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裁判の判決ばっか集めちゃいました(7月版) 傍聴小景 #82

刑事裁判の進行には大きく分けて以下の3種類あります。

新件→一回目の裁判。事件内容などが分かる。
審理→前の回で終わらなかった裁判の続きの実施。
判決→その名の通り、判決を宣告する回。

つまりは、裁判の途中の様子は全然わからないけど、「判決」の部分だけ傍聴するのことができるのです。多くの裁判が判決だけなら5分~10分程度で終了します。
そこだけ見ても…とお思いかもしれませんが、どうしてその判決を下すにいたったかの理由を説明するに際し、事件の内容はおおまかに説明するので(裁判官によっては割愛しますが)、短期間で事件内容に多く触れるという意味では結構勉強になるのです。

という訳で、「なんで?」という疑問は残るものもありますが、判決のみ裁判特集です。


No.36 ニュースを模倣する男

罪名 :強制わいせつ
被告人:30代の男性

被告人は私服警備員を装い、多目的トイレを不正利用している人物を狙い、

「さっき見てたけど、男女で入っていたよね。芸能人が多目的トイレに入ったニュースって知ってる?それ以降からチェックしてんねん」

などと言い、被害者(当時18歳)に対し、学生証を撮影するなどして学校に通報すると思わせ、無理やり接吻したり、スカートの中に手を入れて陰部などを触った疑い。

多目的トイレのニュースと言えば、彼しか思い浮かびません。
あの件が報じられたのが2020年、この事件は2022年のこと。「それ以降からチェックしてんねん」と言いますが、そんだけの期間チェックしているはずもなかろうてと思ってしまいますが、、、いきなり言われたらそりゃパニックにもなりますわな。

判決
主文 懲役2年6月、執行猶予4年

被害者とは50万円で示談が成立している点と、奥さんの監督に期待できるという点で執行猶予がつきました。奥さんいるんすね。
「お~、ちょっと出かけてくるわ」
などと言って、私服警備員を名乗り、18歳にわいせつ行為をする旦那ということにかなりの同情を禁じ得ないですが、この人自体が新たに模倣されるようなニュースの事件とならないようしっかり監督していただきたいと思います。


No.37 日給10万の男

罪名 :消費税法違反、地方税法違反
被告人: 50代の男性

別の会社と共謀して、2年あまりで約4億円にものぼる脱税に関与したという、会社代表を務める被告人。その共謀相手とは対等な関係性であったことが認められ、自身の会社にも利得分を入れていました。

こういった税に関する裁判は本当に難しい。証拠の束も膨大になるし、裁判官もどこまでしっかり読み込んでいるのかは気になるところ。
傍聴人視点でいうならば、こういった税関係の裁判は意味がわからないので、特段勉強しようと思っている人以外はやめたほうがいいと思いますね。

判決
主文 懲役3年、罰金2,500万円(払えない場合は1日を10万円に換算し労役場留置)

事件が発覚し、脱税分、重加算分、延滞分のすべての不正額を納付したようで、弁護人からは執行猶予を求めたようですが、裁判官は「執行猶予にするような軽い内容ではない」とぴしゃりと言われてしまいました。
どうなんでしょう、被告人としては「なんだよ払い損じゃねぇか」とか思ったりするもんなんですかね。

それにしても、この罰金2500万円ってのはどこから出るんでしょうか。悪いことをして、その加算分まで返してさらにとなると、ちょっとかわいそう...とも思うんですが、偉い人のお金の回し方はなかなかペーペーには理解できないところ。なんとか工面するんでしょう。
僕も真っ当な働き方で、これくらいのお金を動かしたいものです...。


No.38 新記録樹立の男

罪名 :道路交通法違反
被告人: 30代の男性

僕記録の更新です。
被告人は最高速度が60km/hに設定されていた大阪府道を190km/hで走行した疑いがかけられています。90じゃなくて、190です。しかも60km/hの指定の場所でって...

今まで僕が裁判で傍聴してきた中で最高速度で170km/hだったんですよね。それをゆうに超える違反速度。次に超えるとしたら200km/hとなりそうですが、果たしてそんな人は現れるのでしょうか。

判決
主文 懲役4月、執行猶予3年

弁護人は速度超過自体は争わないものの、防犯カメラだか、速度計だかのミスもありえるからそこまで速度超過はしていないとして罰金を求めていたらしいんですが、裁判官としては多少の誤差は仮にあっても100km/hはゆうに超えているんだから罰金にすべきでないと当たり前のことを言ってました。

それにしても190km/h走行って、個人的には刃物をぶん回すくらい危ない行為だと思うんですけど、懲役4月かぁ。道交法違反って、全体的に刑期が軽い印象が拭えないんですよねぇ...。


No.39  覚悟させる男

罪名 :脅迫
被告人:50代の男性

自身の主治医を脅そうと考え、病院のポストに「殺しますから覚悟しておいてください」などと書いた紙面を入れた疑い。
今回の理由ははっきりしなかったんですけど、病院の先生への逆恨みみたいな裁判ってたまにあるんです。
薬をもっと出してほしいとか、免許の更新をするために問題ないという診断書を出せとか。それに抗ったらこういう被害にあったりもするので、まっとうに仕事するというのもなかなかに大変です。

判決
主文 罰金10万円 未決勾留日数を1日5000円と換算して算入

この判決の日までの勾留期間を1日あたり5,000円と換算して、MAX罰金刑を払ったと同様にしますよという判決。かなり軽微な事件などで適用されます。

お医者さんを脅迫って、結構偏ったお考えの方が多いので、次やらないか本当に心配です。
医療であったり、裁判のような法律業界も同様ですが、専門知識のプロフェッショナルの相手って、あまり知識がなく、かつ緊急時の相談が多くなるため、「どうして助けてくれないの?こんなに困っているのに」となりがち。

だからそれを仕事にするには、その知識だけでなく、対人スキルも必要になるよなと常々思っており、専門知識のプロとコミュ力の天才の中間くらいの人がもっと増えないもんかなと思ってしまいます。


そんな訳で、今月の判決特集でした。
今回の記事の内容は動画にもしていますので、こちらも併せてご覧ください。


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