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【長文&内容的に閲覧注意】23年印象的裁判第3位!会社内のセクハラに下された驚きの判決!? 傍聴小景#102(強制わいせつ)

今後3回に分けて、有料記事の合間に、私が2023年に印象的に感じた裁判3つを紹介させていただきます。

記事は長くなっちゃうと思うので、同テーマの動画も貼るのでご覧いただきやすいものをチョイスしていただけたらと思います。思い入れの強い裁判なので、是非ご覧くださいね。

見ていただくもよし、記事から読んでいただくもよしでやっていければと思います。


今回の記事、怒る人は怒るかも…。
強制わいせつ事案について、特に怒りを感じやすい方は、これ以降は自己責任でどうか…


はじめに ~気弱そうに見える被告人の犯行とは?~

罪名 :強制わいせつ
被告人:50代の男性
傍聴席:平均10人(全6回)

被告人は会社員の50代男性
50代だけど、威厳があるという感じでなく、発する声も含めて気弱そうな感じ。落ち着きもあまりなく、軽く貧乏ゆすりをしてるような感じ。

大変失礼ながら、外見のイメージと罪名から、気弱だけど、一時の衝動でなにかしでかしてしまって、「今は反省しています…」ってパターンなのかなと想像していました。
これが半分は当たっていたのですが、まさかこの裁判で半年以上もかかることになるとは…。


事件の概要(起訴状の要約)

被告人は強いてわいせつな行為をしようと考え、
会社内で、女性従業員に対し、いきなり背後から腿を掴むなどして抱きつき、右手で左胸を複数回撫でるなどした疑い。

会社内でというのが、なんとも珍しく、大胆な犯行です。さて、これに対して被告人側の言い分ですが。

被告人
まぁやったところは、やったところなんですけど…。

「いきなり背後から」となってますが、近付いたのは横からで、抱きついたのも正面からです。触った手も「右手でなく左手」ですし、「複数回」ということではないです。服の上からだし、胸ともわかっていません。

あと、「わいせつな行為をしようと考え」とありますが、そのときはそう思っていたわけではなくて…

などと、やんわりと部分的に否認。この主張にどこまでの法的な意味を持たせるのかなと気になっていたところ、弁護人の主張。

弁護人
被告人の主張と概ね同様。

それに加え、行為には暴行、脅迫を用いてなく、またわいせつ行為にあたらない。また、本人は被害者からの承諾があったと思っているので故意も認められず、無罪である。

むむむ、無罪?

本人が行為を認めている範囲だけをとっても、十分強制わいせつになりそうですが、どういうことでしょうか。
弁護人として、被告人が無罪を主張している場合、それに沿う必要がありますが、どうやら今回は被告人が主張を曲げないというより弁護人さんが法的な部分から無罪と主張しているようですね。


その後、検察官証拠によって、「被告人は結婚してて子もいるが、現在は単身居住」、「被害者は職場の同僚」であり、「休日出勤をさせて、人気のないところで犯行」ということはわかりましたが、それ以外の大部分の証拠を弁護人が取調べに不同意。


しかし、検察官としてどういう趣旨で不同意かわからない、と弁護人と一触即発ムード。

その後公開の法廷でなく、非公開の打ち合わせ手続きにそのまま入る異例の初回公判となりました。メモも口外もしないから、一度でいいのでこの打ち合わせというのに入らせていただきたいものです。

本当は非公開の打ち合わせの後、公判は再開する予定だったのですが、それもなく終了したので、結構揉めたのかもしれません。



弁護側の主張 ~日常的に接触があったが故に…~

次の公判まで約3ヶ月を要しました。もちろん双方の主張をはっきりさせる準備があったり、お忙しいのはわかるのですが、やはり裁判にかかる時間というのは長く感じてしまいます。

弁護側の主張
被害者は事件の3ヶ月ほどまえに入社。
事件前後、同じ職場で働いており、挨拶の際などに肩などへの身体的接触はあったが、拒絶されたことはなかった。その後の飲み会でも接触があったが拒絶されていない。

今回の行為も衣服の上からで、強く握ったり、同じところを執拗にといったものではなく、被告人としてはこの行為が罪になるという認識がなかった。行為から被害者が退職するまでの7か月間も同じフロアで働き続けていた。

