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初めてZINEを作った。

初のZINEを作り終え、その出来上がりを見た時僕は

これが失敗したら死んでやる!と誓って大失敗したい。

という自分の文章の一節に救われ、一方でそれを恨んだ。

やるせない気持ちのまま、気づけばまた映画を見に来ていた。
駅の改札を通り、長い地下を抜け、初めて日本橋に降り立った時、そこは外国みたいだった。

映画の時間までまだ余裕があったので、異国情緒あふれるこの街を少し探検することにした。建物はどれも西洋風で、その雰囲気に高校の時修学旅行で行ったシドニーの街並みを重ねながら、きれいなスーツを決め込んだ大人たちとすれ違った。彼らは皆、落ち着いた上品な香りを落としながら、いそいそと歩いていく。
日本橋という街全体が静かに慌ただしかった。

自分だけが違う時間の中にいる感覚に陥る。工藤裕次郎の声が目まぐるしい時間の流れから遠ざけてくれるからだ。上司の不満や出世欲が渦巻く中で僕は能天気にも「羊羹のブルース」を聴いた。

不思議と堂々と大きく腕を振れた。
白の軍パンに友達の顔がプリントされた白T、白のグルカサンダルという全身白のうどんスタイルと赤く塗った爪。この日の僕の恰好をこの街は許してくれそうにないけれど、それでも大股で歩けた。
むしろ、このtシャツを、爪を僕は自慢するように通りを進んでいく。
そう意気込んでいたわけではないが、その日は誰にも追い越されることはなかった。

「アメリカンユートピア」を見て、再び映画の力にねじ伏せられた僕は、やっと印刷のずれたZINEの表紙と向き合えるようになった。

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