べると《アリエッティO》は背景よりも人物が若干はっきりとする。顔と服の色の濃度差も少し気にならなくなる。
加えて、アリエッティという世界観の導入により、モデルは変わらずに不機嫌な状態なのに、やや《良い人》に見える効果も付加されたようにも感じられる。

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アリエッタの背景のグリーンに合わせ、服側に少し濃いグリーンを配色する。これを《遷移状態:アリエッティO:G》と呼ぶ。

《かぐやO》および《アリエッティO》に対して、人物に少しメリハリがでる。視線が、背景の緑と服側のグリーンに誘導され、モデルの不機嫌さが気づかれにくくなっている。

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《遷移状態:アリエッティO:G》の状態から、背景を青とグリーの単色に変更する。加えて、モデルの状態に、若干の愛想笑いを付加する。これを《遷移状態:お天気おじさんO:G-Smile》と呼ぶ。

悪くはないが、コーディネーション系の議論から逸脱しウケを狙いに行ったように受け取られる可能性を有する状態に遷移していることがわかる。《お天気おじさんO:G-Smile》における重要な発見は、配色の重要さに加え、位置取りの重要さである。《お天気おじさんO:G-Smile》では、人物をやや右手に配置したことで、【お天気おじさん感】が強調されている。逆に人物を中央に配置すれば、受け手が認識する背景からの情報群と人物からの情報群が混在し、受け手側に認識の混乱を引き起こしてしまう。《お天気おじさんO:G-Smile》により、背景色と位置取りの重要性が認識されたといえる。

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《遷移状態:お天気おじさんO:G-Smile》の愛想笑いを、上から目線に変換するために、黒の背景に点光源を配置する状態を試みた。

ここでは背景として、国立博物館の東洋館の像を配置した。これを《遷移状態:東洋館O:G-condescending attitude》(恩着せがましい態度)と呼ぶ。位置取りも、光と像の配置に対して点対称な状態に変更した。 黒の背景と点光源に加え、ありがたそうな像が、あたかも守護神のように感じられ、実際の人物の実態とは乖離した《賢そうな雰囲気》が出現していることが確認された。

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《遷移状態:東洋館O:G-condescending attitude》(恩着せがましい態度)の黒の基調に対して、金沢の工芸品の和傘のオレンジ系を配色してみる。これを《遷移状態:和傘O:G-Tradition》と呼ぶ。

位置取りは和傘とのバランスに合わせて再度右側に寄せた。《東洋館O:G-condescending attitude》(恩着せがましい態度)の偉そうさ感が緩和されている。

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以上、7つの状態の変化から得られる一つの帰結は、モデルの如何に関わらず、配色と位置取りによる印象操作の可能性である。外見の印象操作とは、すなわち着飾ることと同位であり、仮想背景とは着飾ることの拡張であると言える。

ちなみに、《基底状態:O》は、背景との距離の確保、濃い茶色を基調とする背景の本棚、左手後方のウサギとランプ、右手後方の楕円形の鏡、洗濯物の事前除去など、背景効果への演出が零の状態ではなく、また、モデルの肌質についても、顔上面からの光の照射に加え、Snap Cameraをカメラ入力前段に利用することで、やや化粧された状態にあることをここに付記しておく。

【補遺:Zoomにおける仮想背景の設定手順と課題】

Zoomセミナー_1期_Ⅲ_01

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