その後、被害者から「セクハラについて」という文面に、言われるがまま署名、押印をしたものの、500万円の慰謝料の請求に対し、100万円ならと回答すると刑事告発されてしまい、被告人としても混乱しているとのこと。


強制わいせつ罪が成立するには以下の3つの要件が必要となります。

①暴行又は脅迫
②わいせつな行為
③強制わいせつの故意

つまり、それまでも拒絶されることなくボディタッチしていたし、それの延長くらいの行為だから、強制わいせつとの認識もなければ、強制的に何かをしたわけでもないですよーという主張なんですね。

法的部分は置いておくとしても、今日日、挨拶だからボディタッチ大丈夫という認識の会社員がいることに驚きです。
人がハラスメントと感じるポイントは多々なので、僕が全てに対応できているとも思いませんが、ボディタッチがNGだなんてハラスメントが叫ばれる初期の初期の話かと思います。
初期過ぎて忘れてしまったかな?

否認事件なので、ここで通常なら被害者を呼んで尋問するのですが、まだ争点が明確でないということで、先行して被告人質問が行われました。


先ほどの弁護人の主張の通り、呼び止める際、挨拶のときに肩や脇腹などに接触、つつくことがあった様子が語られました。それに対して被害者は、嫌がるでもなく、むしろ何の反応もなく流されていたような感じだったとのこと。

被害者入社後、懇親会では、狭いボックス席で身体を寄せたり、太ももに手が触れるなどがあったが、手を振り払われるといったこともなかったという。しかし、二次会のあとに飲み直しを誘った場合は明確に断られたとのこと。

事件日について聞きます。休日出勤で被害者と2人きりの状況になりました。

弁「抱きつこうと思ったのですか?」
被「抱きつくとかでなく、普段通り「お疲れ」みたいな」

弁「どこまで触っても許されると思ってたんですか」
被「考えたこともないです」

弁「被害者に抱きついても許してもらえると思ってました?」
被「まぁ、許してくれるような感じですかね」

弁「胸に手を当てても大丈夫と?」
被「そのときの会話の流れから、まぁ大丈夫かなって」

具体的に大丈夫と思ったエピソードはなく、明確に嫌がられていないから大丈夫だろうと思ったようです。「まぁ、許してくれるような...」みたいなよく考えていないのが、この人の全てを表しているような気がします。

事件の時は、被害者が手を振り払うようにして帰っていったので、そこまででしたが、その日以降も被害者が退職するまで、社内で肩などへの接触は続きました。
その後も触り続けた心境について「いや普通に...」などとも言ってましたね。呆れて言葉が出ません。

他の社員から、そういったボディタッチを指摘されたことはないようです。これは見えないようにやっていたのか、見えてたけど会社的にそれくらい何?の風土だったのか、もしくは指摘しまくりだったのか。
その他の女性社員にはボディタッチはしておらず、それは好意を持っていたからと被告人も認めるところのようです。

すると事件から7ヶ月くらい経った日、被害者から別室に呼び出されました。

弁「どんな風に呼ばれたんですか?」
被「「ちょっといい?」って呼ばれて、行ったら「私にしたこと覚えてる?」と」

弁「なんのことかわかりましたか」
被「その日のことかなとは思ったんで、「申し訳ないことしたな」って」

弁「それでどうしたんですか」
被「慰謝料とかって書かれた紙があって、悪いことをしたとは思ったのでサインしました

弁「書いたことは全部やったことなんですか?
被「やっていないことも書いてありました

その後、被害者代理人から500万円を請求するという文書が届いて、100万円ならと応えるなどやりとりをするものの決着がつかず、「粛々と進めます」と言われ、被害届を出されたとのこと。


ざっくりとした経緯、主張はわかったのですが、いわゆる「無罪」としての主張として成しているのか、ちょっとわかりにくいところ。

この弁護人からの質問が終わったあと、検察官から「暴行を行ったという争点について、はっきりさせていない」と疑義を述べると、弁護人からは「前後のことを示せれば十分」「暴行を行ったという証明は検察官すればいい」と、またもバチバチモード。

