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「頭にガソリンをかけて火をつけたけど殺意はない!」ってどういうこと?裁判員裁判ガチ傍聴! 傍聴小景 #126-後編(殺人未遂)

ニュースって切り口次第で印象操作できちゃうよなと、やや冷めた目で見たりします。とはいえ、裁判の中ですら検察官、弁護人の切り口で印象が変わるわけですから、ニュースのそれも仕方ないよなと思ったり。

この事件の逮捕時の報道で「ガソリンをかけて火をつけた」ことに対し、逮捕当初から被告人(当時は被疑者)は、「殺すつもりはなかった」と答えていました。それを読んだ自分は「ガソリンをつけておいて、そんなぁ」と思っていました。

その言葉の真意に迫る後編です。


本記事は前中後編の後編記事です。前中編をお読みでない方はこちらからどうぞ。

前編

中編


さて、前回の被害者への尋問によって、弁護側としては「示談の内容や経緯、その後の対応の不満」「ガソリンをかけた量」について主張していきたい様子が見受けられました。それが、最終的な主張や、判決にどう影響するのでしょうか。


被告人質問・弁護側(事件までの経緯) ~グロ動画サイト見るので大丈夫だろうと~

法廷に入る際は両手で何か資料を持ち、尋問を聞いている最中はずっと何かメモを取っていた被告人。口は真一文字に結び、法廷ではずっと表情を崩さずにいました。その思いのたけをどのように発するのでしょうか。

まず、被害者との出会いから。被害者から声をかけてきて、被害者からキスをしようと誘われてきたと主張。
しかしその際、被害者から「キスが下手」と怒られたとのこと。

その後、家で酒を飲むなどの仲になり、被害者に好意を抱いた被告人ではあるのですが、

弁「出会ってすぐのころで、何か印象的なことなどは」
告「被害者からシンナーやドラッグをやらないかと誘われましたが、断りました

弁「それについて反応は」
告「それ以降会うと、「お前、あのこと言ったら、火をつけて殺すからな」などと言われました」

被害者への尋問で全く話題に出なかったドラッグの話が出てきて少し困惑。でも、自分からいきなり誘って、断ったら「周囲に言ったら殺す」って激情型過ぎませんか?
この話が本当だとしても、それまでに言ってない話がいくつかありそうで、にわかに信じがたいです。


後日、暴行を受けた日のことに話は移ります。

弁「暴行を受けた経緯は」
告「A(ガソリン受渡しした共犯者)と飲んでたら、被害者が見えたので、逃げたら追いかけてきました
僕(逃げた?)

弁「そこでどんな会話を」
告「『久しぶり』と僕が言ったら、いきなりビンタされ、電柱に叩きつけられました

弁「被害者は何と」
告「私の作ったレポートのことについてだったり、「あのこと言ったらお前と家族を殺す」と」

弁「レポートって?」
告「前に誘われたクスリについて、麻薬取締に送ったものです」
僕(???)

弁「その暴行で被害者は警察に連れて行かれましたが、被害届は出したんですか」
告「好意があったので出していません」

ムズイって。
好意があるから被害届は出さなかったってのはいいけど、被害者が使っていたとされるクスリについて麻薬取締に送ったのはどういう意味があるの?それを聞いてくれ!

自分をないがしろにするとそういう行動に出るぞという脅しなのか、法廷でただ嘘を並べているだけなのか、本当に違法薬物を取り締まって欲しいという思いなのか。3つめは無いにしても、こんな序盤から、被告人の複雑な思いに触れるとは思いませんでした。いきなり逃げたってのも、なんか後ろめたい思いなのかなとか思っちゃうし。なんか色々唐突なんよな。

口をケガした時の話

弁「この日はどのように被害者に会ったんですか」
告「偶然会ったので飲んで、店閉まって外に出たら、被害者がお金を渡して『もうついてくるな』と」

弁「それを受け取ったんですか」
告「はい。でも、私も酔っていたんでついていきました

弁「それでどうなったんですか」
告「私は『覚醒剤やってること言うぞ』と言ったら、『金返せ』と」

弁「それでお金は返したんですか」
告「逃げて、捕まったあと、口に手を入れられて引き裂かれるようにしてケガしました」

ケガをさせられた被害者をアピールしたいのか、被告人もこの時点で大概におかしいことを表したいエピソードなのかさっぱりわかりません。
この被告人に限らずなんですが、「自分も被害者だ」的なアピールをする人は、過程をすっ飛ばすことが多いので、曖昧な印象を抱かざるを得ず、どこまで言い分を聞いたらいいのかという思いにさせてしまいます。


さて、口をケガをしましたが、好意から被害届は出さなかった被告人。しかし、別の行動に移します。

弁「被害者に『殺すぞ』というショートメッセージを送っていますが、それはなぜ」
告「殴られて悔しいのと、またされないように脅しのためです」

弁「本当に殺す気はありましたか」
告「ないです」

弁「硫酸やホワイトガソリンの画像を送ったのは」
告「一瞬、仕返しが頭をよぎったので」

なんか、これもハチャメチャな話です。

殴られて悔しいはわかります。というか、悔しいがなければ、ただのMですし。
しかし、されないように脅しのために「殺す」と送るのは、逆上させるだけでは?もしくは自分が近付かなければいいだけで、全く理解ができません。被害者風を装うにしても厳しいです。

