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『硝子の塔の殺人』がクソだったんでキレ散らかす怪文書。

私は心の底からブチ切れている。なんで2000円も払って3時間もかけて読んでこんな思いをしなければならないんだ。許さないぞ。

本当にさぁ。コロナコロナと情弱相手にネットバトルして、気にくわない雑誌記事見つけるたびに文芸の担当編集者呼びつけていじめて憂さ晴らしして遊んでる時間あったら、ご自慢の本格ミステリ小説とやらをもっとちゃんとブラッシュアップして読むに堪えるものにする努力をしてくれませんかね???????
こんなもんしか書けない作家に「版権全部引き上げるぞ!」って脅されても滑稽でしかないでしょ。

読みどころは文末についてる、『日華ミステリーアンソロジー』に続く島田荘司御大の怪文書だけ。マジで今の日本で唯一じゃない?大東亜共栄圏の世界観で生きてる小説家って。
あとはバカみたいに界隈の「お願いしたら断らなさそうな人」上から順に呼んで書かせた「よく読むと話として面白かったと言ってる人は皆無」な推薦文の山の虚無さね。
有栖川有栖・大山誠一郎・法月綸太郎・我孫子武丸・竹本健治・芦沢央ってメンツが裏に回されてるんだよ?普通に無礼だからね。あと、もしかして新本格とは距離のある竹本さんと芦沢さんが入ってるのって、麻耶さん歌野さんあたりに断られたせい?そりゃ断ってもしょうがない内容の本だけども。
若手編集者の人はこの本の帯とチラシ見ておくといいよ。それがミステリ界隈周辺の「帯をお願いしたら嫌な顔せずやってくれる優しい人」の一覧だから。

ネタバレはしますよ。なので、もしこの本をこれから楽しみに読もうって人はこのnoteは読まないでください。

まず、このクライマックスの仕掛け?どんでん返し?ここが一番の読みどころなんだろうけどさ。

(実際、「名探偵であろうとする人間の物語」としては面白いと思うんですよ。「名探偵のレーゾンデートル」みたいなテーマ自体が、正直手垢つきすぎて今更感あるよねってのは言いっこなしで)

正直、この書き方だとシンプルに「逃げ」だな、って思っちゃうんだよね。
今まで読まされてきたバカみたいなダイイングメッセージとか、クソみたいな物理トリックとか、それらは全部「なんにも分かってない作家志望のバカが考えたものなので、レベルが低いのはあえてです」ってカッコにくくってほっかむりしようって言うんでしょ?
それは伏線とは言わないんだよ。だって結末がどうなろうが、「読者がそれまで400ページにわたって超つまんない小説を読まされ続けてきた」事実は揺るがないんだもん。
普通さ、「真相は別にありました」タイプのひっくり返しって、前段を単品で読んでも面白いからこそ「えー!こっからさらにひっくり返るの!?」って驚くわけじゃん。
そのために作家はダミーの解決であっても(いやだからこそ)考え抜くわけじゃん。倉知さんの『日曜の夜は出たくない』とか、高校生の時に読んで「こんな面白い本がこの世にあるのか」と泣いたよ私は。

(同じ倉知さんで言えば、正直こういう設定でこういう趣向の話だと『星降り山荘の殺人』と絶対比較されるでしょ。結構なハードルだと思うぜ。……あれ、もしかして日常の謎がどうのこうの喋ってたシーンで、円紫さんから一気にビブリアタレーランまで話を飛ばして猫丸先輩を無視してたのって、倉知さんの話をしたくなかったから???)

「バカが書いたものだからバカで良いんです」ってのは手抜きだし、「自分がたいしたネタを思いつけなかったこと」を他人に馬鹿にされるのが嫌だから「逃げ」を打ったんじゃないの?って思っちゃうよ。どんだけ人から叩かれるのが嫌なのよ。そんな半端な気持ちで小説家やってんなよ恥ずかしい。なんで「作者自身が『クソみたいなミステリ』って自称してて、謙遜とかじゃなく本当にクソみたいなミステリ」に400ページも付き合わなきゃなんないんだよ。