しかし裁判官も「暴行にあたらないと主張する流れがわからない」などと少し苦言なんかも。


なので、ポイントを明確にすべく検察官が質問していきます。

どうやら被害者の供述と細かいポイントが違うようなのですが、それらは正確に記録できているわけでなく、比較もできないので、被害者の主張も含め詳細は、最終的な本筋にあまり関わらないので申し訳ないですが以降控えさせていただきます

被告人の考えとしては、「太ももを掴んだのは後ろでなく横から」、「抱きついたというハグした感じ」、「話をしていてムラムラした感情にはなった」、「胸は揉むでなく当てたくらい」、「胸にあたった手を動かしたわけでなく、一緒に歩いた(被害者はやんわり逃げているのについてく感じ)のでその経緯で動かしたようにはなった」というものでした。


被害者の証人尋問 〜検察官からの質問〜

被害者に話を聞きます。性犯罪では使われることの多い、ビデオリンク方式での実施です。法廷の遮蔽措置の中で行う尋問でなく、別室と法廷をカメラで繋ぎ、関係者には表情と音声を、被告人と傍聴席には音声だけが聞こえる形で進んでいきます。


まずは事件前後の話を聞きます。

事件後、自律神経失調症を発症し、不眠、頭痛、人が恐いといった症状に悩まされることになった被害者。

派遣として入った会社で、被告人とは上司部下の関係。それ以上のものはない。
更新は3ヶ月ごとで、現場を見ていたことや、総務に進言してることから被告人が更新の担当者だと思っていたという。

脇腹等へのボディタッチは、ほぼ毎日、話しに来るたびにあったという。
持ち悪いという思いがあったが、派遣契約ということもあって、大ごとにして不利になるのは自分であるという思いがあった。他の女性社員は、お喋りな人だから言いたくなかった。


事件当日の話
前述の通り、被告人と相違している箇所など詳細な箇所は割愛。

休日出勤の仕事が終わってコーヒーを飲んでいると、太ももを掴まれて「足細いな」などと言われた。
振り切って出口に行こうとしたが抱きつかれ、言葉でも態度でも抵抗するも「今日は誰もおらんから大丈夫や」などと離してくれなかった。

事前に行われた被告人質問で供述された、犯行態様とは異なる点が多々あった。

事件後、同僚などに相談した。
警察に行くよう言われたが、警察が捜査するかわからないのと、弁護士を探すにしても「セクハラ被害 弁護士」と検索しても、わいせつ絡みで逮捕された男性側の記事ばかりが出て嫌な気分になり、なかなか相談をしなかった

被害に遭って会社を辞めることも考えたが、コロナ禍で次の仕事が見つかる保証もない。夫に頼るのも好きではなく、それどころか事件がきっかけで男に触られるのが嫌になり、浮気を疑われ離婚寸前までいってしまった。

最終的に弁護士に相談することになったのは事件から半年経ってからのことだった。
被告人にはお金を払って欲しいわけでなく、謝って欲しい思いだった。しかし、弁護士から聞いた被告人が「払えんもんは、払えん!」といった態度に許せない気持ちになった。

どうして自分は苦しんでいるのに被告人は働いているのか、そしてこれは偶然だが近所に住んでいることも許せないこととして証言した。


被告人は被害者が証言している間、「違う」と言いたい感じで何度も首を横に振っていた。


被害者の証人尋問 〜弁護人・裁判官からの質問〜

検察官からの質問が1時間ほどになったので、一回休憩を挟みました。

だいたいみんなトイレに行くんですけど、身柄拘束されていない被告人と、トイレが一緒になったりします。
それ自体は気まずさとかはないんですが、傍聴人とかが「あの男、絶対やってるよなぁ、嘘つくなよ」などと本人がいるとも思わず、裁判の感想を言ってたりするので、そういうときは何故か自分も気まずくなります。


休憩後、弁護人からの質問です。

どうやら被告人とは、触った箇所やその態様だけでなく、その日の仕事の様子、触るにいたるまでの位置関係なども結構違うみたいです。どちらの供述内容が信憑性を持っているものなのか、どうしてもこちらでは把握しきれません。