確かにこのメールの段階で本当に「殺害」の意思があったとは、僕も感じません。しかし、硫酸などの画像を送るというのは、単純に仕返しというより、何かどす黒い感情が生まれたタイミングではあるように感じます。

さて、その後、被害者はBと住んでいた家を出て、シェアハウスに引っ越します。なぜ家がわかったかと疑問がありましたが、2丁目仲間のネットワークで知ったとのこと。
ただ、被害者自体は誰にも言っていないとのことだったので、そのネットワーク自体になぜ漏れたのかは謎のまま。パンフを盗ったことや、シェアハウスに侵入しようとしたという指摘には否定をしました。


被害者が被告人の家の家具などを壊した日のことについて

弁「どうして被害者は被告人の家に?」
告「飲もうと言われて。そこで、『俺の親父の勤務先知ってる?』って聞かれました」

弁「なんて答えたんですか」
告「当時は知らなかったんですが、冗談で『知ってる』と答えました

弁「そうしたら」
告「テーブルやテレビを倒したり、壁に穴を開けたり、殺すぞと首を絞めてきたりしました」

“当時”は知らなかった、と法廷で答えたり、冗談で「知ってる」と答えるなど、いちいち面倒くささを感じさせる被告人。被害者の証言も聞いているので、そら発狂するわと思うのですが、本人としてはどういうつもりだったのかよくわかりません。

弁「警察とはどんなやり取りを」
告「関係性を聞かれ、好意を抱いていることを言うと警察は『じゃあ示談でいいですか?』と」

弁「被害者はなんと」
告「示談して欲しいと」

弁「それでどうしたんですか」
告「被害者を考えると、示談じゃない方が懲りるかなと被害届にしようかなと。でも被害者は『警察行ったけど全然悪いと思ってないよ』などとも言ってたんで」

弁「被害届を受け取ってもらえましたか」
告「警察からは『なんで!?示談して被害者を守ってあげなよ』と相手にしてくれませんでした」

弁「それでどうしたんですか」
告「反省しているか確かめるために話すことにしたら、被害者の方から『示談してくれたら、他の友人と一緒に飯を食う、合法のクスリを一緒にやる、一緒にペルーへ行く』と言ってきた」

弁「それで」
告「『示談しなかったら、ホームセンターに縄を買いに行って自殺をする』と言ったので、かわいそうになって」

被告人は、被害者が自分のことをどう思っていると思っていたのか気になるところです。「懲りさせるために被害届を」とは言いますが、あんたが付きまとうこと自体が懲らしめることになっているわけで、なんかその前段が抜けている気がします。

もちろんそれらは、被害者の意見を採用した上での判断基準になっていますが、質問の中でそういった付きまとい行為を否定することもなかったので。

唐突に被害者が、「合法のクスリを一緒にやる」と提示してきた例も、被告人の話を信じるならば、当初から薬物の使用を断っていたわけであって、それが示談の決め手にならないことは明白。
それでも提示してくるのは、被告人が必要な情報を隠しているのか、適当なことを言っているのか、被害者がクスリのことしか考えられない人なのかということです。


ちなみに、その話し合いをした場でも一緒に酒を飲んで、殴られたそうです。いい加減にしろ。

弁「その後示談の書面を見てどう思いましたか?」
告「2件の被害のことだけと思っていたら、対象の範囲が広くて驚きました」

弁「安いと思ったわけですね」
告「『仲を続けるから安くしてほしい』と頼まれて

弁「訂正を求めなかったんですか」
告「しても仕方ないかなって」

弁「それでも示談したのは」
告「『しないと自殺する』と言われたので。関係を続けるなら、今後暴力を奮ってくることもないだろうし。」

被害者の話を先に聞いているからかわかりませんが、どうも被告人に被害者感がないんですよね。安くせざるを得なかったみたいなアピールもされてもそれを応じざるを得なかったと感じにくいのと、その一方での暴力を奮うことないだろうしという結局自分視点の勝手な思い込みというのもよくわかりません。

ただ、この根拠のない自分の考えを押し通す感じが、この人なのだろうと感じます。


その後、示談時の口約束を守る気は被害者から無いと聞かされ絶望した話になります。
ただ、それでも一緒に酒を飲み、殴られたり、蹴られたりします。それでも被害届を出さないのは好意があるからでした。絶望したり、飲んだり、殴られたり、何を聞かされているんだという感じです。

その後、「口約束を守らないのなら示談を取消して欲しい」など要望するものの、被害者から無視されるようになり、被害者の代理弁護人から連絡を取らないよう注意を受けます。
しかし、「示談は二人で決めたことだし止めない」と連絡を継続。それまでもそうでしたが、ここで立派なストーカーが誕生した感じがします。

弁「Aと一緒に、Bに対して『被害者を殺そう』という動画を送ったのはなぜ」
告「私自身は被害者に連絡を取れないので、Bにそういった動画を送れば、被害者がBにこれ以上迷惑をかけられないと私に接触してくるのではと思って」

