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12月23日 日記「i」

 土曜日。朝からバイトのため八時に起きる。

 バイト納め。コンビニから駅からユーチューブからなにからなにまでクリスマスムード。そんな嫌いではない。バイトの空き時間中、西加奈子の「i」を読了。西加奈子はラジオの影響で本を読む前からめっちゃ好きで、ほんで彼女が書くものもとても好きだ。そういえば、好きな小説家と言えば、この頃は金原ひとみで、川上未映子で、西加奈子で、女性作家が多く、本当にものすごく好きで、心を抉られるけれど、これは正に自分のモノだ!と言っていいのかという葛藤がある。そこには勿論セクシャリティのことがあって、自意識の問題と言えば、簡単に片付くには片付くが、そこそこ根本的な問題がそこに垣間見できるとも言えんのではないかと思ったり、する。ただ、まず大前提、彼女たちは物語を女性だけのものにしているかと言えば、当然ノーであり、そんなスケールで描いていないのはもうそりゃそりゃそーりゃなのだけど、だとしてその上で、例えばこれから俺が出産の苦しみを、ワンオペ育児を、中絶を経験するのかと言えば多分現状ノーであり、その実際的な感情を背負わされてきた人があまりに多くいるなかで、安易に心を打たれたなんて言っていいのかな、なんて、思いは正直めちゃくちゃある。自分はそれを言及する権利が、感情移入する権利が、果たしてあるの??そして、とってもとっても深く、重い、それらのことを真っ向から正対してきたわけでもないだろうに、というかむしろ君加害者だったこともあるじゃない、それが今更手の平ひっくり返して、これはすごい大事な、考えなくちゃいけないことだな、なんてあまりに都合がいいじゃない卑怯じゃないなんてことは当然思うのである。

「i」ではそんなようなことがテーマとして書かれていると思う。シリアで生まれ、裕福な家庭にもらわれた養子であるアイは、恵まれている自分を呪い、戦争での死者を、不当な貧しさによる死者を、ノートに逐一書き連ね、ずっと生き残ってしまったものとして、罪の意識を持ちながら、そして結局はいつだって自分の幸せを優先してしまうその罪の意識の弱さに悩まされながら、生きていく。

 留学中、自分は留学ができるほど恵まれているという揺るがない事実の前で、それでも今自分が抱えている貧しい感情、豊かさを必要とする思いはどうしようもなく正直な思いであること、そのハザマで苦しかったことを思い出したりなどした。

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