犯行時の抵抗状況について細かく聞いていきます。

弁「後ろから抱きつかれて振りほどこうとはしたんですか」
害「「ダメですよ」と言って、どかそうとしました」

弁「腕を掴むなどして強引に振りほどこうとは」
害「恐くてできませんでした」

弁「あなたの手は被告人のどこを掴んだんですか」
害「手首の上あたりです」

弁「それをどかして、握り続けなかったんですか」
害「何度もされると思わなかったんで」

弁「胸に手を当てられているとき、その手は動いていたんですか?」
害「手全体で撫でるようでした」

弁「その時手首は掴んでないんですか?」
害「掴んでました」

弁「掴んでたら撫でられないのではないですか?」
害「撫でられたので、すぐに掴みました」

傍聴初心者の方が、弁護士業の人を嫌いになる瞬間ですよね。被害者さんに対する執拗とも思える質問ラッシュ。特に性犯罪だと、そこまで聞いて、思い出させなくてもいいじゃんという気にもなります。

実際、弁護士さんはどんな気持ちで聞いているんでしょうね。特に今回のように、大まかな行為自体は間違いないという場合において。


続いて、事件後に被告人を部屋に呼んで書類にサインなどさせたシーンについて。


弁「この書類は誰が作ったんですか」
害「弁護士ではないですが、そういうのに詳しい人です」

弁「作成日付書いてないのは理由ありますか」
害「ないです」

弁「この内容は、事件の日のことですが、日常的なもの全体的にですか」
害「事件の日のことです」

弁「そのことを書いていないのは何故ですか」
害「このような書面を書いたことないので、何が必要かもわからず」

弁「会社の代表者に出した「セクハラ行為について」との文を作ったのは」
害「私です」

弁「ここに、事件があった日付を実際より一週間前に書いているのは?」
害「それは勘違いで、後で訂正しています。警察にも言ってます。」

チクチクと聞き続ける弁護人。

検察官が被告人にチクチクやるのは、だいたいが罪を認めていることが多いので、殴られっぱなしって印象になりますが、こういった被害者がディベートのプロの弁護士に翻弄されるというのも、また違った見ていられない感があります。

この弁護士さん、口調は穏やかで、嫌味らしい感じもなかったですが、聞くポイントは的確だったように感じます。


弁護士の後は裁判官も少し聞きます。

事件の内容を警察に話したのは弁護士に相談した後。弁護士に相談したのが事件から半年経ってからですから、それ以降ということなります。
また、同僚にはざっくり被害のことは伝えていたものの、詳しく話したのは弁護士が最初のようです。

裁「被告人との話に若干違うところがあるんですが、別の日のと混同してることはない?
害「胸まで触られることはないから、混同などしてないです

裁「そこに至るまでの過程は日常的のようですが混同はしてないですか」
害「その日のことを覚えているうちにパソコンに書き起こしたので」

裁「書き起こしたのはいつですか?」
害「病院にかかる前です」

裁「病院に行ったというのは」
害「弁護士のところに行く少し前くらいです」

つまり書き起こしをしたのも、事件後半年より前くらいのことらしい。

これもまた、「性被害に遭い辛い思いの被害者にどこまで求めるんだ!」というお声もありそうですが、罪を認定するには疑いの余地を挟んではいけないものなのです。

とは言っても、防犯カメラ映像があるわけでもなしに、すべての行動を完璧に疑いなく証言しないと罪が認定されないとなると大変なので、なかなか難しい話ではあるのですが。


再度の被告人質問 ~被害者は社内を一緒に歩いてくれました~

被害者の証人尋問を踏まえた上で再度の被告人質問が行われました。

被告人によると座っている被害者のもとに近づいて「細いな~」などと言いながら、膝から腿辺りを触ったとのこと。
立ってるところをいきなり後ろから触られたという被害者証言と違うのはわかるのですが、違ったところで自身が主張しているのは、わいせつ行為そのものとしか思えません

抱きつく形になって、被害者からは「もう○○さん、人が来るよ」と言われた。体をねじられるなど抵抗された記憶はない。
「人が来るよ」というセリフは拒否とは捉えずどうせ休日だから人も来ないからいいだろと思ったとのこと。

なお会社内で、触ってはいけないなどの研修を受けたことはないとのこと。言われてないから、そんなの頭になかったという主張なのでしょうが、「言わなきゃわからないですか?」というツッコミすらももはや野暮な気がするくらい初歩中の初歩です。この世の全メディアを断絶しているのか?