一応、対案じゃないけど考えてみたのよ。作中で言及されてたドローンが云々みたいなネタって、むしろこういう一見、「クラシカルにやってまっせ」タイプの物語にろくに伏線もなく唐突に出てきたら、逆にギャップで笑っちゃって楽しいと思うのね。
だから、「神津島先生は『オリジナリティあるトリック!新奇性!』が第一だと思ってるタイプで、だからドローンとかどんどんトリックに持ち込むんだけど、月夜さんは『名探偵に相応しい古き良き本格ミステリっぽい舞台にそういう世界観壊すようなネタはやめてよ』と思うタイプだから、そこで作者VS名探偵の対立が生まれた」って形にすれば、神津島先生の考えた部分を「つまんないネタ」って卑下することなく、「ふたりのミステリファンの相容れないミステリ観の違い」ってプロットは維持できると思うんだよね。
……まあ、このくらいのことは実業之日本社の担当編集者さんだってプロなんだから初読して気づいてると思うんだけど、講談社や新潮なんかに対する大暴れっぷりを見るに、触らぬ神に……でなんにも言えなかったんだろうな。
そういう「どうせなんか指摘しても怒るし直してくんないから良いや」ってみんなから思われてる作家さん、何人かいるよね界隈に。哀しいことですよ。

まあ、そもそもミステリ=トリック、って思ってる時点で作者の浅はかさに眩暈するけどね。

友達とも話したんだけど、やっぱり月夜さん周りのネタは楽しいと思うんです。
「難事件をいくつも解決してきたと自負してるけど、実は解けなさそうな事件はパスしてる自称名探偵」っていうおもしろ設定があんな風にひっくり返されるのはめっちゃ上手いと思ったし、モリアーティのくだりとか「自分らしく」ってシークエンスとか、そのあたりのダブルミーニングどんでん返しの手つきはやっぱ上手いですよ。

だから、「そんなに自分を卑下しないで!ツイッターで反ワクチン界隈と喧嘩してる時くらい好戦的でいてよ!!」ってことを言いたいのかな私は作者さんに。

……まあそうはいっても、その月夜さんの行動原理すら、「凡庸な物語で本格ミステリと綾辻行人を愚弄したのが許せない」という動機と、「彼女が犯人役になってしまえば、結局は『探偵役が真犯人』というそれ自体凡庸な物語になってしまう」事実の間で矛盾してるんですがね。

あと、作者の「本格ミステリ」ってものへのコンプレックス(というか、売れてはいても「本格ミステリ」なるもののメインストリームに自分が乗れてない劣等感と、本格ミステリベスト10とか本格ミステリ大賞みたいなものに象徴される「ミステリ好きな人にちゃんと褒めてもらってる感」への渇望、かな?)が、神津島先生と月夜さんにパロディ化してひっかぶせてる部分をはるかに超えて漏れ出ちゃってるのが本当に気恥ずかしくて目が滑って滑ってしょうがなかったよ。
だって、ミステリの話になるとキャラの区別つかないんだもん。みんな結局「作者が頑張って調べたりウィキから拾ってきた情報」を喋るだけの木偶人形になっちゃうから。作中で本格ミステリ作家クラブが何か、「本格ミステリの世界の中核である権威ある団体」みたいに持ち上げられまくってるのもよく分からんかったよね。なんだと思ってるんだよ。
このあたり、法月さんの推薦文は見事だと思ったよ。それを「ピュアな本格愛を語る作者の青さに目を奪われる」と端的に評す。くー!やっぱりのりりんは信用できるね!

そうなんだよね。そもそもが「頑張って調べた感」出ちゃってるのがね。作中でダラダラダラダラダラ語られる蘊蓄に、「本当にミステリ好きな人」(そんな言い方もないけどさ)の熱量が一切感じられないのよね。本来なら経歴として言えば作者とニアリーイコールな存在のはずの一条先生のミステリ遍歴を語る11ページのくだりのいきなりの薄っぺらさね。今時島田史観をそのままコピペして語らせるかね。ハッキリ言うけど作者さん、本当は別に子供の頃ミステリとか読んでなかったでしょ?
なんかね、オリエント急行がどうだとかレーン最後の事件がどうだとか言う、誰でも知ってるようなめちゃくちゃ初歩的な話を嬉々としてコピペしてるのを見ると、「ああ、がんばって調べたから誉めて欲しいんだね~」って、小学生の自由研究を見てる気分になって微笑ましいよいっそ。