弁「その動画を送ったころ、殺すつもりというのは」
告「全くありません」

弁「Aに『復讐事業を妨害する奴は殺す』と言いましたか」
告「『殺す』ではなく『消す』とは言った」

どっちでもえぇわ。なんなら「消す」の方が恐ぇから。
まぁ、とにかく殺害目的ではなく、「被告人がなんかヤバいことになってるよ」とBから被害者に進言することで、連絡を取らせようとする手段であったと主張。殺意ではないという主張に一定の説得力はあるものの、異常な執着性を表すエピソードであることに変わりはないのかなと。

しかし、被害者から被告人に連絡が入ることはなく、被告人は次の手を打ちます。

弁「警察からストーカー規制法に基づく、接触禁止の命令が出ましたね」
告「はい」

弁「それでどうしたんですか」
告「直接話そうと、大阪に引っ越しをしました」

弁「なぜ」
告「約束を守ってもらうためです」

口約束を守らせるために、警察からの約束を守らないことに真っ直ぐな被告人。最初に約束したのは自分だしという思いもあるでしょうが、関東から大阪に引っ越してまで、その月一回の飲みを実現させたかったのか。

弁「Aが被告人から、灯油かガソリンのどちらか燃えるか実験するよう言われたと」
告「はっきり覚えていないが、言いかねないとは思う」

弁「どうして」
告「そうすればAから被害者に連絡が行って、ヤバいということで態度変わるかなと」

動画の件同様、人伝いに被害者に情報を届かせるためにという主張。
しかし耳には入るかもしれないけど、燃焼実験をわざわざするよう仕向けるのは、本人にその意思があったと思われてしまうのでは。無意味に実験させられそうになったA可哀そう

しかしその後、冬の寒空のもと被害者のことを探し続けることに「被害者のどこがよかったのかな」と感じるようになり、大阪を離れることになります。

おやおやと思っていたら、戻ったその半月後くらいに、“偶然”住所がわかり、また約束を守らせようということで大阪に向かいます。その半月はなんだったのか。

弁「何をしようと思ったのですか」
告「約束を守らせる。それができないなら示談の取消、それもできないなら顔に硫酸をかけようと」

弁「顔に硫酸をかけようと思ったのは」
告「2丁目やハッテン場や出会い系などが好きなので、それができないように

弁「いきなり復讐でなく、まず約束、そして示談の順ってことでいいですか」
告「はい」

弁「殺害する気は」
告「なかったです」

恋愛感情のもつれで、それが満たされなかったときに、相手が別の人物に取られないようにというのは動機として聞くので、根本として否定する気はありません。
しかし、硫酸をかける行為や、後にガソリンをかける行為に、条件付きとは言え移行するのは、間違いなく悪意が増大していますし、一歩間違えれば死を当然に連想させるものです。

その辺りをどう説明するのか気になります。

弁「なぜガソリンを購入することに」
告「硫酸を購入しようと思ったのですが、うまく見つけられず、灯油にしようかと調べていたらガソリンに検索があたったので、こっちの方がいいやと」

弁「そのガソリンをどうするかAには言いましたか」
告「火をつけて殺す、と」

弁「それはどういう意図なのですか」
告「そう言えば、Aが被害者に言うのではないかと」

弁「殺すつもりは」
告「ないです。ガソリンを見せれば話に応じるのではと思い」

そこまでしたら、お前が話す相手は被害者じゃなくて、警察だがな!

他者が「あいつヤバいよ」と被害者に伝達されることを狙ったという主張は一貫しているので、本人の中では筋が通っているのかもしれません。
しかし、手がどんどん悪質化していることに本人はどう思っていたのか。というか、そこまでして実現させたい約束なのであれば、口約束でなく示談書に盛り込まなかったミスだと思うのです。

弁「その顔に火傷負わせるという発想はどこから来てるんですか」
告「数年前に、東京で硫酸かける事件があったので」

弁「火をつけたら、もしかしたら死ぬかもとは」
告「思ってません

弁「なぜ」
告「グロ動画サイトとかを見るんですが、首元にガソリンをかけられても、走って消えたりしてたので、顔にかけるだけなら大丈夫だろうと。」

そんな「AVで見たから、相手が喜ぶと思って」みたいなテンションで言われましても…。

硫酸は確かに顔にかけたら火傷で済むかもですが(これでも大事件ですが)、ガソリンに関しては行う場所によって広がり方などもあるでしょうし、液体として伝わる箇所にもよるでしょうしと、本当にそう思っているなら想像力の欠如と言わざるを得ません。

そしてガソリンと火として思い浮かべるのは、どうしても京アニ事件。どうやっても軽く考えていい話ではないのです。


被告人質問・弁護側(事件当日) ~被害者証言と異なるガソリンをかけられた状況~

被告人の考えでは、周囲から被害者に伝われば接触があるのではと思っていたもののその目論見は外れ続け、被告人の感情は強くなっていきます。
被害者の尋問でも、周囲からそういった連絡を受けたという話は出なかったので、被害者にとって事件当日は本当に驚きだったことでしょう。