でも、この人マジでそういう風に感じてそうなんですよね。

裁判長から質問します。

裁「それまで太ももを掴むに類することをしたことは?
被「脇腹をつつくとかはありますけど」

裁「太ももを掴むのと脇腹をつつくのは女性の羞恥心として同程度の行為と思いますか?」
被「太ももの方が少し強いかなとは思います」

裁「では普段よりも飛躍して考えてしまったと」
被「はい」

裁「被害者の態度を見て、しても大丈夫と思ったと」
被「当日、社内を一緒にウロウロしてくれたので」

裁「ウロウロしたらそうなるの?」
被「普段一緒に動くことはないけど、配送業者が来たとき「来る?」って聞いたら来たんで」

裁「それが好意の表れと思った?それ以外には
被「特にないです

これが好意の表現だとしたら、俺今ごろ100人くらい愛人連れてるわ。

しかし、僕が騙されているだけかもしれませんが、被告人は本心で言っちゃってる感じがするんですよねぇ。仮に嘘で言っているとしたら、こんな稚拙な言い訳恥ずかしくて顔真っ赤になりそうですし。

奥さんいて(離婚してるかも)、子どももいるんですけどね。夫婦間でどういう会話がなされてきたのか、気になって仕方ありません。


被害者の怒りの陳述と結審

日を改めて判決前、最後の公判日。まずは被害者の意見陳述が、代理人によって代読されました。

この意見陳述が不採用になることは見たことないですが、一応弁護士にも確認をとります。すると弁護士からは「昨日来たばかりなんで」ともごついています。
最後まで両者とも噛み合わない裁判でした。さすがに不採用にするのもと読み上げが始まりました。


多少の食い違いはあってもと思うが、あまりに被告人が言っていることが違う。いじめもだが、被害者の方が覚えているもの

被告人は好意と感じたそうだが、後ろについていったり、日常会話をしただけでそう思うなんて勘違いにもほどがある。

強く抵抗しなかったのは、会社で働いている中で抑圧的な心境にあったから
被告人も「この前、社長に強く言われたよ」と愚痴を言っていましたよね。あなたはそのとき社長に抵抗したのですか?それと同じです。

被告人は「俺の遊び相手にならへん?」などとも言ってました。バカにしていると思います。太ももを鷲づかみ、キスをしようとした、それをいいと言いましたか?
結婚をしてますと言っても「俺と一緒やんな」などと言ってて意味が分かりません。

家も近いので報復されるのが恐くて、防犯カメラを設置しました。映ったら即通報します。今も普通に働いているので、私は戦うことにしました。

まぁ怒っています。
れまで溜めこんできた感情を吐き出している感じでしょうか。長く我慢してきたんですね。被告人はどんな思いで聞いていたのでしょうか。


さて、ここから検察官と弁護側の最終意見。
※細かい行為態様の主張は割愛しています

検察官の論告
被告人は許諾があったものと主張するものの、派遣契約の更新をするなど、被害者が精神的に抵抗できない環境であったのは明らか。明確に断らなくても、それは承諾とはいえない。

上司と部下の立場を悪用しており、休日出勤の時を狙うなど一定の計画性も認められる。被害者は性的羞恥心を汚され、自律神経を乱し、近くに男性がいることにも抵抗感を感じるなど結果は重大であるが、一切被害弁償などはされていない。

求刑 懲役1年6月

弁護人の弁論
態様には暴行などを用いておらず、錯誤があった。不意の行為というわけでもなく、抵抗するいとまもなかったというものでもない

被害者は、事件前からセクハラ被害を受けており、これまで拒絶をしていない。また本件事件から半年行動していない。メモも相当経っており、被害日時も間違えており、記憶が混同していると言わざるを得ない。
刑罰を発生させるものとして信用ある証拠であるかは疑問が残る。

一方で被告人は、念書や被害弁償の求めに応じる姿勢を一貫している。また、当初から触れたことそのものは認めている。
これというのは、被告人が被害者から承諾を得ていると考えており、犯罪を起こしているという意思がない表れである。

