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読書会で世界史を振り返る

読書会の課題本で選ばれた山﨑圭一氏の『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書【経済編】』はとても満足感のある本でした。

「若いときにもう少しちゃんと勉強しておけばよかったなぁ」と考える人は少なくないと思います。少なくとも私はそう思っています。

どの科目でそう思うかは人によっていろいろでしょう。英語という人もいるでしょうし、数学とか地学とか理系の科目をいう人もいるでしょう。私はといえば、まぁ、いろいろなのですが、世界史はその中の最右翼です。

でも、いざ勉強しようと思っても、なかなか踏ん切りがつかない。何を読んだらよいのかもわからない。ファスト教養なんていう以前にそもそも何がわからないのかわからない。

そう、高校生の頃は興味がなかったのです。時既に遅し。光陰矢のごとくです。でも、そんな言葉が残っているということは、誰も若い頃には気づけないのです。その大切さに。

私の場合、高校は私立だったので変わった先生が多かったですし、世界史とは別に東洋史という授業がありました。東洋史は私にとってSFを読む時間でした。だって最初のうち、ずっとた中国最古の王朝、夏の話なんですもの。「高校生男子に夏の話に興味を持て!」なんて、それはあなた、趣味が過ぎます。

といっても世界史の先生もギリシャ・ローマが専門だったので、学年の前期・後期のうち、前期でローマが終わりませんでした。結果、最終的には私の世界史はフランス革命前夜で終わっています。

他責。なんて素敵な響きの言葉でしょう。

でも、私にだって後悔はあるのです。子どもは大学を受験するときに「私大・文系・世界史」を選択したことを自慢します。「オタッキーで難しいんだぜっ」というポジションを取ってくるのです。

ドロシーとテレビのニュースをみながら「シーラ派って何だろうね」と言っていると「は~」と深いため息をついてきます。実に生意気です。ヨーロッパの誰も知らないものすごくちっちゃなすぐに滅びた国の名前を言われても知らないっちゅーの。

そんな私に、読書会の課題本は救いの手を差し伸べてくれました。前回の読書会では通史の青い本、今回の読書会ではが経済編の黄色い本が課題本でした。いずれも私には素晴らしい本でした。

青い本では、もうこれでもか!という感じで、国は起こり滅びていきます。そして、すべては自分たちの利益が最優先。そりゃそうです。世界史とは他者を滅ぼしていく記録なのですから。

そんなことも気づいていなかったなんて私はなんてナイーブな人間だったのでしょう。高校生の頃にもっとしっかり世界史を学んでいたら、私はもっと立派な悪人になれたことでしょう。前回の読書会にこの青い本を読んで、通史って本当に面白いなと思いました。

今回の読書会の課題本の黄色い本もとても面白い本でした。もうすべてはお金です。お金、お金、お金。お金と利益がすべてです。

ああ、高校生の頃にもっとしっかり世界史を学んでいたら、私はもっとお金を大事に考え、利益とは他者から奪うものだということを自覚できたことでしょう。

それは少しも皮肉ではありません。歴史を学ぶ価値というのは、そういうことに自覚的に生きるということだったのです。私はあまりに無自覚でした。高校生の頃に読んだE. H. カーが『歴史とは何か』で語っていたことを、私は本当に表面的にしか理解していなかったのです。

それにしても、これからはどんな時代になっていくのでしょう。そんなことも考えました。

今回の黄色い本では、時代を輪切りにする形で10章まであるのですが、私が子ども時代から若かった時期 ーー 私はベルリンの壁が作られた年に生まれ、ベルリンの壁が壊された頃に結婚したのですがーー は既に過去としての第9章です。最終章の第10章は、1990年以降なのです。

そりゃそうです。今年の新卒社員は世界貿易センターの事件のときには生まれていないのですから。

その意味では、2020年の今、もしかすると既に第11章に入っているのかもしれません。

細かい知識レベルのことでは、租庸調は租調庸だとか、スエズ運河はイギリスが作ったのではなくエジプトが作ったものをイギリスが奪ったとか、大西洋の三角貿易は武器の輸出が含まれていたとか、私にとっては、微妙にずれて覚えていたことが修正された点も、なんか高校時代のリベンジが果たされたようで、私には嬉しいことでした。

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