弁「当日、どこで被害者を見つけましたか」
告「現場から、10~15分くらいのところ。距離を置いて追跡しました」

弁「見つけてどうしましたか」
告「気付かれた感じもあったので、カツラをつけました」

弁「そのとき、ガソリン缶やライターは持っていましたか」
告「ガソリン缶を左手に、ライターを右手に持っていました」

弁「ガソリンの量は」
告「1リットル弱です」

話し合いをする人の動きではありません。

百歩いや一万歩譲って、被告人にとって本当に話し合いをする心づもりだったとしましょう。しかし、そんな脅迫じみた方法を使ってまで、約束を成り立たせたいと思う人物となんて、今後も関係が続くはずがありません。

弁「被害者に見つかったときの様子は」
告「だいたい6mくらいの距離で気付いて、『お兄さん、誰?』と怒っている感じでした」

弁「それでどうしましたか」
告「ガソリンを持っているのがバレたらまずいと思って、手を車の陰に隠しました」

弁「その時点で話し合いについては」
告「怒っていたんで無理そうだなと」

被害者、怒ってないときなんてないと思うんですが。

自分が当事者だと考えて、面と向かった人物が変装してて、手になにか液体とライターを持った状態で「話し合いをしましょう」と言って応じるとでも思ったのでしょうか

弁「被害者から逃げてどうしようと」
告「逃げて、追いかけての状態だったので別の日にしようと」

弁「それでどうしたんですか」
告「振り返ってみたら、顔が厳しいし、体は大きいし、また見つけるのも大変だしと思い、このガソリンかけて火をつけたら関係終るかなと」

なぜDVに悩まされて反撃する妻みたいな独白を…。今は追いかけられてるかもしれないけど、普段追いかけて追い詰めてあるのあなたですよ。

その後、証言台で動作を伴ってなので文字にするの難しいのですが、注ぎ口を被害者に向けて、やや下から真っすぐ被告人に腕を伸ばす感じで1回かけたという被告人。
防犯カメラ上だと2回かけたような動作のようなのですが、持ってる缶の中の揺れを抑えるための動作で、かけるために2回腕を伸ばしたわけでないと主張。

弁「被害者はかけられてどうしていましたか」
告「右目を閉じて私を見てるようでした」

弁「被害者は反射的にしゃがんだといったような証言をしていましたが」
告「真っすぐ正面を向いていました」

弁「かけた後、缶に残った量は」
告「ペットボトル1口飲んだ程度です」

弁「缶から出たのは全て被害者にかかったのですか」
告「1/3くらいで、残りは地面に落ちました

弁「ガソリンをかけたのはどういう思いから」
告「火をつけて火傷を負わすつもりで」

弁「殺そうというつもりや、もしかしたら死んでしまうとは」
告「ないです。私のやり方では死なないと思いました」

死亡する可能性はないと確信するにしては、その根拠は動画サイトを見ただけという綱渡り犯行。Aに燃焼実験を本当にさせたり、かける器具がスポイトで僅かな量だったとかならまだ説得力があるのですが。

とは言え、焦りがあったのか、ライターからなかなか火がつきません。1回目は不発。2回目も顔に近付けるものの、ライターから火は出ず、ガスだけ漏れるような音がしたと思ったら、一気に「ボッ!」となり火がついたとのこと。

その後、被害者は助けを求めて走り去っていき、被告人は手に持っていたガソリン缶の口から火が出ているのを見て、その場に落として去っていきました。それが元で、さらなる事件に繋がったらどうしたんだ…。

弁「事件後どうしましたか」
告「Aに『私、実行したわ』と連絡し、関東で落ち合う話をしました」

弁「Aと会ってどうしました」
告「タバコ、ライター、酒などを買いました」

弁「Aにはなんと伝えましたか」
告「ガソリンをかけて火をつけたと」

弁「その後は」
告「ニュースになっているかもと、漫画喫茶に行きました」

弁「ニュースを見てどう思いましたか」
告「殺人未遂と書かれてて意外でした。私に聞いてもないのに殺人未遂ってわかるものがないはずなのに」

弁「その点、Aと話しましたか」
告「『殺す気がなくても殺人未遂になるんだね』とは話しました」

弁「Aは尋問で『重傷ってことは死んでない、もっとかければよかった』とあなたが言っていたと」
告「言っていません」

弁「『全治一ヶ月しか』のようなことは言いましたか」
告「それは『大した事ないのか、もっとかければよかった』とは言いました」

弁「復讐の気持ちはどうなりましたか」
告「達成しました。Aの家で復讐記念として、3泊して鍋をしたりしました」

弁「死亡したかの結果は気にしていないということですか」
告「はい」

人に火をつけて、それを記念に鍋…。
これが実行に起こしてしまう人のリアルな心情なのでしょうか。それに付き合うAもどんな気だったのでしょうかね。

最後まで殺意は否定します。まぁ当然それはいいです。ただ、頭にガソリンかけて火をつける行為が殺人未遂と報道されることに、「そっか、そう思われちゃうか」じゃなくて、「なんで?」とか「自分に聞いてもないのに」と思う自分本位さが、本当にキツい。

