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匠ソリューション

しばらく前、近所にある大学の社会人講座に通っていたことがある。園芸をとおして社会福祉に貢献するというテーマだった。ナシ、ブドウの果樹栽培やトマトやピーマンのハウス栽培、それにチンゲン菜などの水耕栽培などがあった。素人が難しいと思ったのが、果樹栽培。なかでも、摘果、摘粒作業だ。

ブドウの1房につく果実の最適数を決めているとは知らなかった。

放っておけば、花が咲いた数だけ実ができる。それじゃ実は大きくならないし、養分が分散されて美味しくならない。これはわかる。でも、28-30個/房になるように小さな実を摘む、これがシャインマスカットの作業基準だった。

実の数だけじゃない、よく陽が当たるようにして、しかも見映えのよいブドウ房にしないと商品価値が落ちる。

1ケ2ケと数えていると日が暮れる。大きくなった時のブドウ房の「形」がイメージできないから、どこで切ろうかと考え込んでしまう。こんな素人作業じゃ商売にならないし、福祉関係向けにマニュアルづくりなどとても手に負えるものじゃない。

AIゴーグルができた。かねがね欲しいと思っていた。

NECが開発したという。ゴーグルを通してブドウを見ると、粒数を数え、どの実を摘めば、数合わせと房形が適格かを指示してくれる。素人はそれにしたがってハサミを入れればいい。出来栄えと作業時間は熟練者並みだという。後継者育成への「匠ソリューション」と名付けられた。

すばらしいAIの活用だ。
ブドウだけじゃなく、トマト栽培などにも威力を発揮しているそうだ。

AIの指示通りに作業すれば、生産性が上がり、品質も均一化して向上する。

でもねえ。
ゴーグルなしでは仕事が出来なくなってしまうのじゃないか。
もし、AIが判断できないような、過去問にないような状況ではどうするのだろうか。そんな懸念をいだく。

でもねえ。
ゴーグルは作業に欠かせない。そんな現場がこれから数多く出てくるだろう。AIは進化する。

巷間、「AIとの共存」とひと言で片づけるが、葛藤の世界が身近になった。