落ちたら死亡？マンションでの決死の犯行理由とは？（邸宅侵入）　傍聴小景#40

裁判を題材にnoteだ、YouTubeだ、Twitterだやってる男に言われたくないかもしれませんが、裁判に対しては誠実な態度でいたいんです（真顔）。
なので、裁判や事件の本質とは異なると思われる点では、関係者を落とさないようにしたいと思っているんです。…うーん、今書いてて、守れてないなとも思うのですが、あくまで基本的な思いとしてね。

特に、下手に落とすために触れないようにしてるのが、見た目。
例えば過去には、TKOの木〇さんに似ている人もいたり、あれ？指は数本いずこへ？という方などもいたにはいたのですが、それをそのままいじるということはしたくないんですよね。

でも、今回はごめんなさい、その掟を破ります。
被告人のTシャツの背中に大きく「CHOPSTICKS」（箸）って書いてあったら、「え、どこでそれ売ってるの？」って思うの悪くないよね？ググったら似ているのや、むしろオシャレに箸のイラストを描いているのはあったんだけど、それらとは違う絶妙な外し加減に心をすっかり奪われてしまいました。この人は背中で俺に何を訴えかけているのだろうって。
というわけで、今回は見た目からもインパクトの強く、そしてその後の裁判のインパクトもあった被告人の話です。

はじめに

罪名　：邸宅侵入
被告人：50代の男性
傍聴席：平均5人（3回？）

住居侵入という言葉は知ってるけど、今回の邸宅侵入という罪名は知らないという方も多いのではないでしょうか。
簡単にまとめると以下の感じかと思います。正当な理由がないのに以下の行為をすることです。

住居侵入…一軒家や集合住宅の個人宅などの家に入る
邸宅侵入…空き家や集合住宅スペースそのものに入る
建造物侵入…上記2つ以外の建物に入る

そして、これで気付くかもしれませんが、これ単独で犯罪行為として訴えられるってかなり珍しいことなんです。
人の家に入って物を盗もうとすれば、住居侵入と窃盗ですし、女性にわいせつ行為をする待ち伏せをする目的で待ち伏せし行動すれば邸宅侵入と強制わいせつだったりすることを考えたら、今回のような邸宅侵入単独の罪状というのは大変珍しく、何をしたのか想像もできないのです。

事件の概要　－謎が謎を呼ぶとはこのこと－

被告人は、大阪府営のマンションの4階の一室にベランダから入り、窓枠を外して侵入した。

ダメだ、聞いてもわからない。
ただわかるのは、この行為が住居侵入でなく、邸宅侵入で問われているということは、この部屋が空き家であったということ。なぜこのチョップスティックは4階の空き家に侵入する必要があったのか、行為そのものだけでは見当もつきません。ってか、普通に危ない。

検察官が証拠として提出した資料や供述など

・被告人は高校卒業後、父が経営する弁当屋などで働いていた
・現在は障害年金などで暮らしている
・前科2犯、前歴4件（内容不明）

・今回の現場となったマンションの一室は、
　10年ほど被告人が住んでいた部屋だが、
　家賃滞納により強制退去となり、
　荷物はまだ部屋に残されたままだった
・一度、被告人から荷物を持ち出したいと申し出があり
　管理者立会いの下、荷物の受け取りが行われ、
　そのままカギがかけられた
・その後、マンションの駐車場の車内で生活をしていた
・玄関はカギだけでなく、南京錠などもかかっているので、
　隣人に頼んでベランダに入らせてもらい、
　かつての自分の部屋に侵入して風呂に入るなどした
・窓が開いていることに気付いた管理人が通報して発覚した

なるほどなぁ、これで多くのことに合点がいきました（チョップスティックは除く）。なぜ空き家に忍び込んだのか、そしてなぜ4階だったのかの理由がわかりましたね。
わかったけど、下手したら落ちて死ぬ高さなのにすることか？とは思いますが。

弁護人は、「法律の錯誤」を主張。
この法律の錯誤というのは、違法性の認識と言い換えたらいいんでしょうか（詳しい人補足して(´;ω;`)）。やったことは間違いないけど、それが違法行為とは思っていなかったと。追い出されたけど、まだ荷物は中にあったし、悪いこととは思わなかったという主張。
そんなの通じないよ、と思われるでしょうが、そこに障害年金の情報が絡んで来るんです。障害の詳細は被告人質問で聞きますが、無罪を主張するわけじゃないけど、被告人には精神障害の影響もあり違法性の認識がなかったので、そこはできるだけ考慮してくださいという主張らしい。
これによって、刑がどれくらいからどれくらいになるものかわからないけど、弁護人の立場としては当然主張したいポイントでしょうね。

もちろんそのあたりも、争点になってくるんですが、ここからさらにいろんな展開があるのがこの裁判の印象深かったところなんです。