
めく
三宅さんが自慢げに言った。「”めく”って見出しとしてちゃんと辞書に載ってんだぜ。辞書って愉快だなぁ」
その頃、三宅さんは辞書ばかり読んでいた。
「めく?」私は馬鹿な返事で答えた。
ちょっと悔しくて、新解さんに聞いてみた。うん、確かに載ってる・・・。
めく(接尾・五型)・・・の要素を持っているように見える。・・・らしく見える。「春--・皮肉めいた言い方」
皮肉めいた言い方が何にかかっているのか意味不明だ。それに五型ってなんだ?五段活用か?細則を読むがはっきりしない。
春めかない、春めきます、春めくとき、春めく、春めけば、春めこう。
めこう"ってのもなんか今風で妙だが、勝手に五段活用と思うことにした。
細則をしげしげと眺めていると、この辞書にはアクセント表記があることがわかった。
この辞書では、「鼻」の場合、山が無いのだから、それを「無」を意味する0で表示し、「花」の場合は、山はあるが、その場所が最初から2拍目なので、これを2で表示する。
ふ~ん。どれどれ。
びじん(1)【美人】
なるほどねぇ。びじん(0)じゃぁないわけだ。
ちなみに、この辞書は東京のアクセントを表示しているという。ちなみにこの辞書によると、ハンガリー語はいつも第一音節にアクセントがあり、トルコ語はいつも最終音節にアクセントがあるのだそうだ。
”めく”を辞書で引くと、めく周辺の死語も眼に入ってくる。
めくぎ(1)【目釘】刀身が柄から抜けないようにさす釘。「-を湿す。[=目釘が飛び散らないように、つばなどでぬらして、抜刀・戦闘の用意をする]
時代劇の「ぺっぺっ」ってもしかしたらそういう意味か?
めくじら(2)[くじら]は[すまくじら]の略、すみっこの意]
めくばせ(2)【目配せ】目だけを動かして、気持ちを表したり何かを知らせたりすること。
めくばり(2)【目配(り)】[注意して]あちこちに目をつけること。
うん? すまくじら? 目配りって、あちこちに目をつけるって意味も?
めくるめく(4):(4)【目眩く】[雅]目がくらむ。目くらむ。
う~ん、目がくらむかぁ。旺文社も『目がまわる。目がくらむ。目まいがする。「-ばかりのきらびやかさ」』だし、「目がまわるばかりのきらびやかさ」ねぇ。。。
確かに、辞書を引くのは愉しかった。その三宅さんも、もういない。それがちょっと寂しい。