暴行行為も、強制わいせつとしての故意も認められず、本件は無罪である。

一連の話を聞いても、どうしても無罪という主張を一貫できるのか、いささか同調しにくいのですが、話している内容全体としては、なるほどと感じる点が多いんですよね、正直。

もちろん、検察官の主張が間違っているとも思わないのですが。

かなり意見がバチバチとぶつかり合って、聞き応えのある両者の主張でした。


そして裁判の最後に被告人の最終陳述です。

被害者は派遣契約で来て、話す中で直接雇用を考えているかと聞いたら、「派遣は嫌なことあったら3ヶ月で辞めれる」「時給のいい知人に声をかけてもらってる」などと言っていて、それでも仕事を続けていたので、そう悪いイメージを持っていないのかなと率直に思っていた。

僕は本当のことしか言っていません。自信はあるので、相手が言ったことがどうかと思います。警察でも、僕の言うことのほうが、流れ的には自然かなと言ってくれていました。

やったことはやったことなんで申し訳ないと思ったんで、書類の件は言いなりみたいになりましたけど、警察とも話す中で線引きはしないとと思って。やったことはやったこと。やってないことはやってないと

後は裁判官に判断を委ねます。

気弱そうな声は変わらずでしたが、途切れ途切れながら長いこと話しました。被告人は被告人で思うところはあったんでしょうね。


判決 ~判決の決め手は~

判決の日、全6回の公判の中で、一番傍聴人が少なかったです。なんでだよ…。

判決主文
懲役1年(求刑 懲役1年6月)、執行猶予2年

判決出た瞬間、思わず声が出ました。別にどっちを応援とかではないので、喜びでも、怒りでもないのですが、この判決に裁判官としての判断がかなり詰まっていると感じたからです。

それでは、この判決の理由。

事実認定において、被害者の供述を全面的に採用することはできない
被告人が行為を認める範囲で認定する。

程度は異なるものの、日常的にセクハラを受けていて嫌悪するあまり、事実関係を混同する危険性が残されている。被害者は弁護士に相談するのも時間が経っていて、情報の整理ができていないとも懸念される。
その一方で、被告人の主張を排斥するほどの事情も見受けられない。

しかし、行為自体は強制わいせつ行為と言える
同意の有無を確認する暇もなく、会社の強い立場の者に対して強く拒絶できないのは、常識といっていい。被告人の認識は好意からの歪んだものと言える。

ただ、職場での心情に思いをきたせず、身勝手な歪んだ認知ではあるが、虚言とまで言えるものではない。被害弁償に対してできるだけ対応する姿勢も見せていることなどから主文の通り判決する。

犯行を決定づける被害者の証言に一部信用性を疑う点を払しょくできないため、被告人が認めた範囲でのみ犯行を認定したというものでした。

多少の被害者の認識の齟齬くらいであれば、わいせつ被害の精神的な苦痛のときによるものとして完全でも致し方ないと判決されることもあるかと思います。ただ、今回はいろんな条件が被害者にとっては悪い方に重なったと思います。

なにより、被告人・弁護人が、一定の範囲で行為を認めていたのも強かったと思います。これが完全否認だったりすると、また結果は違ったのかなと。


ただ、今回このような結果が出たからといって、被害者の方が嘘をついているという認定ではないのです
そのように疑いがなく認定をすることができなかったというだけの話で。実際のところは、第三者である我々にはわかりようもなく、当事者同士でも記憶の混同があるのかもしれません。


僕がこの裁判を年間の印象的なものに選んだ理由というのは、被害者の方にとっては気の毒だとは思いますが、裁判官が職務として正しく認定したと感じたからです。

ただ、法の定めに杓子定規にならず、被告人の行為は「常識」として、わいせつ行為にあたるものとした、世間の考えも入っているのも大きかったです。


正直、これを読んで、被害者の方かわいそうと思う方、多いかもしれません。僕もその思いはあります。

ただ、だからといって、今回の被告人だけに限らず、不確実なものだけで刑罰を与えられていいはずもないわけで。


そういったモヤモヤ感と、裁判とはというものを考えさせてもらった事例でした。

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