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AとZに翻弄されるモノづくり

取引先の日用品メーカーが、赤字とまではいかないまでも利益が出ずに難儀している。販売不振というわけではない。市場のふたつの大波にもまれて、自分のペースでモノづくりできないという。

ひとつはアマゾンに代表されるECサイトからの受注量の振れが大きいこと、もうひとつは、うつろう、根なし草的なニーズに翻弄されていることだ。

業界では名の知れたマーケティング部がある。自分の足で販売店の売れ筋、ニーズをつかんで情報を組み立てる。CMで喚起して売れ筋をつくる。そう、大きくいえば自分でマーケットをつくってきた。結果、効率の良い生産と販売で利益が出た。

ECサイトは巨大だ。その生命線は桁ちがいの顧客情報量とそれのひとりじめにある。個社のマーケティングは足元にもおよばない。モノづくりの会社はECサイトの受注量の大きさに魅力があるから、言われるままにつくって納めるだけに成り下がった。しかもその発注はAIがやっているという。

AIが売買に関与する株式相場などでは、ちょっとした市場情報にアルゴリズムが反応して大量の売り買いを入れる。結果、値の上下幅の波が大きい。ECサイトも同じ。だから、急な大量注文に対応するための設備導入と人件費がメーカーの足を引っ張る。

もうひとつは、Z世代の購買力。今はさほど大きくはないけれど、これから確実に影響力をもつ。その世代の特長は、多様性とうつろい。大手メーカーの情報より、身近な信用のできる人のモノサシが選択を左右するという。「信用できる人」は多岐におよぶから、ニッチで細分化されてしまう。モノづくりメーカーにとっては、量がまとまらないから固定費を償却できない。

A(I)とZ(世代)、メガとニッチ、モノづくりの会社を変えようとしている。