見出し画像

百貨店のシニア化

60歳で定年し、関連会社でシニアを5年ちかく、あと少しで満期になる。入社後、ずっと化学品関係の営業でやってきた。研究熱心だし、業界の人脈も広い。だから、シニアになっても同じ仕事が続けられた。Hさんはそれで満足している。

では、これからどうするのか。本人はこのまま続けたいと思っている。ところが、Hさんの後任者のうわさが聞こえてきて気が気ではない。シニアの延長が無理なら、取引先に再就職を売り込んでみようか。学び直しをして違う仕事をさがしてみようか。半年ほど前から会うたびに「身の振り方」の話になるが、結論が出ないままだった。

ずっと、同じ仕事だった。できれば続けたい。けれど、シニア延長は、正直、厳しいのはわかっている。かといって、やったことのない仕事に挑戦するのは不安だ。なんとか残りたい。社長に直談判しかない。昨日のHさんのメールだった。

8月の終わり、そごう・西武労働組合が池袋の西武百貨店でストライキを決行した。親会社のセブン&アイ・ホールディングスは外資に株を売却し、ヨドバシホールディングスがそれを買い取るという。将来の業態への筋書きの説明がないこと、それにともなう不安がストになった。高級路線できた老舗百貨店のプライドと新興カメラ屋との違和感が見え隠れしている、と感じるのは邪推だろうか。

そごう・西武をセブン&アイが買収したこと自体が、百貨店のシニア化だった。改革を唱えても動かない。新しいことには手が出ない。そのまま時が過ぎて、今回、シニアの「延長」になってしまった。

Hさんのメールと、60年ぶりのストライキが重なって見えてきた。