心情的に理解できるかはともかくとして、被告人が殺意を否定するという心情的な推移はある程度はわかりました。


被告人質問・検察側 ~ストーカーの認識はあったけど~

はっきり時間は覚えてないですが、午前10時から始まった被告人質問、検察側に移ったのは午後2時くらいだったでしょうか。

裁判員裁判は休憩も多いので、なんだかんだ集中力途切れずにやれていますが、裁判に慣れていない裁判員さんはどれほど集中力を保っていられるものなのでしょうか。
質問予定表みたいなのが裁判員には配られているはずなので、僕みたいにガッツリメモは不要でしょうが、裁判員のメモ事情というのも気になるポイントです。

さて、検察官に質問が移って最初は、また被害者との出会いの話から。(正直、もういい…)

素っ気ない態度を取られながらも、自分の気持ちを優先して、被害者に魅力を感じ関わりの継続を求める被告人。
一応、クスリのレポートを作成したことは、被害者の怒りを買うことになる、自身の落ち度として認識はしているようです。まぁ、これに関してはクスリを使うのがそもそもは悪いとは思うのですが、なぜそんなレポートを作ったのかは最終的に不明。

検「自身の行為がストーカー行為だとは」
告「警察に言われて初めて認識しました」

検「被害者に対して『「周囲にスト―カー被害で困っている」って言っているのを聞いたよ』とメッセージはしましたか」
告「どういう意図かは忘れましたがしました」

検「ストーカーであると認識して、関わらないようにとは」
告「治療費のことが残っているのを口実にしていました」

検「治療費と連絡を取り合いたいではどちらが優先でした」
告「治療費は2番目でした」

自分は決してストーカーではないと、認めない人も多いのですが、一応その認識はあったようです。まぁ認識はあるだけで、付きまといは続くわけですが。それはそれ、これはこれという考えなのでしょうか。

検「示談に際し、何か約束をしたのですか」
告「しました。(判読不明。何かを一緒に食べる)、合法の薬物を一緒にする、ペルーに一緒に行く、月に1回性交をする、今後も仲を継続する」

検「一番重要と思っていたのは」
告「仲を続けること」

検「薬物をしたくないとは思わなかったのですか」
告「興味はないですが、被害者に気に入られるためならと思ってました」

検「被害者は本心じゃないとは」
告「それまで見え透いた嘘をついたことはなかったんで、そうは思いませんでした」

それまでの嘘の具合はどうだか知りませんが、無条件で信用する相手でもないとは思うのですが…。嫌われたくないという思いなのか、自分も嘘をつかれた被害者であるというアピールなのか、果たして。

その後、ホームセンターでロープを買おうした時に暴れた話を聞いて、自分と離れられないなら死ぬつもりである思いと知り、一時は関わりを持たないようにした被告人。

検「被害者が関西に帰ったのを知ったのは」
告「Bが言ってたか、なにかで知りました」

検「被害者が通っているスポーツジムに連絡したようですが」
告「本人の名前を騙って、最近いつ使ったかを確認しました」

検「それで関西に来ることを決めたのですね。何をしようと」
告「約束を守ってもらおうと思いました」

関わりを持たないように決めたとはなんだったのか…。わざわざジムに利用履歴まで確認する徹底ぶり。そもそも、そのジム自体を特定できた理由を聞きたいのですが。

検「そこまでしてどうして」
告「約束は約束だからと自分を正当化していました」

検「被害者側の弁護士を通じてやりとりしようとは」
告「内容証明にも、ホームページにもアドレスなどもないし、複数いて精神的な圧力もあありました。また、他の弁護士に相談したら、一度結んだ示談は取り消せないとも聞いて」

この時点で、示談が取り消せない認識はあったので、とにかく関係性を継続させるという口約束を履行させたい被告人。そこまでして仮に関係性が継続というか、連絡が取れたところで、その関係が続くと思うのでしょうか。

話せばわかる、一目見れればいい、本人は嫌がっていないはず、ストーカー裁判でよく聞く弁明ですが、こういう考えになり周りの声が届かない場合は、どうするのが正解なのか本当にわかりません。

検「自分で、灯油やガソリンの実験をしようとは」
告「思ってません。そういう準備などをしている噂が流れて、被害者の耳に入ればよかったので」

検「一度諦めて関東に戻っている時期がありますが、どうして」
告「なんで、こんな思いをしないといけないんだろう。自分のために生きようと思って」

検「しかし、そこからまた復讐を計画しますよね」
告「Aが被害者にそういう状況を言ったら気が緩むんじゃないかと。そう思って魔が差して、調べたら住所がわかったので、約束を守らせようと」

自分のために生きるとはなんだったのか。
「気が緩む」という表現があるということは、被害者自身がこの件でピリついているという認識はあったわけですね。それでもなお、約束を守らせたい思いに駆られます。あなたは警察との約束を守ってどうぞ。