「ミステリマニアがコレクションを飾るためにつくった家」がガラス張りで直射日光当たり放題ってのはどうなんだいってのはそもそも論なんだけどさ。だって神津島先生、その中でも最上階の全面ガラスの展望室にコレクションルーム作ってんだよ?一瞬でぜーんぶ真っ白になっちゃうぜ?その無配慮も「神津島先生が馬鹿なんですよ」って言って逃げる気なんだろうけど、作中の人間が誰一人「なんだよこのクソコレクションルームは」って言ってないんだからこれは「作者がその愚かさに気づいてない」ってことでしょう?見栄えばっかり気にして中身すっからかんってのが、この本そのものなのよ。
誰が呼んだか「TSUTAYA図書館の殺人」ってね。

何よりたまげるのが、「『モルグ街の殺人』より前に謎解きミステリがあることが発見されたらミステリ史が塗り替わる」という謎の認識が共有されてるっぽいところ。
な ん そ れ !?
そりゃ「なんそれ」も出ますよ。『モルグ街』が最初のミステリだって言われるのは、デュパンのフォロワーとしてホームズが出てホームズのライバルとして様々な探偵が生み出されて……って系譜の中でそう解されるわけでしょ?仮に『モルグ街』より前の作品があったとして、それが現在知られてないってことはバズッてないし後続も生んでないってことなんだからミステリ史なんてひっくり返らんでしょ。
いや、っていうか普通に『モルグ街』より前にちゃんと謎解きして探偵役の出てくる話っていくらでもあるから!ディケンズとか誰もいなかった世界なのかよ。聖書の時代から謀殺とその謎解きなんていくらでもやってるだろうよ。どんだけもの知らないんだよ。

(この件については友達が良いことを言ってた。「仮に、『モルグ街』『マリー・ロジェ』『盗まれた手紙』『黒猫』がぜんぶ同時代の無名作家の作品をポーが盗んでそのまま発表してたと明らかになったら、ドイルとかが影響を受けた相手は本当はその人、って形で歴史は書き換わるかもしれない」っていう。それならまだ作中でみんなのテンションが上がる理由もわかる。それにしても「根底から」ではなく「前史部分がちょっと書き換えられる」だけだけど)

結局、その解釈はダミーだってことになるんだけどさ、解決編まで登場人物全員がそれに納得して信じてるんだから「設定としておかしい」ことには変わらないのよ。

あとは一条先生周りの話かな、おかしいと思ったのは。そもそも最初の最初の一点で倒叙ミステリとしては破綻してるんだよね。「犯人の心理」をまじめに考えてないんだよこの作者は。ツイッターでの言動みてりゃわかるよ。自分は常に正しい側にいると思ってるから、探偵ワトソン以外の立場で物語世界を見直したことがないんでしょきっと。
一条先生には、「硝子館にあるテトロドトキシン粉末をわざわざ凶器に使う」理由もメリットもないんだよ。
現場にあったものを凶器に使うのって、咄嗟の犯行だったり、あるいは「凶器の入手経路から犯人を辿れない」ってメリットがあるときじゃない。あるいは見立てとかね。
医者が「病死に見せかけて毒殺しよう」と思って計画殺人で殺すなら、選択肢なんて山ほどあるじゃん。経口摂取でも静脈注射でも、人体の中にある成分で過剰投与で死ぬ物質とかいっぱいあるわけでしょ。有名なカリウムとかさ。
そういう詰めが甘いんだよ。まじめに犯人の立場になって考えてないんだよ物語を。じゃあ倒叙なんて一生書かないでもらえる?

とりあえず言いたいことは言ったかな。なんかスッキリしたから許してやるか。
そうだ最後に一個だけ!綾辻さんの帯の「ともあれ皆様、怪しい『館』にはご用心!」って文章が、硝子館自体のことだけじゃなく「11冊目の『館』シリーズ」のギミックともダブルミーニングになってるの、この本のどの仕掛けより綺麗で上手くない????
みんな、こんな本間違っても定価で買うなよ!


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