裁判の判決ばっか集めちゃいました(被害額に着目特集) 傍聴小景 #113
刑事裁判の進行には大きく分けて以下の3種類あります。
つまりは、裁判の途中の様子は全然わからないけど、「判決」の部分だけ傍聴することができるのです。多くの裁判が判決だけなら5分~10分程度で終了します。
そこだけ見ても…とお思いかもしれませんが、どうしてその判決を下すにいたったかの理由を説明するに際し、事件の内容はおおまかに説明するので(裁判官によっては割愛しますが)、短期間で事件内容に多く触れるという意味では結構勉強になるのです。
という訳で、「なんで?」という疑問は残るものもありますが、判決のみ裁判特集です。
今回は被害金額が大きかった判決ばかりを集めてみました。とても賠償できる金額でないものばかりで、もうとにかくいったれ感が溢れる感じをご覧いただけたらと思います。
No.44 首にタトゥーの男
もう見ての通り、とにかく罪名が多い。起訴された事実としては8つありました。
なんというか、無免運転が可愛く見えてしまいます。
こう言っちゃいけませんが、見た目から恐い。身柄拘束されていますが、グラサンして、首にタトゥーも入り、気合が入りまくっている方。裁判中はどんな態度だったのか、とても気になります。
事件が多かったのも興味深いですが、判決内容も結構興味深かったです。
①の事件は窃盗としては成立しないけど、横領罪として認定するであったり、③の事件については被害者と被告人で金額の認識に差異があったんだけど、被害者側の記憶に不確かな部分があるということで、被告人が自白した分が被害額として認定されました。
そんなこの裁判で問われた被害総額は4,621万円でした。いろんな事件が積もり積もってではあるものの、よくもここまで…。
裏バイト事案も、徐々に大物に捜査の手が伸びつつあるので、今後はこういった大きな話も増えてくるのかもしれませんね。
No.45 警察を騙した男
関西で知る人ぞ知るニュース性のある事件でした。
被告人はとある大学の法医学教授だったのですが、業者に対して医療用品を架空発注して、大学から不当に金銭の交付を受けたり、警察から死体検案の依頼を受けたもので、さらに精密に検査するため他所に発注しないといけないところをせずに、警察には外注した請求書を送るなど、とんでもなく悪質なことをしていました。
この被告人、他の死亡検案が関わる裁判でも名前が出たこともあって、影響力があった方だとは思うのですが、それが故に止める人もいなかったのでしょうか。
被告人は、死体検案の詐欺事件については否認していたようです。
非常に被害額が多い事件のため、一発の実刑となりました。
さて、その気になる被害金額ですが、8,600万円でした。
全てが自身の純粋なる利益として懐に入れたのか、何に使ったのかなどは不明ではあります。ただ、医学部教授というだけで、私のような庶民には想像できない額をもらっていたと思うのですが、人は一定の蜜があると、「もっともっと」となってしまうのでしょうか。
僕は一時期、大学を相手に仕事をしていたことがあるんですが、大学内における(一部の)教授さんの絶対的地位に辟易とした記憶があります。
警察から依頼が来るくらいですから、ある種、大学の顔みたいな面もあったのでしょう。なので周囲も気付いてもなかなか言い出せなかったのかな。
後半は私見に過ぎませんが、判決だけでもいろいろと感じるものはあります。
その中で、あまり自分の想像だけが暴走しないようにするのも大変なんですよ、などと言ってみたり。
No.46 14億円馬券を目指した男
被告人は会社の総務課長としての権限を悪用して、会社の預金口座から自身の口座に1年半で312回も送金、横領した疑いがかけられていました。
業務上横領の中では、言ってしまえばよく見る事件。しかしながら1年半に300回以上って、実際の業務日数で考えたら、ほぼ毎日のようにという犯行、これは珍しい。
業務上横領の量刑としてMAXが認定されました。それだけ額が大きく、悪質ということ。
金額だけではどうやってもMAXは逃れられないだろうということで、裁判では弁護人がいろいろと主張をしていたようです。
「自首が成立する話だ」「競馬で勝って返すつもりだったから不法領得の意思が弱い」などなど。いずれも、却下されたり、刑を軽くする理由にはならないと退けられていました。
さて、そんなMAXな懲役刑判決が下されてしまった事件の横領額は、
14億円でした。
そりゃ無理だよ。ってか競馬で返すってなんだよ。そんだけ勝ったら逆にニュースになっちゃうよ。
それにしても14億円も横領できるなんてどんな会社だよって思ってしまいますよね。
裁判で明らかにされた社名は僕は知らなかったのですが、調べてみたら創業から100年以上経っており、社員数も3000人以上いる立派な企業でした。
昨今、企業はいろいろな自動化で人員を削減していますが、こういう経理的なお金な動きってその波は来ているのでしょうか。銀行とかはそういう話は聞きますけど、意外と企業って「えいやー」で帳尻だけ合わせている企業があるような気もする。
もちろん、お金の部分だからこそ人の目を介さないと恐い部分もあるでしょうが、目の前に大金があるとちょっとくらいという心境にもなってしまうんですかね。
僕はそんなことしない!という気持ちでおりますが、実際目の前に大金があったら心が揺らいでしまうのでしょうか…。
おまけ 弁償が1%も出来ない男
判決だけ傍聴した裁判を紹介していますが、この話だけは裁判全部を傍聴した話です。その中で、一番被害額が大きかったのを選びました。
これも罪名としては業務上横領で被告人は経理を担当する人物でした。
こちらは約4年半にも渡って立場を悪用して横領を続けていました。
横領の最初のきっかけは、経理に移ったばかりで支払うべき退職金をどこから引っ張ったらいいかわからなかった中、簡単に会社のお金を動かせたことからエスカレートしたらしい。
誰かに聞け。
こちら、求刑は懲役10年だったのですが、判決では8年に少しだけ減っていました。何か被害弁償したからとかでなく、単純に被害額の関係でしょうね。
この件の被害額は6億2千万円でした。
先ほどの14億円があったから霞むけど(別に霞まないか)、やっぱりとんでもない額です。この人も競馬をして、当てて戻すつもりだったと供述していました。業務上横領マニュアル本にこの理由でも載っているのでしょうか。
この人もほとんど手元のお金は使っちゃっていて、手元の250万円は弁償に使ったのですが、1%にも満たないですからね。
というか、本当に手元に残ってなかったのかな。何かお金以外のものに変えているかどうかって、どこまで捜査するんですかね。
よく、「金」とか「仮想通貨」に変えちゃってるんじゃない?なんて意見も聞きますが、実際のところはわからないものの、業務上横領系の証拠資料ってメチャクチャ膨大なので、捜査関係者は相当綿密にやっていると思いますよ、と期待を込めて書いておきます。
そんな訳で、今月の判決特集でした。やっぱ判決だけでも想像というのはいろいろと膨らむものです。
今回の記事の内容は動画にもしていますので、こちらも併せてご覧ください。
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