検「最終的にガソリンを購入したのは」
告「灯油を調べていたらガソリンがあって、灯油だと温度によって火がつきにくいというのは知っていたので」

検「硫酸にしなかったのは」
告「サイトにあったは気はしますが、登録とかが必要でやめた

検「当日、変装したのは」
告「自分とわかると逃げられると思ったので」

検「変装していると、不審がられて話にならないとは」
告「変装に自信があって、ジロジロ見られなければ自分とわからないかと思って」

検「ガソリンは元々顔にかけるつもりだったんですか」
告「はい」

検「かかった場所を確認しましたか」
告「しました」

検「それが衣服に流れたとかは」
告「そこまでは見れていない」

検「その際、話し合いをしたいなどとは言いましたか」
告「そういう計画だったけど、本人を見たらその気はなくなった」

検「火がついた場所というのは」
告「顔面全体的に」

検「後頭部やダウンジャケットに火がついているとは」
告「自分の位置的に見えませんでした」

検「燃えている様子を見てどう思いましたか
告「なんでライターから火が出てないのに、ついたんだろう

検「他には」
告「被害者が立ち去ったときに火が小さくなったのを見て、これじゃあ火傷にならないかなって」

最後の2つの答えサイコパス過ぎるだろ。
本当に火がついてしまったことの焦り、そして被告人自体も今後どうなるだろうかという不安が一切語られないところに、非常に恐ろしさを感じます。

最後に、Aとの証言との差異について、精神疾患の薬のせいで、間違って覚えているのではないかと証言しました。


被告人質問・情状面と裁判官から ~過去にもあったストーカートラブル~

それまで行われたのは、犯行に至る経緯や、当時の状況について集中して行われたので、休憩を挟んだのち、事件後の被告人の心情などを聞く被告人質問が行われました。

犯行当日にはお祝いなどをしていたものの、被害者の火傷の写真を見て、とてもショックを受け反省しているとのこと。
グロ動画サイトとか見てるんでしょ?全治1ヶ月なら大したことないと思っていたんでしょ?どれほど反省しているかはよくわかりませんでした。

弁「これまで人をケガをさせたりとかは」
告「ありません」

弁「それなのに、今回このような大けがを負わせることになったのは」
告「泣)何回も殴られている内に性格が変わっちゃって

暴行を受けていたこと自体に同情することはできますが、それがなくても元々執着していたわけで、理由にするにしても限度があるだろうと思ってしまいます。具体的にどのような性格に変容したのかは語られず、起こした原因を自分でどのように捉えているのかは分かりませんでした。

弁「他に原因は」
告「騙されて示談させられたり、ストーカーの警告をされたりで、追い詰められたような気になってしまい」

弁「今から思えばどうしたらよかったですか」
告「元々、自分の気持ちを優先させちゃうので、嫌がってるなら早めに切るなどしてればよかった」

弁「今後しないために」
告「暴力のあるところに自分の身を置きません」

弁「全体を通じて伝えたいことなどあれば
告「私は当初は復讐の考えで3ヶ月の火傷を負わせてしまいました。当時は暴力を受けていましたが、それも心情を考えていなかったからだと思うので、自分を変えていきたいと思っています」

「暴力のあるところに自分の身を置きません」でなく、自分本位の考えを本当にどうにかした方がいい。騙されて示談したとか、追い詰められたとか、自分は本当にそう思っているかわかりませんが、相手にどう思われているかという視点が欠けているのかなと思います。


検察官から

検「被害者に申し訳ない気持ちになったのはいつですか」
告「受傷した箇所を見てからです」

検「それは起訴されてからという意味ですか」
告「はい」

検「逮捕時には」
告「黙秘していたことや、そこまでとは思ってなく」

黙秘と反省は別の話かと思うんですが、やはりズレています。

検「火をつけるなどでなく別の行為にしようとは」
告「自分も、弁護士事務所に行くなどしたが、示談の取り消しは難しいと聞き、自分でなんとかしようという思いで引っ越してしまった」

検「過去にもストーカー的なトラブルがあったようだが、自分にそういう兆候があるとは」
告「認識はしていた」

検「では今後はどうする」
告「自分の性格を認識し、相手を好きになったら、それ以上深めないようにする」

別に相手を好きになるのはいいと思うんですけどね、その暴走を止められないのが問題なだけで。しかし、周囲にもそういった人物もいなく、家族も何年も連絡を取っていない状態のこと。この件での実刑は免れませんが、出所後どんな生活が待ち受けているか、何もわからない状態で不安だけが残りました。


最後に裁判官、裁判員から質問があります。まずは裁判員から。

員「事件の日、Aのところに行っているが、出頭する気などはなかったのか」
告「ないです」

員「その理由は」
告「いずれ捕まるのはわかっていたんで。被害者からストーカー扱いされたり、警察で示談の際に面倒みるべきだと言われた反感なんかもあって」

員「逮捕されるまで罪の意識は」
告「当時、心の底からあるかというとなかった」

員「被害者のケガの様子などを心配したりは」
告「したけど、それより顔に火傷したのがショックで自殺したりしないかな心配してた」

Aには、絶対捕まらないとか言って手伝わせていたと思うけど、さすがに捕まるとは思っていたんですね。いいように使っていたAについてどう思っていたのか気になるところです。


最後に裁判官から。

まずは、ストーカーとしての認識、示談の取消が難しいことを事件を起こす前から認識していたのかを確認していました。つまり、殺意はともかくとして、自分で意識して行っていたかどうかについて。それは認めました。


