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薬物更生施設内で薬物使用。再犯防止に必要なことは何か?  #132(覚醒剤取締法違反)

このようなニュースを見つけました。

薬物依存からの更生を支援する京都府のダルクに入所していた男性が、施設内などで覚醒剤を使用しており逮捕されたという事案です。

裁判傍聴をしていて、最も頭を悩ませる問題と言ってもいいかもしれません。「更生、矯正とは言うけど、実際問題どうやってするの?」という疑問。
僕自身は、福祉の可能性を強く信じるよりかは、やや矯正施設よりの考えではありますが、まぁどちらにせよ再犯は起きて欲しくないわけです。いつか矯正施設の人にもインタビューしたいな...。

雑で乱暴な言い方をしますが、「再犯はありません!」と仰る弁護人に対しては、それで再犯したらどう責任とんねんと感じますし、「徹底した矯正教育を!」と仰る検察官に対しては、その効果っていかほどなのよ?と両方に思いを抱かざるを得ない、被告人の更生、再犯防止問題。
だからこそ、薬物依存からの脱却という点で非常に名高い施設での事件にショックを受けた訳です。

しかしながら、福祉に絡む裁判ではいつも新たな学びがあるのも事実。なんとか傍聴したいなと思っていたところ、この裁判の期日の情報を入手できたので、京都地裁まで出向いたのであります。


京都地裁について

こちらが京都地裁
普段、大阪地裁に行っているなら京都地裁も近いんじゃないの?と思われるかもしれませんが、それは半分違ってて。

僕がJR沿線に住んでいるからというのもあるのかと思いますが、大阪の西へ一つ行った兵庫県の神戸地裁に行こうとすると、最寄りがJR神戸駅なので、大した乗り換えもなく非常に楽に行けます。

しかし、京都地裁の最寄り駅はJR京都駅ではありません。そこから人が多い地下鉄への乗り換えが発生し地味に面倒なのです。むしろ、京都の先にある滋賀県の大津地裁へ向かうほうが、京都から大津は10分程度ですし、大津地裁は大津駅すぐなので、大津のほうが楽とさえ思います。
結構な遠出をするくせに、京都の乗り換え1回くらいブーブー言っているのもおかしな話ではあるのですが、そんな訳で実は京都地裁ってのはあんま行ったことがないのです。


はじめに ~怪しい傍聴席と懐かしの裁判官~

罪名 :覚醒剤取締法違反
被告人:20代の男性
傍聴席:13人(全1回)

ニュースでは逮捕者は3人とありましたが、実際に関わっていたのは4人いた模様。傍聴できたのは今回紹介する1人だけでした。他の方がどんな判決となり、どんな裁判が行われたかというのは知りません。

被告人は小柄で、髪の毛がチリチリの男性。なんとなく素直そうな印象。
傍聴席はほぼ満席。スマホを怪しげにいじっている人もいたり、被告人に会釈するような人もいたりと独特な雰囲気の中、始まりました。

余談なのですが、裁判官は京都地裁では初めて見かけた方なのですが、過去に2ヶ所別の裁判所でお見かけしたことのある裁判官
裁判官というのは全国転勤なので、いろんな地で思わず遭遇ということがあって、マニアとしてはニンマリということがたまにあるのです。あちらにとっては、ゾッとする話なのかもしれませんが。


事件の概要(起訴状の要約)

被告人は入所する施設内において、覚醒剤を注射して使用した

違法薬物の起訴状は、輸送絡みでなければだいたいこの程度の文面なので、メモする側としてはありがたくはあります。しかし報道の通り、施設内での利用ということで、驚きを隠しきれない起訴状ではありました。

被告人、弁護人はこの内容を認めました。


採用された証拠類 ~社会からの孤立を防ぐ支援とは~

検察官証拠
被告人は高校中退後に土木作業員などを経て、犯行時は無職だった。ダルク内に入居していた。
前科はないが、18歳のころに知人から覚醒剤を譲ってもらった経験などあり。少年院と更生保護施設に入所しており、出所後からダルクに入所した。

ダルク入所中は金銭管理をされていたものの、後述の理由により現金が手元に入った。他の入所者に覚醒剤を買ってきて欲しいと頼まれ、無断外泊をして、自身も自室で利用した。

どうしても、検察官の立証だけとなると、更生すべき人物なのに、それでもやっぱり使ってしまった事件、という印象となってしまいます。まぁ端的に言ってしまえばそういうことなのかもしれませんが、もちろんそこには様々な背景があるわけで。

薬物依存の脱却を目指すといっても、ベッドにガチガチに拘束されるわけでもなく(子どものときはそういう施設だと思ってた)、一定の社会との接点や共同生活を育みながら更生を目指していくわけです。
使いたいという気持ちがいきなりゼロになることは少ないでしょう。もしくは悪いお友だちとかが誘ってくるなどもあるでしょう。そんな中、被告人はどういう心情、経緯の中、再度手を出してしまったのかというのは、やはり客観的事実だけでは理解しきれないし、本人の更生のために周囲が知ることは大切なことだと思うのです。

今回の事件とは別の話なのですが、福祉に携わる方とある方と話していた時の話。
仮に再犯してしまったとしても、前は出所後3ヶ月だったのが、今回は1年我慢できたじゃん、と思うんです」と、その人は言っていました。

個人的には「ん?」という思いが今でも消えてはいないのですが、そういう考えでのサポートができる人がいないと、その対象の方は社会の理解を得られずに孤立してしまうのだろうなと思ったりもします。

僕個人としては、いろいろなところに出向いて勉強して、かつ自分の考えをはっきり持ちたいとは考えていますが、できる限り話は受け入れつつ双方の意見をフラットに聞けて発信ができる人物になりたいと思っています。


証人尋問 ~施設では気付かなかったのか~

証人は当時受け入れをしていたダルクの代表者さんでした。証人として、施設の方が立つことは珍しくなくなってきましたが、だいたいが新たに受け入れる立場の方が多く、それまでの利用施設の方というのは珍しく感じました。

証人のダルクでの支援活動は10年以上。
いろんな経験をされてきたことが想像に難くないですが、最初から驚きの情報が。

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