裁「法律家からも示談の取消は難しいと聞いた」
告「聞きました。でも本人と合意を取れればと思い」

裁「でも接触を禁止されているわけですよね。それが違法とは」
告「認識していました」

裁「事件当日、話をする気なのに、自らを名乗ってもいないのはなぜ」
告「被害者が酔っぱらってて話ができる状態でなく、出直そうとも思ったけど、警戒されてまた引っ越されたら、また大変だし、この場でと」


論告・最終弁論

証拠調べを終えて、検察官と弁護人からの最終意見となります。

意見は双方熱が入ったものだったのですが、争点であります「殺人未遂が成立するか否か」の点について中心的に記載していきます。

主に、殺害する意思、もしくは死亡する可能性があっての行為かという「殺意」と、その結果が引き起こされる行為を起こしたかという「実行行為」についての話となります。

検察官の論告
殺意があった点について
・被害者に好意を持っていたが、避けられ、ストーカー行為を行い、「殺す」などと記したメッセージを送る、示談の内容を破られるなどとして恨みの感情を有していた。また、弁護人や警察から警告を受けてもなお、あらゆる方法で所在を調べるなど執着心を見せていた。
・ガソリンをあらかじめ入手し、変装を行うなど準備を行っている。
・当日も被害者を発見したら、変装、待ち伏せ、突然振り返って犯行を行うなど、練っていた計画の通り実行している
・事件後にニュースを見ての「死ななかった、もっとかけらればよかった」という言動も、それまで「殺す」などの発言と整合するものである。
これらから、ある程度の計画性、準備を持って、殺害する意思を持っての行為であることは明らか。

被告人の弁解は信用ならない
・殺害を予告するような動画や燃焼実験の依頼は、被害者に伝わって欲しいという思いからというが、それが行われるかには合理的な疑いが残る行為
・硫酸が購入できないというが、サイトで普通に買える。火傷を目的というのであれば、そちらの方が確実
話し合いをしたいというが、すでにその余地がないのは明らか
・死なないと思ったと言うが、着衣に燃え移る可能性を考慮していないのは不自然

実行行為について
・常温や蒸気でも火がつくガソリンの危険性は極めて高い
・火をつける行為は範囲が広がる可能性が多分にあり、特定部位の火傷で済んだのは衣服をすぐ脱げたからに他ならない

量刑判断
関係を続けようとし、家具の損壊などを口実に、警告を受けてもなお継続するなど執拗さが認められる。被害者側に多少落ち度があっても、悪質で身勝手な理由と言える。
行動パターンの把握や犯行に際し準備を行うなどの計画性も認められる。
被害結果は重大で、肉体的苦痛や火をつけられたという精神的な苦痛も見逃すことはできず、なんら弁償はされていない。その執拗な態度から、再犯も否定できない。

求刑 懲役13年

基本的にご主張はそのままそうだなと感じるんですが、「殺す」というメールや動画なども殺意の主張に含めるのは、その現物を見ていないからかもですが、ちょっと無理があるのかなと感じました。

とは言え、どちらかと言うと気になるのは弁護側の主張です。これまでの話をどうまとめるのか。


弁護人の最終弁論

実行行為について(引火させた行為が死亡に繋がるか)
かけたガソリンの量によりその結果が異なる。防犯カメラに映っていた2回の押し出すような動きで、3人の警察官による検証の平均値は91ml程度だった。しかも、被告人は実際に出たのは1回と供述しており、動きからその供述に不自然なものはない(図を使って説明していたけど、ちょっとよくわからず)ので、実際缶から出たというのは45ml程度
また、同じく被告人供述によると、缶から出た量の2/3は地面に落ちているので、かかったのは15ml程度大さじ1杯程度

なんか毎度思うのですが、防犯カメラがなかった時代って、証拠の認定ってどうしていたんですかね。その一方で、防犯カメラで2回それっぽい動きをしていたというので、それに沿うしかないというのが逆に制約に感じたり。

僕が見れていなかった手続きの中で、今回缶から出た量は91mlほどという検察官主張があったようなのですが、弁護側による主張は15ml程度のこと。
一定の納得感もあるのですが、2回じゃなく1回というのも、2/3が地面に落ちたというのも被告人供述によるものなので(地面に油シミは残っているが量不明)、これをまんま採用というのもちょっとなと思います。

僕は見れなかったんですけど、科捜研の方がいらっしゃって恐らくガソリンの燃焼について説明する時間があったそうなんです。
双方から、その後の意見に全く組み込まれていないので内容は謎なのですが、15ml~91mlの間と仮定した場合に、その危険性はどれほど違うのか気になるところであります。


殺意の有無
約束を守らず、話し合いに応じないため、モテないよう行った行為に過ぎない。
当日も、話し合い、示談の取消、それが出来なかったら火傷をさせる計画であり、初めから行為ありきではない。これは、殺人未遂と報じられ驚いたということや、火傷という結果でもAと復讐達成祝をしていることからも明らか。

危険性の認識も、動画などで結果を予測できたものであり、15ml程度では死ぬと思うはずもない。事前の準備もあくまで話し合いに応じさせるのが目的であった。
当初は硫酸を用いる予定だったが、身分証明などを必要としたため、ガソリンに変えたに過ぎず、硫酸をかけるだけでは死なないので殺意があるとは言えない。

殺意があったことが確実でないと、認定してはならない。
実行行為も、殺意も両方なく、傷害罪に留まる。

量刑の認定
被害者にも一定の落ち度があり、経緯に一定の酌量の余地がある。暴力行為などによる示談の際の約束を数日で反故にされている。反省し、謝罪の意思を示している。

殺人未遂と報じられて驚いたことが殺意なしとして採用されるのであれば、誰しもが言ってしまいそうな気が…。確かに火傷という結果に達成祝をしている事実もあるのですが、「絶対に殺す」とまでの強い意志があったわけでなく、「死んでもしゃーなし」くらいの気持ちで、復讐することが目的であればありえる話なのかなと思います。

また、15ml程度で死ぬはずもないと認識していた点は、最初からその量をかけようとしていたわけでなく、あくまで結果論なのでそれもどうかなと思います。


しかし、認定されるかはともかく、被告人の主張にはある程度の一貫性が認められると僕も思ったので、弁護側の主張の全体は興味深く聞くことができました。


被告人の最終陳述
この度、被害者に全治3ヶ月の火傷を負わせてしまい、今では本当に後悔している。一生忘れず、罪の償いのために生きる。自分が行った刑罰に対しては、二度とこのようなことを犯さないよう、前向きに更生に取り組んでいく。

今後、被害者には接触せず、関西圏以外に住み、ばったりでも会わないようにする。大変な苦しみを与えてしまい、心からお詫び申し上げます。


判決 ~未必的な故意の認定とは?~

裁判員裁判の判決って15時からのことが多いんですよね。これ、どうしてなんだろう。午前中は裁判員と、最終的に問題ないかのチェックをしたりするからなのかな。

さて、判決はどうなるか。


判決
主文 懲役9年 未決日数260日算入

争点についての判断
少ないとは言えない量のガソリンをかけて、火をつけたと認定。弁護側は15ml程度と主張するが、被告人供述からも火をつけた瞬間に顔全体が炎で覆われたとしており、燃焼の度合いは激しかったと考えられる。
被害者が冷静に叩いたりできたので鎮火できただけであり、現実的な危険性は高かった。

ただ、必ず殺害するという確定的な殺意までは認定できず、未必的故意程度である。
よりガソリンを多量をかけることも、着火まで被害者に逃走されるなど実現不可なことは起きていないことからも、復讐を目的として、熱傷で留まっても仕方ないという認識であったと思われる。
Aが被告人と話した際の証言した際に、被告人が発したとされる「重傷ってことは死んでない、もっとかければよかった」などからも認定。Aの証言時の対応は、わかるわからないをはっきり言い、自身が不利になることも述べるなど信用性は高いと判断し、危険性の認識を有していたと判断できる。

また、変装して名乗らないなど、話し合いをする目的だという被告人証言は信用できず、示談困難と認識していたことも伺われる。
そして残虐性が高い犯行で、被害者の恐怖も大きく、経緯に暴行を受けたという正当でない行為があるにしても、汲む点とまで認定できない。不合理な弁解で反省は不十分であり、執行猶予中の犯行で法を守る意識が欠如していることなどから判断した。

計5日間の裁判が終了しました。殺人未遂の裁判の長さとしては、平均的か、やや短いくらいの日程だったかと思います。

これまでの記事の通り、目の前で起きたことをバカ正直に書き連ねていきました。皆さんにも裁判員裁判を傍聴したくらいの感想を持っていただけたらよいのですが。


今回、最終弁論においての弁護人の主張は一定の納得感はあったのですが、それまでの2名の証人尋問で、あまりその主張の尻尾を感じることができませんでした。法廷で被告人に対して溜まった悪感情を払拭し、意見をひっくり返すには、ちょっと遅かったのかなという印象でした。


ただ、殺意に限らずですが、その意思の認定というのは非常に難しく感じます。判決で認定された「熱傷に留まっても仕方ない」という感じが自分的にもしっくり来ました。

諸々の状況証拠があっても、当時の人の心を認定するには、その確たる部分は立証できないでしょうし、被告人本人にとってもそのときの気持ちがまんま表現できるかというと違うかと思います。

そういう点からも、裁判で罪を認定する難しさを裁判員の方々も感じたのではないでしょうか。


やはり定期的に、裁判員も傍聴しないといけませんね。

しかし今回思ったのが、証人2名、被告人1名の意見を聞けましたが、どれかが欠けていたら印象はまた違ったのかと思います。だからこそ、3名のを聞けたのを良かったと思いますし、もしかしたら他にも印象が変わる証人がいたかもしれないしと、最終的に紡ぎだされる事実には、切り口というものが発生してしまうと感じたのでした。


長らくお読みいただきましてありがとうございました。
最後までお読みになられて、今後も多くの事件を追いかけていきたいと思っておりますので、活動の支援をしていただける方は、月額マガジン、もしくは当記事の残り部分の記事購入をいただけましたら幸いです。


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